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〈生贄の肉・二つ〉
【鬼畜 官能小説】

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〈伸びた触手〉-5



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同日の夕刻。

授業を終えた玲奈は、いつものように教会に向かった。

朝とは打って変わり、空は黒い雲に覆われている。
今にも泣き出しそうな天候のせいで、周囲は既に薄暗かった。


「…………」


教会の扉を開けて中に足を踏み入れた瞬間、遠くの空から雷鳴が聴こえてきた。
なんとなく不安な気持ちに駈られる玲奈の瞳に、奈々未と見知らぬ人影が映る。
その人影は、いつも玲奈が座る最前列の椅子にあり、寄り添うような形で奈々未は傍に立っていた。

こんな天気の時に祈りを捧げに来る人が、自分以外にも居るのだなと玲奈はぼんやりと思い、いつも通りに最前列の椅子に進み、その人影から少し離れた位置に腰を掛けた。


『本当にありがとうございました。シスターには感謝しても仕切れません』

「私は貴方の心が穏やかになれるよう、言葉を添えただけですわ」


隣から聞こえてくる野太い声に、玲奈も今朝の奈々未と同様に嫌悪感を抱いた。
しかし、異性に警戒心を抱いている玲奈には、この“近寄りたくない”という感情が常に胸の何処かに有ったので、それ程には強くは思わなかった。

それに、この男は悩みを抱え、祈りを捧げる為に教会に足を運んでいるのだ。

人間は等しく平等であり、そこに私情を挟み、差別的な感情を抱くのは間違いであり、シスターに成る者としては失格である。と、玲奈は自分を戒めた。


「あの…私もよくこの教会に来るんです……苦しい事や悲しい事や、あと感謝の気持ちを心の中で打ち明けると、とても……あの……じ、自分の……」


いつも自分を慰め、勇気付けてくれる奈々未を真似たが良いが、結局は“しどろもどろ”になって言葉は乱れた。


悩める者を救いたい。


見知らぬ男にも力となっている奈々未の姿を間近にして、シスターへの憧れをより強くした玲奈だったが、意を決して語り掛けた言葉は薄暗い空間に溶けていき、雷光によって一瞬で掻き消された。


『優しい言葉をありがとう。さて、雷が酷くなる前に帰った方が良いでしょうね』

「そうですね。さあ、玲奈さんも早くお帰りになって」

「あは……そ…そうみたい…」


男が立ち上がり扉に向かうと、奈々未は玲奈に付き添うように後から付いていった。
グニャリと曲がった男の唇に、まだ二人は気付かない……。




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