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耳にキス、キス、キス。
【女性向け 官能小説】

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「沙保さんは嫌じゃないの?」
「え?」
「嫉妬とか。僕が逆の立場だったら、たぶんすごく嫌な気持ちになって嫉妬する。沙保さんを自分の部屋に閉じ込めてスマートフォンを取り上げて監視する」
「嫉妬。わたしだってするよ。でもヒロキくんは悪くないじゃない?」

 それに。
 ヒロキくんはやっぱり誰が見たってかっこいい男の子だもん。
 写真を撮った女の子の気持ちもわかる。
 ヒロキくんはほんとうに魅力的な笑顔をしているから。

「僕が悪いとか悪くないとかじゃなくて。自分の恋人が自分の知らないところで他の異性とやり取りしてるんだよ? 僕だったらたえられない」
「そりゃあ、まぁ……気にはなるけど」

 わたしが曖昧に答えると、ヒロキくんは不満そうに唇を尖らせた。
 そんな仕草も可愛らしくて思わず微笑みそうになる。
 わたしは慌てて口元をカップで隠した。

 ヒロキくんはね。わたしは心の中で思った。ヒロキくんはね、わたしの嫉妬なんかちっぽけなものだとしか思えないくらい、みんなが憧れちゃうような男の子なんだよ。
 
 ヒロキくんとの交際が始まって、彼のことを知れば知るほどわたしはそう思うようになっていた。
 彼がみんなから愛される理由を、わたしは知っている。

「沙保さんは僕のことほんとに好きなのー?」
「もちろん。好きよ」
「どれくらい? どれくらい僕のこと、好き?」

 わたしの手からカップを取り去って、耳たぶを左手で引っ張りながらヒロキくんがわたしの目を見つめて聞いた。
 わたしは、どれくらいって……と、もごもご言いながらヒロキくんの視線を全身で受け止めた。

「たぶん、僕のほうが沙保さんのことを好きなんだと思う。僕は、沙保さんが僕を好きだって思っていることの倍くらい沙保さんが好き。沙保さんの話に出てくる会社のひとや、僕が無理やり聞き出している沙保さんと元カレとの過去にも嫉妬してしまう。沙保さんがあまり嫉妬しないことにすら、僕は我慢がいかない。ねえ、沙保さん。もっともっと僕を愛して。もっと僕を必要として」

 真剣な目。
 どうしてこのひとはこんなにも素直に、そしてまっすぐにわたしの深いところに入ってきてしまうのだろう。

「沙保さん、好きだよ。好きすぎて、なんかもう沙保さんの血とか飲みたいって思っちゃうくらい。変態かも、僕。沙保さんに首輪をつけて飼いたいとも思うもん。沙保さんが嫉妬してくれるかなと思って女子高生とやり取りしたのに、沙保さんさっぱりだし。僕ばっかり沙保さんのことを好きみたい。もっと僕を求めてよ」

 ヒロキくんの右手の親指がわたしの唇に触れる。
 泣きそうな顔をしている、と思った。
 雨の中、主人の帰りを待つ子犬みたいな顔。

「ヒロキくん……わたしだって、わたしだってヒロキくんのことが大好き。でも、ヒロキくんは人気者だから」
「馬鹿。 沙保さんの馬鹿」

 ヒロキくんが噛みつくようにわたしにキスをした。
 舌が絡みつく。
 長く、息苦しささえ感じるようなキスだった。

 まるで、カラカラに渇いたのどを潤すようにヒロキくんは激しいキスを繰り返した。
 息があがる。
 室内にふたりの息遣いが響いた。

 ヒロキくんがわたしの耳たぶをくちに含んだ。
 荒々しくわたしの服を乱していく。

「あぁ沙保さんのにおい……」

 ヒロキくんは部屋の電気を暗くすることを嫌う。
 わたしの表情を見られなくなるのが嫌だと言っていた。沙保さんのすべてが見たいから、とも。
 わたしはどうしても慣れなくて、恥ずかしさから両手を顔の前に持ってきてしまう。
 ヒロキくんがその手を掴んでキスをする。

「キスマークが消える前に何度もつけておきたい」

 そう言っていた通り、わたしの身体からヒロキくんのキスマークが消えることはなかった。
 ヒロキくんが音をたてていろんなところにキスマークをつけていく。
 そのたびに腰のあたりにくすぐったさを感じた。


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