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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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N.-3

翌日は休みだった。
湊も休みらしい。
午後からスタジオに行く約束をしていたが、洋平の急用で急遽中止になった。
それを湊に伝えると、湊は子供のようにニヤニヤした。
「なにその顔」
「ひな坊お好み焼き好き?」
ずいぶん前から同じ布団の中で寝ている。
そんな午前9時。
布団の中で湊が子供のような質問をする。
「うん、大好き」
「今日のお昼はお好み焼きやろ」
「いーね!」

朝にめっぽう弱い2人がそのまま二度寝したのはで言うまでもなかった。
11時になり、湊がモゾモゾし出す。
「ぁ…二度寝しちゃった」
「ぅうーーー‼身体いてぇ…」
湊は伸びをした後、陽向を優しく抱き締めた。
「なんか、久しぶり」
「そーだね」
そう言って湊の顔を見上げる。
眠たそうな顔はいつもと同じ顔だけど、なんだか胸がキュンとなった。
そういえば付き合ってからもう4年くらい経つだろうか。
それでもまだ、優しさや温かさ、思いやりはいつまでも褪せない。
「なに人の顔ボーッと見てんだよ」
陽向はイヒヒヒと笑って湊のスウェットに顔を埋めた。
「大好き…」
「…ぁんだよ、いきなり」
「言いたくなっただけ」
頭を優しく撫でてくれる。
「好き……なのかな…」
「え…」
予想もしなかったその言葉に心臓が抉られる。
悲しみに満ちた目で湊を見ると、湊は真剣な顔をしていた。
頭が真っ白になる。
「好きじゃねーんだよ」
「……」
「許せねーこといっぱいある。例えば、俺が大切にとっといた高級ビーフジャーキー食ったこととか」
「な、なに?!そんなの根に持ってんの?!」
「あれ、ちょーレアなのになぁー。何十年後かなー…お前が誕生日にプレゼントしてくれんの楽しみにしてるわ」
「何十年後って…」
「お前はずっと俺の隣にいなきゃいけねーの。ビーフジャーキー返してもらわなきゃいけねーし」
「なにそれ。遠回しのプロポーズ?」
「そう」
「もっと雰囲気あるとこで言ってよ」
「例えば?」
「えー……。わかんないけど!でもこんなとこじゃやだもん」
「俺がそんなロマンチックなこと出来ると思う?」
「出来ないと思う…」
「正解」
湊はこの前テレビで見た芸人のマネをした。
不意に笑ってしまう。
そして、その不意を突かれ、温かいキスをされた。
「ほんと、湊ってズルいよね」
「ズルいのはお前も同じだろ」
「ズルくないもん」
「そーやって可愛く笑うのが、ズルい」


この笑顔を、どうか、俺だけのものにしてください神様。
この先もいつまでも、ずっと、ずっと、陽向と笑顔でいられますように。


ホットプレートを取り出し、昼過ぎに寄ったスーパーと近所の八百屋、肉屋で買った物を切って混ぜる。
「この過程好き」
「あたしも好きー!混ぜたい!」
「だめ」
「なんで!やらせて!!」
ぎゃあぎゃあ言いながら一通り終えて温めたホットプレートでお好み焼きを作る。
お互いに上手く引っくり返せなくでケラケラ笑う。
幸せだなぁ……心の底からそう思う。
そして”湊だったら、きっといいパパになるんだろうな”と思った。

「ひな坊」
「なに?」
4人前はあるであろうお好み焼きを平らげ、テレビを観ていたとき、湊が口を開いた。
「なんか太った?最近」
「え?そう?わかんない……あんま気にしてなかった。最近忙しかったから」
「確かに忙しそーだもんな」
「うん……」
一瞬冷静になる。
そういえば、もうずいぶん生理が来ていない。
そんなことすら気付かなかった。
ま、まさか…。
「あ、ちょっと病院行かなきゃ。仕事思い出しちゃった」
陽向は声を震わせながら言った。
「雨だし、送ってこーか?」
「いい。バスで行く」
「あそ」
陽向はそそくさと準備し、傘を持って家を出た。

どうしよう……。

そんな事を思いながら、病院とは逆方向のバスに乗る。
心臓が暴れている。
何も考えられない。
この現実も、そして、未来も。


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