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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 個室(22番) 〜-2

 ずっと裸で過ごして、今だって登校服とは名ばかりの紐しか身につけていないのだから、恥ずかしがる必然はない。 それでも、足を開いて同性に裸を晒している自分を意識してしまうと、先輩のパッチリした瞳に視線は合わせづらい。
 
「ふぅーん」

 横になってたゆんだ乳房を、先輩が爪先でつつく。 つつくだけでなく、ボトムを寄せたり、逆にへしゃげさせたり、要するに足で弄びながら先輩が尋ねた。

「ところで、お名前はなんていうんですか」

「……それは、つまり『源氏名』でしょうか?」
 
「決まってます。 今更22番、とかいわれてもしょうがないです」

 『源氏名』――それは、私たちが学園入学時に捨てた、いや捨てさせられた名前だ。 
既に戸籍も学園に預け、今の私は名前を自発的に消去した段階にある。 無事に学園を卒業できれば、改めて学園から名前が貰え、それが本当の名前になる。 だから、今の私たちは大切な名前すら奪われた集団でしかない。 家畜のように、番号でしか呼んでもらえない、ミジメな集団。
 私の名前は『22番』では決してない。 幼年学校で優秀な成績を残したり、地域の行事で活躍したりしていた頃の、親がいなくて施設暮らしでも同年代の女の子たちと比べて遜色なく楽しかった頃の名前。 一度も会ったことはないけれど、誰かがくれた大好きな名前があった。 

「……『朝海』です。 朝の海、とかいて『あさみ』といいます」

「あたしは『ひなこ』です。 2人っきりの時は『ひな先輩』って呼んでいいです。 わかってると思いますけど、源氏名を蒸し返すのって規則違反なので、他の人には内緒ですよ」

「あ……はい」

「ひなが未でも自分の名前を覚えてること、もしあさみちゃんが誰かに喋ったら殺しちゃうかもです。 もっかいいいますけど、絶対に――」

 一呼吸おいて。 

「――内緒ですよ?」

 乳房に踵がめり込む。 

「いっ!?」
 
 痛みで慌てて顔をあげると、ニコニコした先輩がいた。 

「やだ、冗談ですよ〜♪」

「あの……だ、誰にもいいません、約束します」

「是非そうして欲しいです。 ちなみに身長と体重はいくつですか」

「が、合宿ではかったときは、155センチ、49キロでした。 うっ!」

 まただ。 乳房に体重がかかる。 今度は顔をあげていたので、足を伸ばす様子から乳房が踏まれると事前に分かってはいたものの、慣れない疼痛に呻いてしまう。

「このふにゃふにゃしたおっぱいは? サイズでいうと?」

「さ、サイズは知りません。 本当です、カップはCでした」

「あさみちゃんはどう思ってるんです? ひなは、綺麗なおっぱいだなぁって思いますけど」

「え、と、それは……うう」

 グリグリ。

 胸を踏みつける圧が大きくなる。 答えようとしても、乳房越しに肋骨がへしゃげ、思うように声が出せない。 そもそもどう答えればいいのだろう? どう答えても不正解な気が、つまり事態が悪化する気がする。 

「別に難しいこときいてないですよ」

 それでも答えろというなら、正直に素早く答えるしかない。

「わ、わかりません。 綺麗かどうかなんて、考えたこと、な、ないですっ。 うっ!?」

 いつのまにか靴下を脱いだ指先が、器用に私の乳首をギュっと摘む。

「さっさと答えろってんです」

「き、綺麗じゃないです!」

「ふぅん。 で、形は?」

「か、形は……不恰好で、だらしないと思います」

「大きさは?」

「大きさ……その……」

 眼前で極短なブラウスからは、私を見下ろす先輩の、少年のような胸が覗いている。 

「ち、中途半端で、みっともないです。 うぐっ」

 足の指で摘まんだ乳首が、力いっぱい捻じられた。

「ふぅーーん。 そういう模範解答しちゃうコなんですね、あさみちゃんは」

「も、申し訳ありません」

「別に謝らなくていいです。 頭がいいコが同室だと、何かと楽チンですし。 ただ――」

「っ、っ、っ!」

 グイッ、グイッ、グイッ。

 爪先が、指で乳首を摘まんだまま捻じ込まれる。 柔い乳房などすぐ底をつき、胸板が、肋骨がおさえられて、断続的に吐息が漏れた。

「はっきりさせておきます。 あさみちゃんは、寮の中ではひなの『所有物』です。 新入生はみんな、寮では『物』として過ごす決まりです。 背が高くても、おっぱいが大きくても、肌が少しばかり綺麗でも、ぜんぜん関係ないんです」

 グリグリグリ。

「大事なのは『物』の役目をこなせるかどうかです。 『金製の使いにくい燭台より、銅製の明るい燭台に価値がある』、『おっぱいが大きくて生意気なモノより、小さくても躾されたモノの方が価値がある』――そういうことです。 わかります?」

 グリグリグリ。

「……は、はいっ」

 なんとか声を振り絞る。

「ひなは優しいですから、息するなとか、まばたきするなとか、そういう無茶はいいません。 『足ふきマットになれ』とか『まくらになれ』とか『鉛筆立てになれ』とか、せいぜいその程度です。 だから、ひなに毎回言わせないでくださいね。 順番に、いつでもひなの役にたつ『お道具』になること以外に、あさみちゃんの価値はありません。 それがここ、史性寮なんです」

 『所有物』『物』『お道具』……私の生きる意味が、無機物に限定される世界なのだ。 


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