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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイの災難-4

そして、異変を感じ出した周囲の生徒達が集まりだし智香はオロオロし、香奈子はそれでも冷静に香織と藤堂の様子を眺めていたのだった。
「ガサツだって……この私がガサツだって…。アンタ一回死んでこーーーいっっ!!」
完全に頭に血が上った香織は自分がスカートである事も忘れ目の前で身悶える藤堂の頭部に廻し蹴りを叩き込んだ。
その瞬間、周りの生徒達から「おおーっ」と色々な意味で声が上がる。それと同時に香織は我に返り赤面しつつスカートを両手で押さえたのだったが時既に遅しだった。
「香織も藤堂もおバカだわね…」とあくまでも冷静に言い放つ香奈子に対し、智香はオロオロしてるだけで当の香織よりパニくっていた。
「と、とにかく!ケイは私の彼女なんだからこれ以上手を出したら承知しないからね!!」
顔を真っ赤にしながら藤堂を指差し大きな声で宣言したものだから周り(特に女子)の反応は大きなものになる。
だが、それ以上にその言葉に反応したのは藤堂本人である。
「ふざけるなっ。そんな戯言を誰が認めるか!ケイさんに相応しいのはこの僕しかいなーい!」
香織の渾身の廻し蹴りを受けたにも拘らず、藤堂は何事もなかった様に立ち上がり香織に向かい合った。
「うそっ!?手加減なんてしてないしポイントもタイミングも完全だったはずなのに…」
ダメージを感じさせない藤堂の様子に香織は驚き顔を引きつらせた。
「まさにゴキブリ並みの生命力ね。香織も大変だわ」
「香奈子ちゃん、それは言いすぎだよぉ…」
香奈子のポツリと言った一言に智香が苦笑しながら言葉を返してる間に、香織と藤堂の諍いは更に混迷の色を深めていきそして昼休みは終了した。

それからは特に問題も起きず昼休みの騒動がなかったかのように放課後をむかえた。
俺は昼休みにあった香織と藤堂の争いを帰り道の途中で香織自身から聞き、藤堂のケイに対する好意に辟易してしまった。本当に俺、これから無事に生活できるのかな…。
「全く、今思い出すだけでもムカつくわぁ!今度こそきっちり決着をつけてやる」
鞄をブンブン振り回しながら横で意気込む香織に俺と智香は苦笑した。
「そういえばお兄ちゃん、今日も仕事なの?」
「ああ、なんか奈津ねぇが撮り忘れたカットがあるからスタジオに来いってメールを送ってきやがったからな」
俺と智香がそんなやり取りをしてると香織も「私のところにも奈津子さんからメールがきたよ」と言ってきた。
奈津ねぇ、何か企んでないだろうな…。正直、とても心配だよ。
そんな事を思ってるうちに我が家に到着した俺達。香織と智香がリビングで楽しそうに話をしてる間に俺は自分の部屋でケイになる為に準備をするのだった。
まあ、ケイとして過ごす時間もそれなりに長くなったので軽くメイクをするくらいはいい加減慣れてしまった。
本当に男として大丈夫か俺…?
着替えとメイクを始めて暫しの時間を費やして準備が出来てリビングに行くといつの間にか香織と智香の他に奈津ねぇと母さんが加わりお茶会などを開いていた。
「なにやってんだよ奈津ねぇ…」
俺が呆れた表情で問いかけると奈津ねぇは「圭介達を迎えに来たのよ」と笑顔で答えてくれた。
迎えに来てくれるのは嬉しいんだが今の状態を見るとどうしても遊びに来たとしか思えないのは俺だけだろうか。
「それじゃあ、香織ちゃん、圭介、さっさと行くわよ」
奈津ねぇは手に持っていたティーカップをテーブルに置くとソファーから立ち上がり俺と香織に出かけるように促すと智香と母さんに挨拶をしてリビングを出て行き、それに続いて香織も挨拶をすると俺達は家を出て奈津ねぇの車でスタジオに向かったのだった。
家を出てからスタジオまでの道のりで俺は今日こそ藤堂に会いませんようにと無宗教者でありながらも心から神様に祈っていたのだが、やはりと言おうか無宗教者である俺の祈りは神様に届く事無く奴はRPGの序盤に出てくるモンスターのように節操もなくスタジオの入り口に向かう俺達の前に現れたのだった。
「ケイさーーん!今日こそは貴女を朱鷺塚の魔の手から奪い返し僕の愛で貴女を正しい道に導いてあげますよーっ」
両手を広げてこっちに走ってくる藤堂。その光景を見てポカンとする奈津ねぇ。更に怒りのあまり拳を振るわせる香織。そして恐怖で引きつる俺。


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