〈人外の戯れ〉-7
『……ふぅん……確かに男好きのする顔と身体をしているわ……』
間近に見る由香という女性は、恭子から見ても美しい容姿をしていた。
身長は特別に高いというわけではなく、ハイヒールを履いている分で、恭子より頭の位置が高くなっているだけだ。
しかし、その僅かな身長の違いによって、普通に対峙するだけでも自然と見下ろされる格好となってしまっていた。
黒光りする髪は顎のラインと沿うように刈られ、三白眼のパッチリとした目はキッチリとマスカラが引かれ、その鋭い眼光に拍車を掛けている。
鼻筋は真っ直ぐに通り、真っ赤なルージュに彩られたポッテリとした唇は、冷酷な笑みを湛えて口角を上げている。
黒革のボンデージはコルセットのように細い身体を締め付けて、中々なボリュームを持つ胸肉を寄せて持ち上げ、カップ部分だけをくり貫いたような黒革のブラジャーが、小振りで桃色な乳輪と乳首をツンと天井に向けさせていた。
しかし、見事なのは下半身である。
腰骨の張り出した臀部は重量感があり、小振りなスイカでも繋げたかのような二つの曲線は、恭子の其れを問題にしていない。
そして黒革のガーターベルトと黒いレースのガーターソックスに囲まれたサテン生地の真っ黒なパンティーは、ピッチリと股座に張り付いて微妙な膨らみを隠さないでいた。
そのパンティーも小さな物ではなかったが、圧倒的な巨尻故か、まるでＴバックでも穿いているかのよう。
白い肌は全身黒革で固められ、真っ赤なルージュだけが女性的な可愛らしさを見せているが、こんな全裸も同然の格好を人前で曝せるその神経は、やはり異常者の其れであろう。
『私は由香って言うの。気安く呼んだら只じゃおかないからね？』
これから、この女王様のような女に虐められる……その様を何時ものようにカメラに収められ、この畜人達に観賞されるのだという運命に気付いた恭子は、睫毛から零れだした雫を拭う余裕すら無くなっていた……。
『……なあんてね？嘘よ、そんなの嘘。ほら泣かないでぇ？』
掌を返したように由香は柔らかな笑顔を見せて、鞭を持たない左の手で、恭子の頬に指を添えた。
この態度の変化に着いていけないままの恭子は、どうすれば良いのか分からぬまま立ち尽くしている。
『ちょっと…頬っぺたがポチャポチャしてるかしら？肉付きが良い身体してるから…ねえ？』
「ひいッ!?く…くッ!!」
由香は涙に濡れる頬を軽く抓(つね)ると、その伸ばした手を下げてパジャマの上から胸肉を握りだした。
寝起きのままなのだからブラジャーなど着けてはいないし、その豊かな弾力はパジャマと肌着越しに由香に感触として伝わる。
思わず恭子は僅かに身体を捩って嫌がる素振りを見せたが、その次の瞬間、鞭が空を斬って顎を掬うように当てられた。