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『正夢』
【青春 恋愛小説】

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正夢〜鹿見護の一日〜-5

「で、どこに行くんだ?」
「…ついてきて下さい」
「…?」

エルナについて電車に乗ると、エルナはぽつりと喋り始めた。

「これからいく場所は、私の想い出の場所なんです」
「そんな場所に俺を?」

彼女は何も言わずにただこくりと頷いた。
ふと周りを見ると、みんなの視線はエルナに集まっていた。
確かに、彼女は顔立ちもそれほど外国人らしくはなく、とても可愛い。もしかしたら、親や祖父母に日本人がいるのかもしれない。

「あ、着きました。この駅です」
「あ、あぁ…わかったよ」

とりあえず電車を降りて駅の外に出る…って。
ここ、俺の住んでる街じゃん。ここになんか面白い場所あったっけ…。

「こっちです」

エルナはどこか嬉しそうに歩き始めた。その足取りをみて、俺は彼女がどこに向かっているのかがわかった。



彼女が迷わずに向かった場所…それは、俺たちが通っていた小学校だった。
今の時間帯は、小学生たちが校庭で部活動をしていた。
二人で門をくぐり、近くのベンチに腰を下ろした。子どもたちの、まだ声変わりをしていない高い声が響く。

「…朝に、いじめられてたって言いましたよね」
「ああ、言ったなぁ」
「本当は…いじめてきた男の子が好きだったんです」
「……!」

俺は、動揺がばれないようにあえて口を閉じた。

「みんなが気味悪がって近付かなかったのに、その人だけ私を構ってくれたんです」
「へぇ…」

エルナはそこまで言うと、口を閉ざしてしまった。ただ、風の音と子どもたちの声だけが俺たちの耳に響いていた。



「私、あなたが好きです…」
「…わかってたんだ」
「だって、初恋の人ですから…」

彼女はそういうと、俺に向かって微笑んだ。夕陽が彼女の顔を淡く照らす。俺も、自分の気持を素直に伝えた。

「素直に嬉しい。けど、俺でいいのか?」
「はい…」
「また泣かせるかもしれないよ」
「平気です。慣れっこですから」

彼女はそういいながら薄く笑った。紅い瞳が俺の心を射抜く。その笑顔が可愛くて、俺は決意したんだ。

「…なんてな、冗談だよ」
「え…?」
「もう、エルナのことを泣かせない。絶対に…」
「護さん…」
「…小学校で告白なんて、色気がないな」

彼女は頭をふるふると横に振り、言葉を返した。

「ううん…いいんです。私は、ここがいいんです…私と、護さんの想い出の場所なんですから」
「そっ…か。まぁ、これからはいつでも付き合うよ。だから、今日は帰ろう…一緒に」
「…はい!」


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