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初恋はインパクトとともに
【青春 恋愛小説】

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初恋はインパクトとともに ♯5/魔法の言葉-6

数分後…私たちのテーブルにはチーズバーガーの包みの山が築かれていた。
二人で食べては注文、注文しては食べてを繰り返すこと数往復…この際どちらがどれだけ食べたかなんてどうでも良いだろ?ダメだって?まあご想像にお任せしよう。
「ふぅ…ごちそうさま。」
「はぁ〜食ったぁ〜食ったねぇ〜大部分は君が。」
「むっ…それは」
「これは俺の分で、こちらがアキラの〜」
「やめぃ!全く私を何だと思っている。私はこれでも…」
そこで、はと自分の考えの矛盾に気付いた。私は今、女の子扱いされたがっている?先ほど走っていたときも女の子扱いされたがっていた?アカネにもっとしっかりしてほしいと思っていた…それが意図する感情は…
これまで私は男に生まれれば良かったなぁとか考えていた。まぁそんなに深く思考するほどではないが、武術をするにも何をするにも男の方が自由で奔放に振る舞えるんではないかと思っていた。いや、自分は女だから父や兄より弱いのだと決めつけたかっただけなのかもしれないけど。だけど、彼と出会ってからはそんな事を考えることは少なくなった…というか今の今まで、かつて自分がそんな考えに悩んでいたことすら忘れていたわけではないが、頭の片隅に追いやられてはいた…
(そうか…この安らぐような気持ちこそが…自分は自分で良いのだと思える気持ちこそが…彼にもっともっと…と思える気持ちこそが人を○○になるって事なのか。)
そんな考えを巡らせば巡らすほど、彼と共有するこの時間が何か濃密で甘美なものに思えた。
…何か彼の目が見れなかった。
アカネなんて大したもんじゃない!そうだジャガイモだ、ジャガイモと変わらない。とか考えても彼の目を直視できないんだ。何だか凄く空気が重く息苦しい感覚。心地よいのに心地わるい。気持ちよいのに気持ちわるい。そんな矛盾した感情が隣り合わせ…
…こんな気持ちは初めてだ。こんな感覚も初めてだった…
いや、初めてじゃない。随分前からそうだったんだ。ただ自分が気付かなかっただけなんだ。なんて鈍感なんだ私は。だって仕方がなかろう?恋なんてしたことないんだから。と、いうかこれが“恋”というものなのか?考えがやはりまとまらない…字は似ているがとても“変”な気分なんだ…意味は全く違うけど。

「どしたの?何か顔色悪くなってないか?ん?」
彼が私の顔を覗き込んでくる…
人の思惑などなんのその…アカネの態度は変わらない…(まぁ私が心のなかで勝手にうやむやと曖昧な考えを巡らせているだけだから当然なのだが)ちょっと腹立たしい。彼のことで私はこんなに悩んだりしているというのに、不公平じゃないか?なあ?
とりあえじ彼の両頬をパチンと叩く。
「なんでめないさ」
「ててっ、こういうことは自分自身にやってくんないかなぁ〜」
あれ?いつの間にかあっさりと手は離れていた…まったく気付かなかった。
手に残るのは彼の温もりと…汗臭さ。ちっともロマンチックとかじゃないが、何だか愛おしくもあった。
今日は手を洗わないかもしれない。
まあ多分洗うだろうけどさ。
彼はいつの間にやら離れていた手になど気付いたようすもなく、先ほど私がパチンとした両頬をさすっていた…私はそんな彼の様子をボーッと眺めていた。認めよう、なんとも暖かい空間だ。
何ものにもかえられない時間だ。
そんな時を彼と共有している。
そう、今はそれで良い。
それだけで良い。
私たちはそれで良い。
行き着く先はどこなのか、何なのかなんて分からないが私たちは私たちらしくあれば良い。周りからどう見られようとも私たちは私たちらしく歩みよっていけると思えた…思っていた…思っていたさ…だがそうそう上手くいくもんでもないんだよ、これが。
何が上手くて何が下手なのかは知らないけどさ。


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