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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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拾参-2

 惣構えの奥にある娼家「禄紋」は戦直前の昼日中だというのに牢人たちで混み合っていた。早喜は裏口から大助を案内すると、忙しそうな千夜に若殿来店を告げ、「ああ、今、遊び女たちは手一杯だから、早喜、おまえが相手してやりな」という返事を投げ返された。

「私が相手って……」

驚く早喜を尻目に千夜は女たちの督励に大声を上げ、店の奥でさぼっている娘を見つけると、灸を据えるために行ってしまった。

「すごい繁盛ですね、早喜さん」

「……あ、あの……、大助様も客になりますか?」

「えっ?」

「あいにくと店には他の娘(こ)がいなくて、……私が相手するしかないのですが……」

申し訳なさそうに言う早喜に、大助の顔はみるみる赤くなった。
 九度山では沙笑をはじめ稀代や伊代らと交わったことのある大助であったが、早喜と寝たことはなかった。傀儡女の中で最も愛らしい容貌の早喜と、いつかは同衾したいと思っていた大助ではあったが、思いもかけずにその機会が転がり込んできたのである。

「さ、早喜さんが相手……」

「嫌ですよね。今日はおやめになって他の日にでも……。それならば遊び女に空きもありましょう」

「いや。他日など……、明日にでも戦が始まろうというのに、他日など……」大助は勝手に言葉が出てくる自分に戸惑っていた。「この日を逃せばもう、おなごと寝る機会もあるまい。早喜、ぜひに、頼む!」

今年一月に元服したばかりの十二歳の若侍は真っ赤な顔で早喜に頭を垂れた。


 店の奥、そのまた奥に、喧噪からやや離れた小部屋があった。
 そこへ案内された大助は早喜が衣を脱ぐ音をうつむいて聞いていた。そして、顔を上げると、明かり取りの小窓からの淡い光に浮かぶ裸体に目を奪われた。気恥ずかしそうにする早喜の表情に陶然となった。
 二十歳ひとつ前の娘ともうすぐ十三歳の少年。その二人が薄い布団の上で膝を突き合わせる。なぜか双方とも初夜のようにぎこちなかった。早喜は主君幸村の子息であることを意識し、大助は憧れの女性を前に興奮の度合いが高かった。

「さ、早喜。……口吸いしてもいいか?」

「……どうぞ」

同衾は接吻から始まった。柔らかな唇に大助の心はとろけ、舌が触れ合うと、それだけで少年は爆ぜそうになった。女体は何度も経験しているが、早喜が相手だとすべてが新鮮だった。ことごとくが色濃かった。
 大助の股間の若武者はすでに雄々しく屹立し、早喜の指が嫋やかに触れると暴発しそうだった。しかし、童貞を修めて数年経つ彼は先走りの透明な液は滲ませるものの白濁液は漏らさなかった。
 大助は早喜の滑らかな身体をまさぐり、控えめな胸の膨らみに唇を押しつけ、淡い陰毛を冠する女陰に手を這わせると、指に微かなぬめりを感じた。大助はもうたまらなくなり、よけいな愛撫は省いて交わりたくなった。
 早喜に熱い視線を注ぐと、目元に笑みを湛えうなずいたので、大助は滾る肉竿を秘唇に押し当てた。十二歳ゆえに白桃を思わせる色合いの竿ではあるが、それ以外は大人に引けを取らぬものは、ゆっくりと甘い蜜壺へ埋没していった。
 夢中で早喜を掻き抱き、腰を振る大助。亀頭で膣襞を感じ、肉竿で締め付けを味わう。そして、相手の顔に目を転ずると、愛らしい顔はほんのり朱に染まり、笑みを浮かべつつも時折切なそうにする様は彼をいたく興奮させた。
 もっと長く早喜を味わっていたい思いと、情動に任せてドッと精を放ちたい気持ちがせめぎ合ったが、ついつい早腰で抽送してしまい、高まりも早く訪れた。早喜の女陰を精液で汚すことは何故かはばかられ、大助は射精の直前に魔羅を抜き、虚空に放った。
 彼はその瞬間、時の流れが極端に遅くなったように感じた。亀頭の先から噴き出た濃い白濁は紐のように宙を進み、いったん途切れ、またも鈴口から白い紐が伸び、それらは早喜の胸に、腹部に落ちてへばりついた。あとは紐とはならずに、溶けた蝋のごときものが尿道口に滴をこしらえていた。

「中に出してもよろしかったのですよ」

早喜の優しげな声で我に返った大助は、脱ぎ捨てた着物の袖から慌てて懐紙を取り出すと、女体に付着した精液を丁寧に拭いた。

「大助様。今一度、為合(しあ)いまするか?」

聞かれてしばらく大助は黙っていたが、触れ合う肌を通して伝わってくる早喜のぬくもりが彼の股間を熱くした。

「今一度、頼む」

二人は抱き合い、再び交接に及んだ。
 今度は逸(はや)ることもなく、じっくりと抽送をおこなう大助。早喜も徐々に感じてきて、控えめな嬌声を漏らす。声は小さいが、表情・指先・身体のくねりが女体の高まりを示し、大助に「男」を意識させた。女を喜ばせてやろうという気持ちが膨らみ、拙いながらも腰の振りに変化をつけたりした。
 そんな彼を早喜はいじらしいと思い、ついつい演技を加えてしまう。背をのけ反らせ、相手の肌に軽く爪を立てる。そして、大助が二度目の吐精を、今度は膣の中で果たした時、早喜は膣を小刻みに収縮させ、逝ったふうを装った。これは千夜から教わったものだったが、大助に対して使うのは少々心苦しかった。しかし、中で精を思い切り放ち、満足げな彼を見ると、『よく頑張りました』と姉のような心になり、早喜は笑顔になるのだった。その笑顔は大助をとても幸せな気持ちにさせ、戦に臨む前の、束の間の憩いとなったのである。


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