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「柔らかな鎖」
【SM 官能小説】

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「柔らかな鎖」-14

某月某日
 今日、大学で雪乃さんに呼び止められた。何日か前に私と安野先輩が一緒にいるところを見かけて、気になっていたらしい。たまたま安野先輩が大学に来ていない日だったので、誘われるままに居酒屋に行くと、和明さんもいた。
「響子ちゃん、間違ってたらごめん。もしかして、安野に何かされた?」
 いきなり雪乃さんは直球だ。
「気になってたのよ。安野みたいなタイプ、響子ちゃんが好きになるようにはとても思えない。柿崎くんとは正反対だし。第一、柿崎くんと響子ちゃん、あんなにうまくいってたのに」
「こら、雪乃、あんまりまくしたてるなよ。響子ちゃんびっくりしてるじゃないか」
「ねえ、和明さん。やっぱり響子ちゃんにあのことも全部話すべきなんじゃ……」
 あのこと? あのことって何だろう。
「雪乃が話してもいいと思うのなら、話しなさい」
 珍しく和明さんが厳しい表情で言った。
「じゃあ、話すね。あのね、響子ちゃん。前にサークルが分離独立したって話したでしょ?」
「はい」
「あれ、実はね、本当はもうちょっといろいろとドロドロしたことがあったのよ。まず、これを言ったらショックかな……安野はね、私のご主人様だったの」
「……本当ですか?」
 信じられない。明朗で聡明で快活で、一方で清楚なあの雪乃さんが、あんな人と……。
「そう。元のサークルでは、私のご主人様は安野だった。あの人は女を脅して、意に添わない服従、屈服っていうのかな、そうさせるのが好きな人で、私は元々サークルの人間じゃなかったのに、ある日突然呼び出されて、薬を飲まされて、犯されたの」
 私は自分の顔色が変わるのをはっきり自覚できた。なんてことだろう。
「その時の姿を写真に撮られて、それをネタに脅されて、私は嫌々従わざるを得なかった。それを和明さんが……気がついてくれたのよ。安野を殴って、私を解放してくれたの」
 雪乃さんはそう言って、隣にいる和明さんを頼もしそうに見た。和明さんは照れくさそうな顔をしていた。
「その殴ったのがサークルで問題になったのね。『お互いの同意ではなく、脅迫によって服従させるのはサークルの趣旨に合わない』っていう主張は、『屈辱を与えるという嗜虐の指向性を否定したらSMではない』という安野の理屈に押し切られた。暴力を振るったっていう負い目もあったしね。それで、どうしてもその考え方にはなじめない和明さんと柿崎くん、あと何人かが辞めて、別のサークルを作ることになったの」
「あとは俺が話すよ。その後、安野は別の女の子を調教し始めた。その子、百合花っていうんだけど、サークルの子で、由布に片思いしてたんだよ、ずっと。由布の方はただのサークル仲間としか思ってなかったんだけどね。で、サークルが分裂した後も百合花は由布への思いをひきずったまんま安野に調教され続けて、精神を病んで、大学を辞めてしまったんだ。そのことを安野は、今でも由布のせいだと思って恨んでいるらしい。由布は由布で、責任を感じたのか響子ちゃんと出会うまでは特定の相手は作らなかったんだよ」
「そんなことがあったんですね。でも由布さんは何も話してくれなかったから」
「柿崎くんはさ、響子ちゃんには余計な心配をさせないのが主人としての勤めだとか思ってたんでしょ、多分」


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