投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

〈熟肉の汁〉
【鬼畜 官能小説】

〈熟肉の汁〉の最初へ 〈熟肉の汁〉 158 〈熟肉の汁〉 160 〈熟肉の汁〉の最後へ

〈霧散した未来〉-9



――――――――――――




『ヒックッ…ママ…ママ……』


彩矢は寝室に籠り、布団の上で泣きじゃくっていた。
訳が分からぬうちに父親が怒りだし、母親は追い立てられるように出ていったのだから……。


『入ってこないで!パパなんか大嫌い!』


耕二の…父親の気配を感じ、彩矢は布団に突っ伏しながら叫んだ。


『ママの…ヒック…ママの言う事なんか一言も聞かないで…ヒック…ママ泣いてたのに……泣いてたのに……ヒック…パパのバカァ!』


耕二は一言も返せなかった。
あのDVDケースを見て激昂し、感情のままに怒鳴ってしまったのは事実であるし、恭子の意見を聞こうともしなかったのもまた事実であった。


最近、恭子の様子がおかしかった時、自分は本当に心配していたのか?
何らかの事件に巻き込まれ、そして何らかの脅迫を受け、それを知られまいとしていたうちに、あんなDVDを作られる結果を招いてしまったのではないのか?

妻の心底にある悩みを汲み取らず、上部だけの労りを口にしただけで自己満足し、あまつさえ一方的な決め付けだけで恭子という女性にレッテルを貼ってしまった……それを耕二は完全に否定出来ない……。


『……ごめんね彩矢…パパ、今からママに謝るから……』


耕二は携帯電話を取り出すと、恭子に掛けた。

何があったのか?
どんな目に遭わされたのか?

全てを許せる自信はなかったが、受け止める努力はしたい……彩矢には絶対に恭子が、母親が必要なのだ……それだけは確信しているのだから……。


{お呼び致しましたが、お繋ぎ出来ませんでした}


無機質な声が不通を告げる。
もう一度……更にもう一度……その結果に変化は見られない……。


『出てくれよ……お願いだよ、恭子……』


時間だけが過ぎていく。
十分……三十分……一時間……耕二と彩矢の願いは恭子の携帯電話に届かない……




〈熟肉の汁〉の最初へ 〈熟肉の汁〉 158 〈熟肉の汁〉 160 〈熟肉の汁〉の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前