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笛の音
【父娘相姦 官能小説】

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笛の音 2.-5

 パンプスを脱ぎ、ちょうど叔父の傍を通りすぎようとしたところで有々と姦虐の目色を向けられ、横目で睨みつけると有紗は黙ったまま階段を昇り始めた。昇り口近くの叔父夫婦の寝室のドアの向こうから、コトリ、と小さな物音がした。洋子も玄関先の様子を伺っていたのだろう。
 部屋で着替えていると、すぐに携帯が震えた。
『母さんと愛美が寝たら部屋に行く。悪い子にはたっぷりお仕置きをしてやる。覚悟しておけ』
 有紗は暫くその文面を眺めていた。明彦の家に行っている間に、夥しいメールが着信していた。無視をされて、物分かりの悪い子供の駄々のような怒りと嫉妬を滲ませていたのだろう。あと数時間後、淫欲を全身に滲ませて部屋にやって来るつもりだ。母に似ている自分を姦すために。スマホを持っている直樹を張り飛ばした手がまだ痺れている気がした。
「……おねえちゃん、いい?」
 ドアの向こうから小さな声が聞こえて肩を跳ねさせた。いいよ、と言うと静かにドアが開いて、寝巻き姿の愛美が入ってくる。裸足のまま、俯き加減で部屋の中に進む妹を見ながら、
「……どうしたの? 愛美」
 と、大声ではないが階下に聞こえるくらいの声を意図的に出し、それからはトーンを落とした優しい声を心がけた。「眠れない? ……薬、飲む?」
 不眠は改善し、カウンセリングは愛美が高校生の時に終了していた。どうしても眠れない時に限り服用するようにと、作用が弱めの睡眠導入剤だけ処方されている。どうしたんだろう、久しぶりに父親のショックを思い出してしまったのだろうかと心配していると、愛美は首を振ってからゆっくりと進み、有紗のベッドに腰掛けた。
「ちょっと、……話、聞いて欲しくて」
「んー? いいよ」有紗は妹を安心させる笑顔を向けたあと、「なんでも言ってごらん?」
「ううん、……着替えて、お風呂入ってからでいい。待ってる」
 長くなりそうだから気を使ってくれているのだろうか。愛美が有紗のベッドから大きな枕を取って膝の上に乗せると、ぎゅっと抱きしめてフローリングの一点を眺めていたから、
「いいんだよ? 先に話してくれて」
 と、隣に座るためにベッドに歩を向けようとした。
「……うん。……じゃ、せめて着替えて」
「そう?」
 有紗は歩みを止めた。これも固辞したら、姉に悪い、という気分に苛まれて萎縮してしまうかもしれない。なるべく早く着替えてやろう、そう思いつつシースルーのドルマンニットはそのままに、ミニスカートを下ろし、ストッキングに手をかけようとしたところで、明彦のために選んでいた黒レースをあしらったレオパード柄の下着が目に入って、晒してしまった迂闊さに、何気なさを装って愛美のほうを振り返った。案の定、愛美は誰に見られてもいいように飾った有紗の下着姿をじっと見ていた。
「ちょっ……、なんで見てんの?」
 有紗は狼狽を隠すために、愛美を睨んで笑った。だが愛美は、姉の笑顔につられることなく、憂えげな顔のままじっと有紗を見つめていた。
「……ん? どうした?」
「おねえちゃんって、やっぱり、スタイルすごくいいね」
「だー、かー、らっ」
 有紗は脱いだスカートを下肢の前にあてがって、「見ないでって。なんでお姉ちゃんなんかの体、そんな見てんのよ」
 手の甲を振って愛美の視線を追っ払うように言うと、いつもの無邪気な反応を示すと思いきや、ごめん、と萎れて目線を落としたから、有紗はますます心配になって急いでルームウェアを着て、髪の中に入れた手を揺すってほぐしながら愛美の隣に座った。
「どーしたの?」
 軽い応対の方が話しやすいと思い、外し忘れていたイヤリングを取りつつ、目線は愛美に向けずに問うた。
「……うん」
「……ほらー、どうしたの? お姉ちゃんなら、何でも言えるでしょー?」
 枕を抱いたまま背中を丸めてじっとしている。有紗が手を背中に添えて軽く叩くと、高校時代から変わらぬショートボブを、大学に入ってからカラーリングして毛先にウェーブをかけた髪が息をつくと僅かに揺れていた。暫く黙ってそれを見つめる。愛美が話したいタイミングでいい。
「変なこと訊いていい……?」
「変なこと? ……まあ、何でも訊いていいよ? 姉妹だし」
「うん……」愛美は、深呼吸をすると、「おねえちゃんてさ……。……、……ある?」
 聞き取れなかった。ん?、ごめんもう一回、と有紗は俯く愛美に耳を寄せる。
「どれくらい、したことある……?」
「……ん? 何が?」
「……、エッチ」
 玄関先で叔父に会い、嬲りに行くと宣言されたところへ愛美がやってきてくれた。さっきの有紗の声が寝室の叔父にも聞こえたろう。愛美がいれば部屋に来ることはない。そして消沈した愛美への心配が、明彦の家に行き家に帰ってくるまでの一連の憂事を忘れさせてくれていた。あとは妹の話を聞いてやり、笑顔に戻して今日の夜を終えるだけだった筈だ。
「な……、なに? そんなこと……」安心感を与えたかったが、「ちょっと……、なんてこと訊くんだよ、もぉ……」


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