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セクハラ研修会
【OL/お姉さん 官能小説】

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第二話-3

「待ってください!」

しかし、その沈黙を切り裂いて、一人の女性が声をあげる。
ショートカットにメガネ姿の、先ほど如月と口論していた女。
彼女が手を挙げて、何か言いたげに前へ一歩進み出た。
メガネの奥の目には、明確な不満の色が湛えられている。

「はい?何か?」

「私は、自分で言うのも何ですが、それなりの学歴は積んできたと思っています。
それでも、御社に一般社員として採用されるだけの資格はないと仰るんですか?」

「貴女、名前は?」

「藤堂薫です。」

メガネ女改め藤堂の訴えに、黙って手元の資料を再び捲り始める女。
その間、如月は藤堂の方を横目で見ながら
彼女の学歴自慢に対して面白く無さそうな表情を浮かべた。
先ほど自分の学歴を否定された事と合わせて、余計に不快感が湧き上がっている。

「なるほど、京橋大学、法学部卒。
確かに、学歴は文句ないわ。現役合格でないのが玉に傷だけど
これぐらいなら充分許容範囲ね。」

文句ない、と賛辞の言葉を受けながらも
一浪しての合格である事を暗に指摘されると、藤堂は下唇を噛んだ。
彼女もまた高いプライドの持ち主で、それはコンプレックスの一つなのだ。

「でも、面接官は貴女の人間性、特に協調性に問題あり、と判断したようね。
プライドが高く、唯我独尊的な考え方のきらいあり、他者を見下しがちで
コミュニケーション能力に欠ける。スタンドプレーに走る可能性が濃厚。

ダメね、これじゃあ。組織の一員としては失格。
チームの和を乱して崩壊させるタイプだわ。弊社の社員には必要ありません。」

「そ、そんな!」

けんもほろろな物言いで完全否定され、藤堂は狼狽した。
彼女もまた、如月と同じく、自尊心をここまでハッキリと蹂躙されたのは
初めての経験だった。ショックで、立ちくらみのような感覚に襲われる。
そんな彼女を、如月はほくそ笑みつつ眺めた。

「企業が新入社員へ求めているのは、とても優秀な自立回路ではなく
そこそこ優秀な歯車なのよ。もちろん、一番欲しいのはとても優秀な歯車だけど。

意思決定の頭脳は上が担当しているのだから、下にもう一つ違う脳みそがあっても
邪魔なだけでしょう?多分貴女、どこを受けても同じような判断で落とされると思うわ。
一番扱い辛い人種だもの。」

「…………。」

藤堂は歯噛みしつつ、黙ってその言葉を聞いていた。
自分が絶対の自信を持って築き上げてきたこれまでの経歴が
ズタズタに切り裂かれていく。握り拳に力を込めて、恥辱に身体を震わせる。
しかし、続く言葉は彼女をさらに貶めるものだった。

「本当言うと、貴女はセクハラ枠としても採用される見込みはなかった。
ただ、弊社に一部マニアックな層がいてね。
貴女みたいに、プライドの高い女、それも何より、眼鏡をかけた女に興奮するらしいの。
そのお陰で、ギリギリ採用に至ったってわけ。」

「そ、それじゃあ、私は眼鏡をかけていたから内定が貰えたって言うんですか!?」

「そうよ。よかったわね、コンタクトでなくて。幸運に感謝しなさい。」

何より誇らしく思っていた自分の学歴は、ただの眼鏡に劣る存在だというのか。
藤堂にとって、この事実は他の何よりも屈辱的だった。
頭が真っ白になって、その場に崩れ落ちそうになる。

一方如月は、その言葉に笑いを堪えつつ
自分が味わった屈辱の溜飲を下げていた。


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