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セクハラ研修会
【OL/お姉さん 官能小説】

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第三話-7

「はい、クリア2号が出ました。大河内ののかさん。
皆さん?ご覧のように、やってみれば出来るものなのですよ。
さぁ、次は貴女達の番です!」

その言葉を皮切りに、場内の空気が少しずつ変化してきた。
他の女性達も覚悟を決めたのか、はたまた単にヤケクソになったのか
自分へセクハラ発言をしてくる男達へ、精一杯のイヤらしい表情と言葉を返し
なんとか興奮を煽ろうと様々な動作で試行錯誤する。

「うん、なかなかいいねっ!クリアさせてあげる!」

「こっちもサービスで90点出しちゃおう。」

そのたび、あちこちで合格を告げる男の声も上がりはじめる。

「はい、また一人クリア!」

「不合格者の残りはかなり減ってきましたよ〜。」

状況の変化が告げられる度、未クリア者たちは焦りを浮かべながら
必死で男達へ媚を売っていた。

「惜しいね、もう一押し欲しいな。85点。」

「あぁ、まだちょっとだけ羞恥心がジャマしてるぞ。80点。」

不合格とはいえ、大半がクリア目標ギリギリのところまで点を伸ばしてきている。
何時の間にやら、全員合格も時間の問題となりつつある印象だった。
ただ2人を除いて。

「あのさぁ〜、やる気あるのかねぇ、如月クン。
そんなコーマンチキな態度で、クリアできると思ってるの?
40点だよ、そんなんじゃあ。」

「藤堂クン、学業の学習能力は高くても
こっちの学習能力はサッパリだね、ガッカリだよ。45点。まだ半分だ。」

如月玲奈、藤堂薫。
彼女達は未だにプライドと信念が邪魔しているのか
相手の男に対して、あくまで対等の態度で接してしまう。

如月は露骨に、藤堂も言葉遣いはへりくだっていても、慇懃無礼さが透けて見え
内心は「こんな男に」と見下しているのがありありと解る有様だ。

『こ、こんなヤツに、媚を売って、みっともなく持ち上げろっていうの……?
この私が……。皆から褒めそやされて、羨望の眼差しで見られて……
男だって選り好みしてレベルの高いヤツしか相手してこなかった私が……
こんな、下品でキモいハゲオヤジに……!』

『み、認めるものですか……!こんな、不潔な男に、理不尽な扱い……
それも、男を喜ばせるためだけの存在であるかのような扱いをされて……
そういう、偏った醜悪な考えを否定するために、周りの皆が遊んでいる中
私は死に物狂いで勉強してきたのよ……!』

口には出さないが、二人は心中で必死に声を振り絞って叫んでいた。

「あらあら、皆さん、残念なお知らせがあります。
今期のセクハラ枠新入社員には、二人落ちこぼれがいるようですわ。
これでは、何時までたっても研修は終わりそうにありませんわね。」

そんな二人を吊るし上げる無慈悲な言葉。
気が付けば、この二人を残し、全員がクリア目標の90点獲得を果たしていた。
女性たちは如月と藤堂を遠巻きに見ながら、様々な感情の篭もった視線を注いでいる。

「いるんだよなぁ、ああいう足手まといが。」
「そうそう、それも自分をイイ女、できる女だと勘違いしてるヤツに限って。」

男達は、冷徹な罵倒を口々に浴びせている。
ヒソヒソ話を装ってはいるが、あらかたクリアして静かになった場内では丸聞こえ。
セクハラでの侮辱とはまた異なる、極めて直接的な侮辱であった。

そして何より、二人の自尊心に深く突き刺さったのは、遠峯とグラマー女のやりとり。

「ふみゃあ〜。みゆちんが、男の人に喜んでもらうやり方
優しくおしえてあげよっか〜?」

「そうねぇ、遠峯さん。悪いけれど、あの出来の悪い、似たもの同士の二人に
指導してあげてくれる?本当手がかかる事。」

『は、はぁ……!?あの女に同情されてるワケ!?
わ、私があのぽんこつに教えを請うなんて……
このハゲオヤジに媚びるより一番許せない屈辱だわ!』

『に、似たもの同士って……私と、彼女が…?
そ、それだけは、それだけは思われたくないっ。
彼女みたいなタイプと、私は違うっ……!そ、それを証明しないと……!』

何かがぷちっと切れたのか、二人の目つきが変わる。

『そうよ、私は元々女優志望……感情を殺して、架空の私になりきればいいんだわ。
バカな男を喜ばせながら、手玉にとって転がしている女。そういう役だと思い込めば……。
元々プロ女優になれるだけの力量はあるに決まってるんだから……!』

『これは、テストと変わらないのよ……。
記憶と応用を繰り返すだけの単純な作業。男なんて単純な公式と変わらないわ。
喜んでもらうんじゃない。喜ばせてあげてるんだ。
彼らは私に延々と処理されていく記号の羅列みたいなもの……!』

互いが心中で己の妥協点、解決案を探り当て、決意を固めた。
共通しているのは、あくまで自分が主体であるのだ、という1点。

「お、おじ様、おはようございますっ。
おじ様こそ、今日もステキでたくましい身体つきですわ。
昨夜はそのご立派なモノで、奥様を喜ばせてさしあげたのでは?
奥様が羨ましいですぅ〜。」

「お、おはようございますっ。
私、学校のお勉強ばかりしてきたせいで、男性に尽くすための
女性としてのお勉強を疎かにしてきた、世間知らずな娘なんです。
今日も一日、たっぷりシゴいて、おじ様のような男性に喜んで頂ける
立派なレディーに、躾けて下さい……ね?」

背後の男にしなだれかかるように背を預けて
顔だけ相手の方を振り向き、媚び媚びの台詞と同時に
眉をへの字にして、潤んだ目と半開きの口という
切なそうな表情を送る。

偶然にも、その動作は如月、藤堂ともに全く同じものであった。
如月は目に涙を浮かべ、藤堂はメガネの奥の目で強く訴える。

……その瞬間、同時に二人の男は合格を告げていた。


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