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BLOOD LINE
【女性向け 官能小説】

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6-1

「大事な話があるので、今日は早めに帰って来てください」
そんなメールが妻から来たのは、結子が退院して3日ほど経った時だった。結子が気にしていた髪は、何とか隠すことができるらしい。消毒に通い、順調なら一週間ほどで抜糸できると言うことだった。
結局また結子を抱き、終電に間に合うように部屋を出た。


どきっとした。この時期に大事な話とはなんだろう。勝手に携帯を見るような妻ではないが、念のためメールはすべて削除してある。仕事柄帰りが遅いのは当たり前だし、古いドラマのように女の香水でばれることはない。彼女は香水を付けなかった。
切りのいいところで仕事を切り上げ、20時過ぎには自宅へ戻った。
家には妻がいて、テーブルにはA4サイズのファイルが置いてあった。
「どうしたんだ、大事な話って」
「うん、話さなきゃいけないことがあって。悪いけど、話が終わるまで夕飯にする気になれなくて作ってないの」
「……どうした?」
座って、と言われ富岡は向かい合って腰掛けた。
「……私からはうまく言えないから。これ、読んで」
すっとファイルを滑らせた。富岡は尋常ではない雰囲気に固唾を呑み、ファイルからコピー用紙を出した。そして、息が止まるのではないかと思うほどの衝撃を受けた。
『ご依頼の件、以下のとおりご報告申し上げます』と言う文章からそれは始まった。
被調査人氏名 倉田結子
生年月日 昭和XX年X月X日
住所   神奈川県横須賀市本町XX丁目XX-X

妻は怒りの表情でもなく、ただ辛そうに俯いていた。富岡はごくりと喉を動かしたが、口の中はカラカラだった。指先が振るえ、目の前が白くなる。
調査期間は約2ヶ月。言い訳できないほどの高画質で、自分と結子が寄り添って歩く写真が添付されていた。彼女の部屋を出入りする姿や、病院の屋上でキスする二人も写っていた。
「……これは」
「お願いだから、読んで。私、何も言えない。ただ、調査を依頼したのは私よ。8月に大阪から帰って来た東京駅で、その人と抱き合うあなたを……声をかけようと思ったら、あなたはその人に駆け寄って、抱き合ってた。恋人同士よ、どう見たって」
ああ。あの日か。富岡は目を閉じた。混雑した東京駅で知人や、まして妻がいるかもしれないと言う考えなど浮かびもしなかった。それほど彼女しか見えていなかったのだ。

『倉田氏(昭和XX年X月X日生まれ)の素行調査を平成XX年X月XX日〜平成XX年X月XX日の計XX日間実施した』
何月何日の何時と、二人が接触した日の行動がすべて書かれていた。どこで何を食べた、何をしていたまで書かれている。結子の部屋に入った時刻、出た時刻まで。


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