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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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 今宵も大助は沙笑とまぐわい、極上の膣襞のさざめきを味わい、夜目にも麗しい容(かんばせ)を引き寄せて接吻し、かぐわしい吐息と甘い唾液をむさぼった。
 十一歳という若輩ながら、大助は沙笑の手ほどきで性の営みは巧みになっていた。その技よりも沙笑を喜ばせたのは、若さ由来の臍を叩くほどに反り返る「勃ち」で、三度吐精しても回復する性欲の旺盛さも気に入っていた。
 じつは沙笑は主君、幸村から「時が参ったら息子を男にしてやってくれ」と内々に指名を受けていたのだが、精通する時を待たずに女体を知らしめたのだから、この女の言わば「やんちゃさ」が窺えるというものである。

「やんちゃさ」と言えば三好の稀代・伊代姉妹も相当なもので、真田傀儡一座の巡業に付き従っていない時などは、野掛けで山裾にいる大助を見つけると姉妹で襲いかかり、生い茂る草の陰で若い男の肉体を弄んだ。
 興行の途中で、いったん九度山に戻った真田傀儡一座の面々がいる時は、宇乃・音夢・睦らが、大助を猫かわいがりした。ただ一人、早喜だけは大助に愛らしい笑顔を見せるだけで、じゃれついてくることはなかった。
 そうされると妙なもので、大助は早喜のことが気になった。沙笑らと同じ十八歳だが、身体は稀代・伊代の豊満さとは対極の細身であり、乳房も沙笑ほどふっくらしてはいなかった。しかし、愛くるしさは格別で、特に笑顔を向けられると心が妙な感じになるのだった。温かくなるような、どこか切ないような、とにかく心奪われる笑顔であった。

 その早喜は、母、千夜とともに幸村の屋敷に呼ばれていた。

「来年あたり……とおっしゃいますか」

千夜の言葉に幸村はうなずいた。

「さよう。あと一年もせぬうちに大坂方より参陣の誘いが来るであろう」

「ということは戦が始まると……」

「まだ確証はないが、畿内を主に探っていた早喜のもたらす情報によると、大坂城はかなりきな臭い雰囲気に包まれておるそうな。そうであろう? 早喜」

「はい。淀殿の家康憎しの思いは募っているようで、この先、何かきっかけがあれば、戦支度をするやもしれませぬ」

「そして豊臣家より真田に声が掛かった暁には、わしは決起せんと心に誓っておる」

「いよいよもって勇躍壮途につかれるのですね」

千夜は感慨深げに目をしばたたかせた。

「亡き父、昌幸の存念を晴らす機会じゃ。腕が鳴る。……そこで千夜に前もって動いてもらいたい」

「はっ」

「配流の憂き目にあった当家じゃが、ここ九度山に付き従いし者は家臣のほんの一握り。残りは信州に散らばり、息を潜めていることじゃろう。その者らに声を掛けて回ってもらいたいのじゃ」

「いざ鎌倉ならぬ、いざ九度山という時には紀州へ馳せ参じよ。こう申せばよろしいのですね」

「さようじゃ。家人は信濃ばかりか甲斐にもおるだろう。千夜一人では荷が重い。早喜、おまえも行け。傀儡一座の皆も一時、芸を休み、信州、甲州を渡り歩いてもらいたい」

「かしこまりました、殿。……宇乃、稀代、伊代、由莉、音夢、睦の、皆に申し伝えます」

早喜は幸村の瞳に燃え立つものを覚え、それが自分にも飛び火しそうで思わず身体を固くした。いつもは穏やかな幸村。そんな彼から「秘めた熱さ」を時折感じることのあった早喜だったが、今、はっきりと戦国武将の熱意を示され、微かに身震いするのだった。


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