ら-1
自分の家を情事の場所に選んで。
良く知りもしない男に家の場所を教えてしまっていいのか
一瞬躊躇した。
でも、入社してすぐに吉野さんの噂は聞いていた。
システム開発部での、その仕事の早さと正確さ、
そして部下の信頼と上司の期待の高さは群を抜いている。
同じ部署の同期は、同期会の度に吉野さんを褒めちぎった。
そんな男だからか。
なぜか家に帰る道順で自分の家を教えることに迷いはなくなった。
あと・・・
この人は日本に少なくとも半年後はいないんだ。
そう思うことが私の警戒を緩めた。
手をつないだまま電車に乗り、改札さえつないだまま通った。
部屋まで行き、鍵を開けて中に入ったとたん
首の後ろに手を当てて頭ごと引き寄せられキスをした。
その時、近づかないと分からないぐらい、ほのかに吉野さんからいい匂いがした。
「んっっ・・・」
何回も角度を変え、少し荒く唇を開かせる。
「吉野さっっ・・・」
「ん?」
見たことのないような色気のある顔で
目を細めながら首筋をなめ続ける。
でもその行為もどこか荒々しくて。
「優しく・・・してっ」
そういった私に小さく笑う。