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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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拾陸-1

「高坂八魔多の居場所を突き止めたぞ」

そう言って傀儡女たちの前に姿を現したのは絹隠れの沙笑だった。彼女は徳川方の陣所を転々とし、密かに春をひさぎながら伊賀者頭領の所在を探っていたのだ。

「ようやく分かったか!」

声を張り上げたのは稀代だった。伊代も同時に叫ぶ。

「さっそく乗り込んでいって宇乃の敵(かたき)を討とうぜ!」

傀儡女たちは誰もがまなじりを決して立ち上がったが、それを千夜が押しとどめた。

「皆が行ってしまい、万が一誰も戻って来なければ『影負ひ』の術を施せぬではないか。あれは私の他に五人の力が要る」

「それでもあたいは行くぞ、敵討ち!」

稀代・伊代が同時に言い張り、沙笑も「獲物を見つけたのはあたしだからな」と居残りを拒否した。

「そうか。稀代、伊代、沙笑は仇討ちを選ぶか。……他にも、飛奈は鉄砲撃ちとして欠かせぬ存在ゆえ戦場に出てもらうが」千夜は傀儡女たちを見渡した。「早喜、久乃、由莉、音夢、睦。この五人は『影負ひ』施術の要員となってもらう。いいな」

早喜も宇乃の敵討ちに参じたかったが、幸村の身を護る術である「影負ひ」のほうが大事であった。
 そこへ、宇乃の父親、海野六郎が顔を出した。

「わしも八魔多を討ちに行きたいのはやまやまだが、わしには殿の影武者となる役目があってな」

六郎は稀代、伊代、沙笑の三人に近づき、それぞれの手を取った。

「わしに代わって宇乃の敵を討ってくれ。けれども、けっして無理はするな。おぬしらまで死んでしまっては宇乃も浮かばれない」

「大丈夫さ」沙笑が不敵に笑った。「正面から斬り合いを挑むんじゃない。色仕掛けで近づき、隙を見て殺してやる」

「おぬしらなら出来るやもしれぬが、相手はあの八魔多だ。くれぐれも慎重にな」

沙笑はまた笑い、稀代・伊代は「まかせておきな!」と豊満な胸を叩いた。その姉妹に千夜が手招きし、低い声で話しかけた。何やら秘策を授けているらしく、稀代たちの顔が引き締まり、常にない真剣さを帯びていった。

 早喜は沙笑に近寄って小声で聞く。

「本当に大丈夫? どうやって近づくつもり?」

「果たし状を送りつけるさ」

「果たし状? 正面から斬り合いを挑むのではないって言ったはずじゃ……」

「斬り合いではなく、まぐわいの果たし合いだ」

「え?」

「腎虚になるまで精を搾り取るか、呆けるまで逝き狂わせるかの決闘さ」

「そんなこと……」

「いや、あの八魔多はずいぶんな酔狂者と見た。この、閨(ねや)での果たし合いには乗ってくるだろうよ」

「……精を搾り尽くして、その隙に殺すっていうの?」

「ああ、そうさ」

「どうやって殺すつもり? 乗り込んでいったら裸に剥かれ武器は全て取り除かれるよ」

「細身の真田紐を束にして、肛門の奥に忍ばせておく。そして、いざという時に紐束をひり出し、それを素早くほどいて相手の首に巻き付け、絞め殺す」

早喜は驚いた表情で沙笑を見つめていたが、彼女には悲壮感などなく、微かな茶目っ気さえ漂わせていた。その雰囲気に早喜も敢えて合わせた。

「それじゃあ沙笑。おまえは『絹隠れの沙笑』ではなく『紐隠しの沙笑』になるぞ」

「紐隠しの沙笑か。そりゃあいい」

沙笑は身体を曲げてゲラゲラ笑い、早喜も釣られて笑った。
 二人して大笑いしたあと、早喜は真顔になり、相手の両肩に手を置いた。もう、言葉は掛けなかったものの、瞳が、今までの二人の思い出を凝縮したような色を湛えていた。


 五月五日の夜。大坂方の部隊が道明寺に向けて動くという知らせを受け、家康は藤堂高虎と井伊直孝に道明寺へ向け進発するよう命じた。が、敵が実際には道明寺より一里半ほど北の八尾方面へ動いていることをつかんだ藤堂高虎らは進路を変えた。
 城方の長宗我部盛親は八尾村へ五千余の兵を率いて向かっており、木村重成は六千の兵で少し北の若江村を目指していた。
 六日早朝には藤堂高虎勢五千と長宗我部盛親の部隊が戦いを始め、井伊直孝に榊原康勝らが加わった九千余の勢力が木村重成勢とぶつかるが、その前、五日深夜、八尾より東南の国分の廃寺で、伊賀者の頭領と真田傀儡女たちの戦いが行われた。

 高坂八魔多の隣には風魔小太郎が控えており、沙笑はその小太郎と、そして稀代・伊代姉妹は二人掛かりで八魔多とまぐわい合戦をすることになった。
 案の定、傀儡女たちは衣を脱がされ、毛髪をまさぐられ、陰門・肛門に指を入れられ、寸鉄も帯びていないことを確かめられた。沙笑は肛門を探られた時少し緊張したが、束にした真田紐は指の届かぬかなり奥に押し込んでいたので発見を免れた。


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