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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 束子 〜-2

 場合によっては、蛇口をほんの少し開いて、ポタポタと水を垂らすだけにして、それがシャワーということもある。 生徒からすれば『やっとシャワーだ』と思った矢先に雀の涙だ。 学園の、本当に数少ない憩の時間が期待外れに終わり、しかもそのあとで、
『気持ちよかったです。 ありがとうございます』
 と言わなければならない。 そうなってくると、こちらとしても、
『あ、そ。 じゃあ次もこんな感じでシャワーしましょう』
 と返す。 そして実際に、次もそんな風にする。 物わかりが悪く、成長を感じさせてくれないクラスに対しては、シャワーを浴びる資格はない。 いうなればシャワーの水量は、教官がクラスをどう評価しているかをはかるバロメーターなのだが、そのことに気づくのは学園を卒業したのちになるだろう。 ちなみにわたしは、このクラスを相当高く評価している。

「「カンカンカンカン! カンカンカンカン!」」

 生徒の肌が飛沫をうけ、汚れが落ちる。 文字通り瑞々しい十代の肌だ。 
 全員髪の色は黒。 当然脱色した生徒などいない。
 瞳の色も黒。 モンゴロイドばかりの島国で、とうとう外の血が浸透しなかったせいか、繊維や虹彩は色素がしっかり沈着している。 腋毛、陰毛ほか、体毛も黒。 近いうちに体毛の手入れが日課になるが、今のところは半数近くの股間に、艶めいた陰毛がふさふさ茂っていた。

 汚れた靴をどうしようか考えていたが、股間に生茂る叢をみて決めた。 靴は、シャワーの前に洗剤に浸かっているのだから、擦るだけで汚れはある程度どうにかなる。 こびりついた匂いや滲みは、それ自体が次の指導に繋がるので、最低限付着物だけ落とせばいい。

「全員、止まれ」

「「ハイ!」」

「右足の靴を脱いで、股間にあてて」

「「ハイっ」」

 僅かに返答が乱れ、動きが一瞬止まった。 間髪入れず指示通りに動いたのは、先頭にいる22番だけだったが、すぐに全員が靴をぬいで後に続く。 あるものはおずおずと、あるものは靴が変形するぐらい、股間に履物をおしつけた。

 わたしの意図は伝わっているだろうか? 優秀な生徒ならばこの時点で教官の意図を汲み、それに則った体勢になっている。 ザッと見渡した感触では、4、5人は分かってるようだ。 気持ち腰をおとし、靴の爪先を股間でくるむようにがに股をとる。 両手で靴を支えようとする。 十分だ。

 22番の姿勢には苦笑を禁じ得ない。 右手は靴の爪先を掴んで股間に宛て、左手を肛門から回して踵をにぎっている。 教官たるわたしをして、初めてみる姿勢だった。 たかが靴を洗うだけで、こんな工夫をする発想は中々思いつかない。

 ところがである。 22番の後ろで、8番と6番が同じ姿勢をとるではないか。
 苦笑している間に、便宜上22番スタイルとでも呼ぼうか、その姿勢が伝わってゆく。 ものの10秒ほどの間に、とうとう全員が股間で縦に靴を挟むぶざまな恰好に揃ってしまった。 もちろんわたしの意図を汲んでいた4、5人も、今では22番スタイルである。

 こうなってしまっては是非もない。 

「貴方たちの陰毛や毛根を『たわし』にして、しっかり靴を磨きなさい。 はじめ!」

「「ハイっ」」

「返事が小さい!」

「「ハイッ!!」」

 一斉に股間が動く。
 『洗う側』は『洗われる側』より価値が低い。 自分の身体を道具にみたて、汚れたものを洗うことで、自らを貶め相手を称える。 もっとも大切なメスの持ち物で、汚物にまみれた外靴という、汚れること前提の道具を洗う。 言い換えれば自分の股間の持ち物は、外靴以下の用途しかないことを自覚しなければいけない。 それが伝統的な『たわし洗い』だ。 
 昔は殿方の人肌を磨く際に、自分の身体をタオルにみたてたらしい。 特に股間を『たわし』と僭称し、殿方の腕や足に触れていたと聞いた。 そんな僭越は学園ではありえない。 というよりは、現代において殿方の肌に触れるなど一生に一度あるかないかだ。 

「9番っ、たわしを動かしなさい、たわしをっ。 靴を動かすなんて、横着しちゃってどーすんの!」

 ビシィッ。 22番のお尻に、何発目だろう、思い切り鞭を入れる。

「ハイッ! チツマンコを振って靴のウンチを落とします!」

「落とすって何!? 『靴様をお清めします』、くらいいえないの?」

 ビシッ。 

「ハイッ! 申し訳ありませんっ、チツマンコで靴様の汚れをお清めさせていただきます、ありがとうございます!」

 靴を股間に擦りつけていた生徒がハッとなり、くい、くいと腰を前後に振り始めた。 靴は動かず、股間が動く。 踵を洗うときは思いきり前傾し、爪先をあらうときは仰け反って腰をつきだす。 靴を動かせば一瞬で全体が洗えることを思えば、生徒の動きは無駄だらけだ。 その無駄を、真剣にこなせるかどうかが、モニターの向こう側で試されている。

「動きを揃えていくよ〜。 はいっ、前、後ろ、前、後ろ、いち、に、いち、にっ。 声揃えてっ」

「「いち、に、いち、に!!」

 初夏を思わせる日差しの下。 夕暮れの気配が漂いはじめる放課まで残り10分。
 
 あと5分ほど洗わせたら、早めに教室へ帰してあげよう。 これから靴を洗うときは、他のクラスでも目の前の洗い方――22番スタイル――を取り入れてみよう。 そんなことを考えながら、わたしは22番の締まったお尻に鞭を入れるのだった。


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