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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 歓迎 〜-2

 ワイシャツの上から襟がない紺のブレザーを羽織り、胸には『A』のワッペンが光っている。 スカートも上下揃いの紺色で、膝下まで届く丈は、ごく普通のスカートだ。 肌色ばかりに囲まれているせいで、私たちのイメージするごく普通な制服が、ありえないくらい新鮮に映った。 

 落ち着いた身のこなしといい、大人びた表情といい、整った服装といい、彼女たちは雰囲気も含め全てが私達と違っている。 制服を着ているということは、生徒なのだろうが、おそらく寮歴が長く、それなりの立場の生徒に違いない。 全員で5名、『A』のワッペンをつけた面々は、私たちが座る3つの列を一望できる正面にある黒檀製のテーブルに纏まって座る。 気がつけばBグループ全体にシチューらしき食事をもった食器が渡り、配膳してくれた面々も席についていた。 

 チリン。

 『A』のワッペンつけて真ん中に座る女性が、グラスをスプーンで弾く。 私たちの前でBグループの先輩方が一斉に顔をあげた。

「新入生のみなさん、ようこそ史性寮へ。 わたくしが今年度の寮長を勤めさせていただくことになった『A4番』です。 何分至らない点も多かろうと思いますが、寮生活の一日の長に免じ、斟酌のほどをお願いする次第です」

 深々とお辞儀をする姿は、丁寧で品があると同時に、見るものの背筋を寒からしめる何かがある。 ずっと股間を広げ、内臓を晒し続け、頬を張られ、それでも感謝しなくてはいけない私たちの生活を続けていれば彼女のような上品な仕草が身に付くのだろうか? いや、そんなわけがない。 それとも、私たちが受けた辱めを昇華する強さを、しなやかな外見の底に秘めているとでもいうんだろうか。

「固い挨拶は抜きにして、みなさんどうぞお腹を満たしてください。 慣れない学園の講義を受けたわけですから、充実感もさることながら、さぞお疲れと推察します。 それでは乾杯の音頭を、副寮長でテーブルマスターのB1番さんにお願いしましょう。 B1番さん、ここからの進行や説明を含め、お願いしても構いませんか?」

「ハッ。 僭越ながら音頭を取らせていただきます。 あとはお任せください」

「いいお返事ね。 それじゃ遠慮なく甘えさせてもらいましょうか」 

 テーブルの一番前に座っている長身の少女に会釈し、寮長を名乗る女性は腰を下ろした。 代わってグラスを掲げた少女が椅子からたつ。 副寮長というと、確か私たちを先導してくれたB29番も、教官から『副寮長』と呼ばれていた。 ということは、副寮長はB29番とB1番の2人いるのだろうか――などとぼんやり考えていた私は、B1番の言葉で我に返った。

「早速だが食事について説明する。 一度で理解しろ、一文字一句聞き逃すな! 返事!」

「「はい!」」

「話は耳じゃない、目で聞くんだよっ。 まばたきも禁止だ、分かってんのか!?」

「「ハイ!」」

 寮長とうって変わって、語気を惜しまない物言いだった。 声自体の大きさも去ることながら、言葉の端々にあからさまな殺気がある。 寮長の言葉からは新入生に対する謙譲を感じたが、そんなものは微塵もない。 返答する私たちも、明白に気圧されれば自然と返事が揃う。

「ナイフもフォークもスプーンも箸も、新入生には分不相応だ。 食器に直食い以外、一切を禁止する。 出された食事は必ず最後まで平らげろ。 自分達は残飯を頂く身分であって、残飯をつくる身分の対極にいることを肝に銘じておけ!」
「「ハイ!」」

 早口で言い放つB1番。 既に理不尽な学園の流れに身を弄ばれ、もはや何があっても驚きはしないが、予想通り食事に安らぎを求めてはいけないらしい。 学園の昼食はチューブを通じて『鼻の穴』で啜らされた。 今度は直食い……一応口で食べられるのだから、まだマシだ。 こんな発想が自然に浮かぶのは、もう嗤うしかないだろうけれど、本心からそう思った。



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