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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイの災難-3

「藤堂くん…少し目を瞑ってくれないかしら…」
わざと恥らうような仕種を見せつつ俺は藤堂に頼み込む。
「えっ、それ位お安い御用ですよ。これで良いですか?」
俺からお願いされたのが余程嬉しいのか素直に目を瞑る藤堂。
嬉しそうな顔をしてる藤堂を見て、奴が何を考えてるのか容易に想像できたが俺にしてみればあまりにもおぞましい想像なので右手に必要以上の力が入る。
「ケイさん、一体何をするんですか?」
幸せそうな顔をして訊ねてくる藤堂に俺はにこやかな笑顔を作りつつサラッとこう答えた。
「殴るの」
そう言うと同時に俺は藤堂の顔面に思いっきりパンチを繰り出し、奴が倒れた隙に香織が待つ車内に逃げ込んだ。
「あいたたた…ケイさん、なんて激しい愛情表現なんだ」
左の頬を押さえつつ立ち上がった藤堂の前には既にケイの姿はなくケイと香織を乗せた車も走り去った後だった。
「ケイさーん!!僕は諦めませんからねぇぇぇ」
ケイ達が去ったスタジオの裏口に藤堂の声が空しく木霊した。

「ったく、なんなのよアイツ。正直かなりウザいわ」
斉藤さんが運転する車の後席。俺の隣に座っている香織が困ったような顔つきで呟いた。
まあ、その気持ちはとても良く分かるんだけどね…。
「私も本当にゲンナリしちゃうわ。仕事の度にこう付き纏わられちゃうとね…」
香織に釣られて俺も疲れた表情でため息を吐く。
車に揺られながらしばらく二人は沈黙していたのだったが、急に香織は何か閃いたのか含みのある笑顔を見せトンデモ発言をしやがったのだ。
「こうなったらケイを私の彼女にしちゃおう!それで藤堂を黙らせるのよっ」
「はあっ!?」
ホント、いきなりとんでもない事を言い出しましたよこのお嬢様は…。
我ながら名案とばかりにニコニコと嬉しそうな笑顔を見せ腕を組む香織に意見を返したのは意外にも斉藤さんだった。
「しかし香織お嬢様、それだけではあの藤堂様がケイ様の事を諦めて頂けると思えないのですが他に何か策はおありなのでしょうか?」
運転をしている斉藤さんにそう聞かれた香織は「もっちろんあるわよ」と言いながら自信満々の笑みを湛えていた。
はっきり言って香織のその自信に満ちた笑顔が俺には不安だったが、バックミラー越しから見える斉藤さんの表情も俺と同じ事を思っているらしく無言の状態で苦笑していたのだった。
そして車が俺の家に到着し、俺が車から降りる間際に香織が「私に任せておきなさい」と親指を立ててにこやかに言い放った言葉を頷いて返事をしつつ車から降りるとドアを開けて待っていた斉藤さんが「心中お察し致します」と小声で俺に言ってくれたが、その言葉に俺は苦笑で答えるしかできなかった。

そんな出来事から数日後、圭介達の通う学園の昼休み。圭介本人の知らぬところで香織と藤堂は廊下で鉢合わせ睨み合っていた。
「朱鷺塚、毎回毎回よくも僕とケイさんの大事な時間を邪魔してくれるな。君は人の恋路を邪魔して楽しいのか?」
藤堂は今までの香織の行為を激しく非難するように詰め寄った。
「ええいっ、それ以上近寄るな!変態がうつる!大体アンタみたいな奴にケイはもったいないわよっ」
右手でシッシッと藤堂を追い払うように牽制する香織の後ろで香織の友人であり圭介の妹である智香が心配そうに見ており、もう一人の香織の友人である香奈子は冷静に事の成り行きを眺めていた。
「ふんっ、それは単に君の思い込みだろう。僕とケイさんは赤い糸でガッチリ結ばれているんだ。君のようなガサツな女性がそばにいる事でケイさんに悪影響を与えないうちに僕の愛でケイさんを助けてあげなければ」
藤堂は顔を赤らめ自分の身体を抱きしめながらクネクネと身悶えだした。それに対し、香織は藤堂にガサツと言われたのが癪に障ったのかピクッと眉を吊り上げ仁王立ちで震えていた。


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