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【スポーツ 官能小説】

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〜 日曜日・先輩 〜-1

〜 29番の日曜日 ・ 先輩 〜 

 

 日曜日は特別な日だ。 学園寮の規則から解放され、講義がないため登校する必要もない。 無制限では決してないし、幼年学校時代とは比べるべくもないが、限られた範囲の、それでいて充実した自由を満喫できる。 心身を酷使したあとに訪れる、魂を休める貴重な時間だ。
 例えば日曜日に朝の『ご挨拶』は存在しない。 食事も一斉にとる形式ではない。 各自が食堂のボックスミールをとって、好きな時に好きな場所で食べる。 自室で食べることも認められている。 例えば15時に食堂でチョコチップが振舞われたり、シャワーに加えて5分間の入浴を認められたり、兎にも角にも小さな癒しが散りばめられた一日だそうだ。 学園に入って緊張感が取れない新入生も、この日ばかりは瞳に輝きを僅かに取り戻せるという。 

 B29番先輩は寮生活の流れについて、入寮初日に教えてくれた。 情報量が多すぎて一度に呑み込めたわけじゃないけど、日曜日について教わったことは覚えている。 全く明るい光が見えない学園生活において、私が垣間見た僅かな安らぎだった。 日曜日なら、私もこっそりくつろげるかもしれない。 遠くにいってしまった笑顔を取り戻せるかもしれない。 そう思った。

 ……取り戻せる、筈だったのに。

「一日かけて、もう一度爪先から頭のてっぺんまで、貴方が相応しいかどうか見てあげる。 私に相応しいというより、寮や学園に相応しいかどうかをね。 もしそれなりに見込みがあれば話は別だけど、正直、学園に適応できないなら、ここでリタイアする方が幸せだと思ってる」

 朝、目が覚めて開口一番言われた台詞がコレだった。

「寮長が言ってたこと、忘れないで。 色々話をするのは、全部私の独り言。 返事はいらない。 出来れば貴方を処分したくはないけれど、そうしなくちゃいけないなら……短い間だったけど、そういうのは一緒に過ごした私の責任な気もするし。 躊躇うつもりはないし、その時はその時で」

 入寮の夜以来、先輩の語り口はいつでも感情に起伏がない。 椅子に腰かけて見下ろす先輩に対し、私は自然と正座になる。

「せいぜい私の言うことを聞いて、後輩らしく振舞いなさい。 それが貴方に出来る全てだから」

「……ハイ。 ありがとうございます」

 声音があんまり冷たすぎて、許可された2つの単語を並べるだけで精一杯だ。


 ……。


 入寮した夜、泣きじゃくる私に向き合ってくれた時以来、無口で、必要な時以外は私に関わろうとせず、黙々と本を読んでいた先輩。 けれどこの日の先輩は、今までのB29番先輩とは全く違っていた。 

 まず『朝食前の運動』と称して、先輩は部屋の中でウォーキングをするという。
 『仰向けに寝そべって』『お腹に力を入れて』『もっと力まないと、苦しむのは自分だって理解しなさい』『もっと。 もっともっと腹筋を固く』
 
 物静かで、それでいて凛々しい先輩のイメージとは真逆な、騒々しくて威圧的な先輩。 私は怖くて怖くて、碌に返事も出来ずに言う通りに横たわった。 そんな私の震えるお腹に、先輩は逡巡なく両足をのせて体重をかける。 息を止めて力む私の上で、それから5分ほど、先輩は足踏みを繰り返した。 一足一足が容赦なくお腹にめり込んで、そこには思い遣りにしろ遠慮にしろ、これっぽっちも感じなかった。

 運動を終えて私から降りると、

『部屋の中でバタバタしたら、隣や下の部屋にうるさくして迷惑がかかる。 となると、絨毯やクッションが必要になる。 つまり、さっきの貴方は単に踏まれただけじゃなくて、防音装置としてちゃんと役に立っている。 間違ってもイジめられたなんて思わないで。 貴方がお腹を踏まれたのは、踏まれること自体が目的なんじゃなくて、騒音を防ぐっていう理由がある。 言い換えれば、貴方が踏まれて苦しかったとしても、それよりか騒ぎを抑える方が大切だってこと。 ここら辺のニュアンスは大事になる。 どんな些細な理由にしても、正当な理由があるんだったら、それって考え方1つの問題だからね。 自分で理由に気づけさえすれば、受け入れるのはすごく簡単だってこと。 わかった?』

 息継ぎなしに、早口で先輩がまくしたてる。 私は『ハイ』と返事をしたが、正直、何が何やらさっぱりだ。 私に分かったことは、人のお腹は案外衝撃に強いってこと。



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