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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-73

第7話 ふたみの恋心

夏休みという、学生にとっての桃源郷は終わりを迎えている。
物憂い新学期の始まり。しかし、それは、はやくも第一週が過ぎ去っていた。
「え?」
 そんな週末の初日の昼下がり。近場の展望台でひとみと過ごしていた勇太郎は、不意に彼女から出た言葉に耳を疑った。
「ご、ごめん。なんだって?」
「だから」
 合点のいっていない勇太郎に呆れながら、それでもひとみは、繰り返す。
「ふたみ、好きな人がいるみたい」
 勇太郎は、なぜかぎくりとしてしまった。それを見透かしたように、ひとみは言う。
「……勇太郎じゃないよ」
「そ、そうだよな、はは……」
 ふたみにとって、あくまで自分は兄のような存在なのだ。とはいえ、自分に少しは恋愛感情みたいなものを、ふたみが抱いていることを期待してしまうのは男としての性である。ひとみという、恋人がいるにも関わらずに、だ。
「む〜」
 気づけば、ひとみが頬を膨らませて拗ねていた。どうやら、ふたみに好きな人がいると聞いたことで、少なからず動揺したのが彼女は面白くないらしい。
「浮気もの」
「なんで!?」
「いま、すっごく顔に出てた。悔しそう」
「む」
 思わず、顔に手をやる。それが、ひとみの問いに対する肯定を表すとも知らずに。
「う〜」
 ますます不機嫌になるひとみ。視線が、とても痛い。弁解の言葉が胸に渦巻くが、どれを口にしたとしてもひとみには逆効果とみる。
「……飽きちゃったかな?」
 そんなひとみの不機嫌な顔が、次は不安顔に変わった。繋いでいる手に、力がこもってくる。
(あー)
 ひとみの心情が、手のひらから伝わってくる。
 勇太郎は、そんなひとみに少しだけ不満を感じた。
「バカモノ」
 そう言って、軽く、尖っているひとみの唇に触れるだけのキスをする。人目が若干気になりはしたが、まあ、構わない。
 不意を突かれたひとみは、そんな勇太郎の行動に、固まった。
「勇太郎……」
 そして、ようやくその顔に笑みが戻った。


 ………話が、えらく脱線してしまった。さりげなく、戻そう。


「ふたみ、好きな人がいるみたい」
 ひとみの言葉に、勇太郎は心当たりを探ってみる。しかし、普段のふたみからはそんな素振りは感じられない。
 と、いっても、新学期が始まって以降、朝食と登校時の他に、ふたみとの接点はほとんどなかったのだから、その限られた時間の中で、ふたみが慕う影の存在を嗅ぎ取ることなどは不可能だった。
「聞いたの?」
「んー。そういうわけじゃないけど」
「じゃ、なんでそう思ったの?」
「私と勇太郎が、つきあうようになったキッカケを聞かれたから」
 ……それは、第1話を参照していただこう。
「なんか、そのときのふたみ、すごい真剣だったの」
 それで、ひとみは、ふたみに好きな人がいるのかもしれないと感じ取ったというのだ。
「それ、いつの話?」
「火曜日……ううん、水曜日ぐらいかな」
「授業が、始まった辺りだね」
 不意に、ひとみが手を打った。何かを思い出したらしい。


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