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【スポーツ 官能小説】

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〜 土曜日・宣告 〜-2

「確かに入寮は認めました。 ゆえにみなさんは寮生です。 そこからもう1歩踏み込んで、同室するに相応しい寮生と認められて初めて、これから寮で暮らすことができます。 自分と相部屋になる後輩が、例えば不作法だったり、手癖が悪かったり、あまつさえ先輩の命令をきけないようでは、同室を拒む気持ちが芽生えて当然ですわ。 初日は後輩の可愛さから、つい甘く判断してしまうのが人情です。 1週間過ごして、もしも後輩と同室したくないって、そんな風に先輩の気持ちが変わったとしても、新入生たるみなさんは受け入れなければいけません。 おわかりですね」

 私に座っているB29番先輩を、思わず下から見上げてしまう。 筋肉が張りつめたせいで震える私のお腹に対し、微動だにしない先輩のスカート。 B29番先輩が、私と同室したくない? 確かにこっそり布団で泣いたし、気の利いた返事も出来ずにいたかもしれないし、理想の後輩じゃないと思う。 それでも一生懸命お風呂でタオル役を勤めたし、綺麗にしたつもりだし、出来ることは必死に頑張ったと胸を張って言える。 愛想笑いの1つも返してはくれなかったけど、私は先輩の肌にゆっくり赤味がさした様子を、感慨を込めて思い出せる。

 自信をもっていえる。 私は、私のもてる精一杯で、私の先輩に奉仕した。 

「寮の規則には、先輩への絶対服従が含まれます。 これは『どんな命令にも必ず従う』ことを意味していて、必然的に『寮から出ていけ』であっても有効です。 みなさんが無断で学園寮をあとにすれば、怠学(なまけがく)で学園にもいられなくなりますが、それはわたくし達とは無関係ですから、みなさんでどうにかするべき事柄に属しますわ」

 それなのに……え、え、え??
 今更寮から出ていけなんて、そんなことが有りうるの?

「今後の同室を許可するかどうか。 最終決定は明日、日曜日になります。 それまで、新入生のみなさんは、休日を利用して先輩について回りましょう。 せいぜい従順に、気持ちの良い後輩ぶりをアピールして、先輩の好意をしっかり掴むよう努めましょうね。 でないと……ふふふ、すごいことになっちゃいますね。 そうならないことを祈ります。 わたくしも、せっかくご縁があって知り合えたみなさんですから、もっともっと仲良くなりたいと思ってるんですよ。 すごいことになったら……うふ、それはそれで愉しいんですけどね」

 面白そうに、声を殺して笑う気配。
 面白い? どこが? どこに笑うポイントがあるの?
 すごいことって……他人事だと思って……腹が立つというよりかは涙が溢れそうになる。 惨めで情けなくて悔しくて……何よりも自分がどうにかなるなんて、考えるだけで怖すぎる。 例えばB29番先輩から拒絶され、寮から追い出されたとして、一体私はどうなるっていうんだろう??

 ――ダメだ。 全く考えられない。 考えること自体を、頭じゃない、心がキッパリ拒絶する。 きっと私は痴呆のように、ポカンとした表情をしているんだろう。 悪い予想を立てて取り組めるほど、心に余裕は残っていない。 『考えない』ことだ。 そうする以外どうしようもない。

「先輩になったみなさんは、これまでの一週間を踏まえ、よく考えて結論を出してください。 日曜日は私達A級生も学園を散策します。 新しい後輩をどうするかの報告は、私達の誰かか、もしくは寮監に直接おこなってください」

 先輩たちが一斉に頷く。 

「というわけで、今から明日まで限定規則として、新入生の発言は『ハイ』と『ありがとうございます』のみとします。 それ以外の言葉を発したことが分かった場合、寮規定不服従で退寮を命じますから、覚悟は宜しくて? 代表して……そうね、クラス委員長に答えてもらいましょう。 22番さん」

「ハイ!」

 隣のテーブルから間髪入れず大きな声がした。 聞きなれた、キレのある返事。

「心の準備はできましたね?」

「ハイ! ありがとうございます!」

「そういうことですね。 では、各自お部屋にお戻りになって、ごゆっくりどうぞ。 明後日には始業式があります。 わたくし達にとっても、大切な新学期の始まりですわ。 最後の日曜日が充実したものになることを祈念して、御馳走様の挨拶とさせていただきます。 それではみなさん、手を合わせてください……御馳走様でした」

「「御馳走様でした」」

「ご……むぐっ」

 一瞬、つられて『ごちそうさま』と言いそうになり、慌てて口を噤む。 私達新入生は『ハイ』と『ありがとうございました』以外使用不可と、ついさっき告げられていたというのに。

 お腹から腰をもちあげたB29番先輩。 ブリッジを作りながら視線で限界を訴える私に、クイと顎で立つように促してくれた。 一度尻もちをついたけれど、サイホンのホースを咥えたまま、どうにか倒れずに背筋を伸ばす。 何度も勢いよくホースを吸ったおかげで、ホースから食事を零す粗相はせずに済んだ。 

 それから2人して食器を片付け、先輩に続いて部屋へ戻る。 
 
 『ハイ』と『ありがとうございます』だけの時間。 それぞれの先輩とゆっくり過ごす時間は、こうして試験の場に変化する。 針の筵(むしろ)を地でいくような、全身に氷水をかけられたような、寒々とした時間の始まりだった。


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