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〈生贄の肉・二つ〉
【鬼畜 官能小説】

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〈生贄の肉・二つ〉-1





肌を刺すような冷たい風は今は和らぎ、芽吹きの薫りを乗せた心地好い“そよぎ”が静かに吹いている。

青や黄色の組み込まれたステンドグラスが、夕闇に騒ぐカラスの鳴き声を透過させ、それが却って静寂さと“ほの暗い”空間を際立たせた。

誰の姿も無い、静かで厳かな空間に足を踏み入れた少女は、ズラリと並んでいる椅子の最前列に腰を掛けると、祭壇上に掲げられている非業の最後を遂げた神を象る像に向かって十字を切り、握り合わせた両手を胸に引き寄せて頭を下げた。

短く切られた黒髪はサラサラと流れて垂れ、その美しい睫毛と鼻筋と唇をさりげなく隠す。
ジャケットもスカートも紺色な制服は、その少女を修道女(シスター)のように見せていた。


「…………」


沈黙……少女は祈りの最中、一言も発せず微動だにしない……この数秒間を見るだけで、敬虔な信者である事が窺えよう。


(まあ、なんと熱心な……)


その少女は、いつも温かな人物の眼差しを受けていた。

この教会の傍にある修道院で、修道生活をしている修院長の眼差しである。

深い紺色の修道着を纏う姿は実に神々しく、ベールを被って頭髪が隠された顔は、一切の欲を捨て去った慈愛のみに溢れている。

世にあって世には無い生活を送るこの修道院を統べる修院長は、60才も半ばの“ふくよか”な女性であった。


「……はっ!?修院長様…………」


少女は修院長の温かな気配を感じとると、祈りを捧げる姿勢のままで身体の向きを変えて、深々と改めて頭を下げた。


『玲奈さん、貴女の信心には私も敬服しますわ』


その少女は武野玲奈といい、年齢は17才である。

両親の教えに忠実だった玲奈は、早朝と夕刻の祈りを欠かした事がない程に信仰深く育ち、高校を卒業した後には、この修道院に入り修道女として神に心身を捧げる事まで決めていた。

完全に外界と遮断される訳ではないが、それでも財産も私欲も恋愛感情すらも放棄せねばならない世界に身を投じるのだから、相当の覚悟が必要なのは想像に易く、であるからこそ、玲奈の普段からの行いは修院長の胸を打つものであった。



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