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セクハラ研修会
【OL/お姉さん 官能小説】

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第二話-2

「弊社は、皆さんを戦力としては一切必要としておりません。
皆さんは本来、選考で落とされる対象の人材なのです。」

さすがにざわめき始める一同。
困惑、驚愕、憤怒。表情に様々な色を浮かべつつ
各々が口々に不満の言葉を漏らす。

「聞いてない」「納得がいかない」「どういう事?」
喧騒に包まれる室内。

「しかし!弊社は社会還元、奉仕を大きな理念の一つに掲げています。
イタズラに人材をふるい落として、失業者、無業者の増加に繋げたくはありません。
そこで、能力は正社員レベルに及ばずとも、他に適正のありそうな者を選別し
適材適所に流用して採用する事にしました。そのひとつが、皆さんのセクハラ枠採用です。」

不満の声を抑えつける様に、一際声のボリュームをあげて流暢に捲し立てると
如月を再び直視し、びしっと指差すグラマー女。

「例えば、貴女。先ほど述べた通り、学歴は低く、人間性も低評価だけれと
その身体、ボディスタイルだけは中々のものだわ。
貴女のようなモデル体型の長身女が好き、という人間がウチにも結構いるのよ。
だから、そういった社員の性的欲求を満足させるために雇ったわけ。」

「つ、つまり、私の身体だけが目当てって事!?」

「そうよ。貴女には身体以外の価値は無いわ。」

人としての尊厳すら容赦なく蹂躙するような言葉。
幼少の頃から周囲に持て囃されて育ってきた如月にとって
このような否定をされた事など人生で初めての体験。
ハンマーで後頭部を殴られたような衝撃を受け
目の前の景色が歪んで見えた。

「ば、馬鹿にするのもいい加減にしてっ!!」

それでも懸命に声を張り上げる。
その目にはうっすらと涙が浮かんできていた。

「あら?決して馬鹿にはしていないわ。身体に価値があるだけ、結構な事じゃない。
いいこと、世の中には貴女以外に、身体すら評価されず
ここまで来る事のできなかった人間が少なからずいるのよ。
少なくとも、それらの人間よりは価値を認めてもらえたんだから
自分の境遇、才能に感謝するべきなのよ。」

「…………。」

言葉を紡ぎ続けられるうち、いつしか如月は黙り込んでしまう。
耳から入ってくる単語の一つ一つが脳内に侵食していき
刷り込む様に浸透して抵抗の言葉を奪っていく。

「他の皆さんも同様です。私は、偏差値の低い人間の成績を上げる事はできますが
容姿の悪い人間を魅力的な肢体にすることはできません。
セクハラ枠採用は決して恥ではないのです。男を性的に喜ばせるだけの
適正と素質がある、選ばれた人間ということなのですから。」

「で、でも、それじゃあまるで、風俗で働くのと変わらないじゃないですか!」

認めてもらえたとはいえ、このような形では納得できるはずも無く
不快感を露にしながら他の女性たちも詰め寄る。
しかし、グラマー女は呆れた様な表情で肩をすくめた。

「いいえ、違うわ。風俗嬢は、あくまで社会的にも風俗嬢だもの。
でも、貴方達は、セクハラ目的の採用でも、肩書きの上ではあくまで弊社の社員。

これから、社会生活を営んでいく上で、風俗嬢という肩書きなのと
ウチの社名背負った肩書きでは、後者の方が色々と有利に働くのは間違いないでしょう。
別に風俗嬢を卑下するつもりはないけれど、社会とはそういうものよ。」

「…………。」

その言葉に、詰め寄った者達も口を閉ざす。
確かに、自分たちがこの会社に就職内定した事を告げた途端
親類も友人も、周囲の人間皆が称賛や羨望の言葉と眼差しを送ってきた。
それだけ、勤務先の社名というものは、重みと大きさを持っている事を
自分達も痛感していたのだ。

「それだけじゃない。セクハラ枠だろうと、ウチに入社したからには
一般社員と同じ待遇よ。勤務内容以外はね。
その辺のいわゆるブラック企業と一緒にされちゃあ困るわ。

すなわち、年間休日125日、年次有給休暇20日、勤務時間はきっちり8H
残業手当等の手当て充実、福利厚生も完備。年二回の賞与。
……この労働条件で働けている風俗嬢が、世の中にどれ位いるのかしら?

ついでに、セクハラ枠の貴方達には、その分の手当てもつくの。
文字通り、『セクハラ手当て』がね。」

いつのまにか、その場の全員が黙して、沈黙が場を支配していた。

この世の中で数少ない、確実性と余裕のある労働環境。
面接では綺麗事や美辞麗句を並べ立てて尤もらしく理念を語ってはきたが
自分が必死になってこの会社を目指して就職活動をした最大の理由がそこにある事は
紛れもない事実なのだ。それを棄てられるかといえば、どうしても二の足を踏んでしまう。

「それでも不服なら、どうぞ、退職願を置いて帰ってもらって構わないわ。
ただし、改めて言うけど、貴女たちの能力と経歴は、一流企業が雇いたいと思うレベルじゃない。
おまけに新卒という立場すら失ってしまった人間を拾ってくれるところなんて限られてくるわよ。
付け加えると、入社して一ヶ月足らずで退職なんていう履歴、心象も悪いでしょうね。

世に訴えて、裁判でも起こす?まぁ、ウチは顧問弁護士が大勢いるし
マスコミの大スポンサー、政治家への多大な献金等、太いパイプもたくさん作ってあるから
かなり厳しい戦いになるでしょうけど。

それに、そこまでして勝ったとしても、貴女たちはまだ、その先に長い人生があるのよ。
トータルでプラスになるのかしら?企業へ訴訟を起こした人間のリストは、すぐ裏で出回るわ。
自分達を訴える可能性のある人間、雇おうと思う会社は稀よね。」

退路すら塞がれたような、容赦のない言葉の数々を理屈付けで並べ立てられ
いつのまにか室内はこの女に篭絡されたかのように
諦めのようなムードが広がり始めていた。


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