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『キューピットの恋』
【青春 恋愛小説】

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『キューピットの恋』-1

「あのッ!」
呼び出された場所に行ってみたら顔を真っ赤にした女の子が待っていた。ふつうに考えたら告白される感じでしょ?…でも僕の場合、違うんだよね。
「私、上原先輩のことが好きなんですッ!」
…あ、ちなみに僕の名前は永見悠士っていうんだ。ね、全然違うでしょ?じゃこの告白は何かって?まぁすぐにわかるよ。
「えっと、君と上原君の関係は?」
「部活の先輩後輩で、すごく仲はいいんですけど…」
「なるほど、じゃあ知り合いなんだね。で、当然告白して付き合いたいと。」
「はい!…でもどうやって告白したらわからなくって…タイミングとか…」
「そうだなぁ…。上原君、確か再来週の金曜が誕生日だから、プレゼント渡しつつ告白なんてどう?誕生日プレゼント渡すって口実つけて呼び出せるし。プレゼントは、シルバーの指輪かなんかがいいかなぁ、この前欲しがってたし。」
「なるほど、助かります〜!さっそくプレゼント買わなくちゃ!永見先輩、アドバイスありがとうございましたぁ!」
そう言って元気いっぱいに駆け出す女の子。あ、コケた。

…ところで話はかわるけど、僕の立場わかってもらえたかな?ここまで読んでもらえればなんとなくわかると思うけど、僕には恋愛相談がやたらくるんだ。なにしろ僕に相談した子の80%が告白に成功してるもんだからね。それでついたあだ名が「恋のキューピット」ってわけ。
「まっ、別名『貧乏くじ夫』だけどな」
むっ、失礼な!
「そういうのはお前だけだろ!ヤス!」
僕を『貧乏くじ夫』と呼んだのが親友の関元康司。通称ヤス。ちなみにこいつの彼女も僕に相談してきたっていうのは秘密だ。
「しかしお前もあきずによくやるよなぁ。人の恋ばっかうまくいかせて楽しいか?つか、お前好きな人くらいいないわけ?」
別に楽しくてやってるわけじゃない。ただ頼ってきた人を放っておけないんだよね、性格的に。それに…、
「俺にだって…好きな人くらい…」
それを聞いた途端ヤスの目が光った。…しまったと思ったときにはすでに手遅れなわけで…。
「誰っ!?」
…こうなるとヤスはしつこい。答えるまで追い掛け回されるだろう。それに…
「…藤沢舞…。」
コイツに嘘は通用しないんだよね。
「ほぉ、いいとこに目ぇつけたな。顔よし、成績よし、明るくて性格もよし。お前にはもったいないな。」
「うっさい、大きなお世話だ、バカタレ。」
「冗談だよ。で、なんでコクんないわけ?恋のキューピット様ならコクるのなんてちょろいもんだろ?」
うっ、痛いところを突かれたな…。
「藤沢さんと話したことあんまりないし、それに…」
「それに…?」
「他人の恋と違って自分のは緊張しちゃって全然…。」
「…んだよなっさけねーなぁ」
…返す言葉もございません(涙)


ところが、数日後思いもよらぬ事態になってしまった!
「あのぉ〜、永見くんちょっといい?」
…その藤沢さんが、僕に会いにきたんだ。この時点でいやーな予感してたんだよね。
「…実は恋愛のことで相談があるんだけど…」
…やっぱりね。どうやら僕の恋は不戦敗みたい。僕に相談するってことは、つまり僕は眼中にないってことなわけで。
「恋の相談ならまかせてよ。何が聞きたいのかな?」
それでも断れない僕は根っからのキューピット体質なのかもね。ほんと損な役回りだな、キューピットって。
「ありがとう!実は好きな人はいるんだけど、なかなか声をかけられなくて困ってたの…」
こうして僕の好きな藤沢さんの恋愛相談を受けるハメになっちゃったんだ…。


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