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『キューピットの恋』
【青春 恋愛小説】

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『キューピットの恋』-2

「お前、なんでそこでコクんないんだよぉぉ!」
ヤスにその話をしたら、僕のくびを絞めながらわめかれた。
「そんなこと言ったって、玉砕すんのわかってんのに告白なんかできるかよ…。せっかくふつうに話せる仲になれたのにさ。」
相談相手とは言え、前より距離は縮まった。それを壊すなんて僕は…やだ。ただ、それを聞いて言ったヤスの言葉は僕の心に強く響いた。
「…お前…ホントにそれでいいのか…?」


ずっと、くよくよ悩みながら藤沢さんの相談を受けてるうちに、さらに2週間がたった。その日の放課後、藤沢さんが僕のところに来てこう告げた。
「永見くん、いろいろアドバイスしてくれてありがとう。明日、告白してみようと思うの。」
そうか、ついに告白するのか。
「そっか、がんばってね!」
…心の中では失敗すればいいと思ってる。最低だ、僕は。
「うん、ありがとう!」
そういって藤沢さんが微笑む。そのとき、あの言葉が聞こえた…気がした。

―…お前…ホントにそれでいいのか?―

…いいわけ…ないだろ。

…思わず、声が出た。
「藤沢さん。」
「なに?」
「僕、藤沢さんのこと好きなんだ。」
「!!」
藤沢さんは、声を失っている。って当たり前か…勝手に幕を上げたのが僕なら、幕を下ろすのも僕の仕事だ。
「ごめん。告白前日の人にコクっちゃうなんて、キューピット失格だよね。明日、成功するように祈ってるから。それじゃ!」
僕はたまらず走り出した。藤沢さんの声が聞こえた気がするけど止まらない。気がつけばそこは昇降口で、誰かが壁に寄りかかっていた。
「…ヤス…。あはは、僕ってとことん損な役回りだな…」
「…かっこよかったぜ。」
「…ちゃ、ちゃかすな、バカタレ。」
…涙が、止まらなかった。


翌日、未だに引きずっている僕は、あろうことか藤沢さんの呼び出しを受けてしまった。
「…昨日は驚いちゃった。」
そう藤沢さんがきりだした。まいったなぁ、顔もまともに見れないよ…。
「うん、驚かせてごめん。それで、告白はどうだった?うまくいった?」
とりあえず話題をそらすためにそう聞いてみた。ホントはそんなこと聞きたくないんだけどね…。
「ううん、これから告白するの。」
なんだ、まだか。ひょうし抜けした反面、ホッとする。
「あ、まだだったの?それじゃ僕と話してる暇はな…」
「永見悠士くん、私の彼氏になってください。」
「…はえ?」
…え?今なんか聞こえましたよ?ぽかーんとしてる僕を藤沢さんはじっとみつめてる。えぇっと落ち着け、どうなってるんだ?藤沢さんは、俺に告白したの?え?なんで?パニックのままとりあえず確認してみる。
「今…なんて?」
「だから〜、私も永見くんが好きなの!」
さっきよりストレートに藤沢さんが叫ぶ。…頭の中まっしろになりそうだよ…。夢じゃないよね?ほおをつねってみる。…痛い。どうやら現実みたいだ。けど…
「じゃあ、どうして僕に相談なんてしたの?ふつう告白する相手に相談なんてしないよね?」
ほおをつねったまま話す僕を見て、藤沢さんが笑いながら答えた。
「永見くんと接点を持つにはそれくらいしかないかなぁって思ったから。」
さらに藤沢さんは続けた。
「…ずっと前から気になってたんだよ?人の恋の話にどうしてそこまで真剣になれるんだろう?すごいなって。それで目で追ってるうちに、永見くんの優しさに気づいて、その優しさを好きになってる自分にも気づいて…。だから相談って名目で永見くんに話しかけたの。でも、私の相談にもふつうに答えるんだもん。私には興味ないのかと思っちゃって、昨日の告白がなかったらあきらめちゃうところだったよ。これだけ不安にさせたんだから、責任とってよ!」
そっか、なんだかんだ言って、こうなれたのはヤスのおかげなのかな?心の中でヤスに礼を言って藤沢さんの顔をみる。藤沢さんの顔は、照れてるんだろうか、真っ赤だ。だから僕も顔を真っ赤にしながらこう答えるんだ。
「うん!よろこんで!」
ってね。



あー、それと前言撤回!キューピットっていうのも、損ばっかりじゃないね!

    〜終〜


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