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『秘館物語』
【SM 官能小説】

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『秘館物語』-21

「ひ、浩志さん……あ、ああ……浩志、さん……」
 縦横無尽に自分を弄ぶ舌使いに翻弄されながら、碧の身体もうねり続ける。太股をしっかりと浩志に捕まえられているので、上体だけがベッドの上で柔らかく捩っていた。
「だ、だめっ………お、おかしくなるっ……」
 腰まわりの痺れが一層、強くなる。それは、碧の力を奪い取って、快楽に捩ることさえできなくさせた。
「へ、変ですっ……ど、どうにかなっちゃう!」
 そのため、受け流せなくなった劣情が、一斉に碧に襲い掛かってくる。それを解消するには、あまりにも碧は性的に無防備であった。
「あ、あ――――……」
 不意に訪れた浮遊感。そして、
「!!!」

 びくん……びくっ、びくっ……

 四肢が強張り、何度となく痙攣する。それは紛れもなく、頂を見た体の反応であった。
「っ」
 ぴっ、ぴっ、と顔に何かが降りかかる。埋め込んでいた舌の先が、碧の震える女の部分に、まるで吸い込まれるように締め付けられる。そこには、微かな酸味を感じた。
(イッたんだ、碧さん……)
 舌による愛撫だけで、こうも簡単に高みを見たらしい。どうやら、碧の身体は、ある程度の性には慣れているのだろう。ひょっとしたら、相当に自慰を重ねていたのかもしれない。
「ハァ…ハァ…」
 その碧は、昂ぶりを荒い呼吸でやり過ごしている。
「す、すごいです……自分で、するより……」
 浮かされたような、呟きのような声。彼女は、普段では絶対に言えないようなことを、さらりと口にしていた。
「いつも、してるんだ?」
「えっ……」
「自分で言ったじゃないか。オナニーだよ」
「!?」
 碧の顔が、火を噴いた。
「あ、あっ……」
 しかし、その顔は、再び快楽に沈む。浩志が、熟れて真っ赤になったその秘裂に、指を差し込んだからだ。
「こんなふうに、さ……自分で、弄ってるんだね?」

 ぬちゅ、くちゅ、くちゅ、くちゅり………

「あ、あくっ……は、あふぁ……ん、んん!」
 かなり、奥深くまで指を挿入され、痛みにも似た激しい刺激が体を走る。
「ねえ、碧さん……」
「は、はぃ……して、います……いつも、イヤラシイコトを考えて……自分で……」
 快楽に霞み始めたその意識が、まるで魔法にでもかけられたかのように素直な答えを返してしまった。
「ほんとは、イヤラシイ女(ひと)だったんだね、碧さんは……」
「ひっ」
 耳元に息を吹きかけられる。
「どんなことを、考えてた? やっぱり、あのフィルムのことかい?」
 その浩志の吐息も、何処か荒い。どうやら、性のあらぶりに彼もまた支配されつつあったようだ。
「答えてくれよ……」

 くちゅくちゅくちゅくちゅ!!

「あ、あなたのことです! あなたに、いっぱい触られているところを……んぁう! そ、そんなにいじられたら――――……あっ……」
 碧の腰が浮いた。そして――…
「あ、ダメッ………ダメッ、あ、ああっ!」

 びくん!

「ああああぁぁぁあぁぁぁぁ!!」
 その腰が高く浮き上がったかと思うと、太股が激しく痙攣を起こし、指に熱い何かをおびただしく降りかけながら、碧は官能の渦に身を晒した。
 二度めのエクスタシーだ。あまりにも呆気ない、碧の陥落。
(敏感なんだ)
 まさか、指を激しく動かしただけで、こんなにも簡単に気をやってしまうとは。
「はぁ……あ、あはぁ……はぁ……」
 しかも、全力疾走をしたようにその息が荒い。
「碧、さん……」
 浩志は、秘裂のなかから指を引き抜くと、両腕で強く彼女を抱きしめた。
「あっ……」
 暖かく、力強い腕に包まれて、性に支配されていた碧の意識が静まりを見せる。
「碧……」
「浩志さん……」
 不意に体が離れ、浩志の真摯な視線が碧に覆い被さってくる。その瞳の奥に、光を見た碧は、彼が自分の操を求めているのだと悟った。


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