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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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N.-13

「おみくじ引く人ー?」
「俺引くー!」
「俺もー!」
13時。
約束通りみんな近所の神社に集まった。
天気は曇りでだいぶ肌寒い。
陽向はマフラーに腹巻きと防寒対策バッチリの状態で合流した。
砂利道を歩き、色んな所で写真を撮った。
しばらく歩いた先にあるおみくじの前で4人でキャッキャ騒ぐ。
「うぉー!大吉!やったぁ!」
洋平が文を読んでいる時、大介が「やべぇ!凶!」と叫んだ。
「日頃の行い悪いからだよー。どーせ”対人関係に難あり”とか書かれてんだろ?」
「やば!洋平正解!エスパーかよ」
「え、マジなの?俺、大介のこと分かってるぅー!」
2人がケラケラ笑ってる中、海斗が「陽向、なんだったの?」と言ってきた。
「可もなく不可もない吉だよ」
「あはは。俺、大凶」
「かいくん!それ、結んだ方がいーよ!!!」
陽向は海斗の腕を掴んでおみくじだ大量に結ばれている場所に連れて行った。
「走るなよ陽向!」
「だって!…ホラ、早く結んで!」
陽向はおみくじが大量に吊るされている木の前に行き海斗に「右手で結ぶんだよ」と言った。
「えーちょー結びにくい…」
海斗は陽向と同じ左利きなので右手だけでおみくじを結ぶのに苦労していた。
のも束の間。
コツを掴んだらすぐに結びあげた。
さすがベーシスト、と思う。
「右手の動きがエロいよね」
3人がゲラゲラ笑う。

昨日行けなかったハンバーグ屋に行き、暖をとる事にした。
「陽向、毛布あるってよ」
洋平がさり気なく毛布を頼んでくれていたみたいだ。
「ありがとー!よーちゃん紳士じゃん。どーしたの?」
「んー…いやー…陽向も一応女子だし?」
「一応ってなに!」
「うそうそー!妊婦さんは身体冷やしちゃいけないって言うじゃん?外寒かったしさー」
洋平が恥ずかしそうに話すのを見て少し、いや、かなり嬉しくなる。
「ありがとよーちゃん」
「洋平かっこつけんなよー!早く彼女作れ」
「うるせーな!こっちだってめちゃくちゃ欲しいわ!」
談笑していると、料理が運ばれてきた。
みんな違うものを頼んでいる。
陽向はハンバーグドリア、大介はミックスグリル、洋平はオムハンバーグ、海斗は和風ハンバーグだ。
「陽向と洋平、いつも邪道だよな」
陽向と洋平はいつもそうだ。
この前みんなで行った街のパン屋では、陽向と洋平だけ「おいしそー!」と言って角煮サンドを頼んでいた。
「こりゃ邪道じゃねーだろ!」
「そーだよ!」
「いや、邪道だね。大体、ハンバーグ食いにきてオムライスとかドリアとかおかしいし」
大介が言う。
「結構主流だよ?ファミレスとかにもあるしさー!てゆーか、邪道とか言っちゃってさぁー、店長に謝れよー」
洋平がブーブー言い始めると「こりゃ負けましたー!」と大介が笑った。

昨日、だいぶシビアな話をして、涙を流す姿を見せた仲間。
なのにいつもと変わらぬ笑顔でいつもと変わらぬ時間を過ごして、そして、いつもと変わらぬくだらない事で盛り上がる。
たった”一瞬”の喜びや楽しさを共有し続けることって、きっと難しい事だと思う。
あの時誰がどう思ってたんだろうな、って誰もが考える事でも、一瞬で無くなってしまうこの瞬間。
儚いようで、それでいて忘れたくない大事な時間。
みんながいるから、そう思える。

楽しい食事をしながら楽しい話をして、幸せな気分に浸る。
帰り道、海斗、洋平と別れを告げ、最寄り駅のすぐ近くの分かれ道で大介と「じゃあね」と別れる。
もう秋まっしぐらな道を歩きながら、すれ違う人達を何気なく見る。
ベビーカーに乗った赤ちゃんが、楽しそうに笑う。
元気かなぁ…この子も……。
なんとなくお腹をさすると、ポコン と確かな感触があった。
初めて動いた。
たまらなく嬉しくなる。
ただ、隣に湊がいてくれたらよかったな、と思ってしまう。
「ママも元気だよ。それにね、幸せ」
人目も気にせず呟いてしまう。
1人でニヤニヤしてしまう。
今日は、美味しい晩御飯を作ろう。


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