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〈生贄の肉・二つ〉
【鬼畜 官能小説】

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〈伸びた触手〉-4

「心を穏やかにして、自分と向き合ってみてください。苦しみを感じるのなら、何度でも此処にいらして構いませんから」


人間とは性善なものであり、過ちを悔い、過去の自分の犯した罪を償い、改めて行けると信じていた奈々未は、いとも容易く謀(はかりごと)に嵌まってしまっていた。

狂った運命の歯車を奈々未は自ら回し、その勢いを増してしまった事に気付かない。
男の瞳に宿る異常者の情念すら、恥ずべき嫌悪感と一緒くたにして、捨て去ろうとしていた。


『ありがとうございます、シスター。でも、こうして祈ってると、俺がどれだけ馬鹿だったか、どれだけ人を傷付けてきたか、胸が苦しくなります……』


止め(とどめ)とばかりに沈痛な面持ちを作り、男は奈々未に頭を下げた。


「罪の重さを知ったのなら、貴方はきっと救われますよ?そして償う気持ちを素直に行動に移せば良いのです。私はいつでも此処に居りますから」


男は改めて頭を下げると、静かに教会を出ようとした。
すると奈々未は男に寄り添い、教会の扉を開けて見送ってくれた。
そう、昨日、玲奈にしたように……。


(見習いが一端のシスター気取りでお見送りか?こりゃあイイぜえ……)


男はニヤケてしまいそうになる顔を堪えるのに必死だった。
頼んでもいないのに“下界”まで足を運んでくれる、その命取りとなる優しさが可笑しかったのだ。

薄暗い空間に慣れた瞳に朝日は眩しく、目を細めて辺りを見回す……狭い道の先には部下達の姿があり、奈々未と並んで立つ男を視認すると、さりげなく姿を木陰に隠して様子を伺っている……。


『今日、この教会に足を運んで良かったです。少しずつだけど、俺、真っ当な人間になれそうが気がします』

「私で良ければ何時でもお話をお聞きしますわ。では、お気をつけて」


思慮深い表情で頭を下げた後、男は奈々未に背を向けて歩き出した。
やがてバタンと扉が閉まる音が背中から聴こえると、男は禍々しい笑顔を見せて部下達の輪に駆け込んだ。


『す、凄いですね!シスターに会えたんですか?』

『バカヤロ。昔っから「虎穴に入らずんば虎児を得ず」って言うだろうが?なんでも最後にゃ度胸ってモンが、モノを言うんだよぉ』


シスターの捕獲は難攻不落とばかり思っていた部下達は、リーダー格の男が接触に成功し、しかも教会の外にまで連れ出したのを目の当たりにして、興奮を抑えきれないようだ。
目はギラギラと光り、顔は紅潮している。
まるで今すぐにでも襲い掛からんばかりだ。


『遠目に見てもイイ女って分かりましたよ!やべぇッ…もうチ〇ポがデカくなっちまった……』

『か、髪とか体臭とか、どんな匂いがしたんです?柑橘系の匂いですか?それとも苺とかピーチみたいな甘ったるい匂いですか?』

『お前ら、少しは落ち着けって。一旦アジトに戻って作戦会議すんぞ』


男は揚々と黒光りするセダンの助手席に乗り込み、あのビルに向かって走らせた。
ミニバンも1BOXカーも、その後を追う。

そして10分も後には、あの会議室に入り、顔を突きつけて狩りの段取りを煮詰めていった……。



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