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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 束子 〜-1

〜 束子(たわし) 〜



「ぜんた〜い、とまれ。 右向け右〜」

 ざっざっざっ。 自分たちがひり散らかした汚物の中で、生徒たちが動きを揃える。 

「第2姿勢」

「「ハイ!」」

 わたしの指示に対し、すかさず蹲踞する。 しゃがんだことで顔が低くなり、匂いがダイレクトになった。 眉間を震わせるものがいてもよさげだが、そこは躾の成果だろうか、この程度で表情を崩すモノはない。

 改めて眼前のパドックを眺める。 
 芝に茶色い落とし物。 ついつい後先考えずに行進姿勢を優先したため、便が踏み固められて芝にこびりついている。 箒とチリトリで対応するには軟らかく、この小型トラックの用途としては、後片付けが面倒な部類だ。
 確かトラックの掃除担当はBグループ2組だ。 このまま全部放り投げても、それなりに対応する程度には優秀なクラス。 それだけに、少し掃除しやすい状況をつくってあげたい。 基本的にわたし達は『できない子には、より厳しく』対応するよう上から指示されており、逆に言えば『優秀であるほど、より易しく』指導しても許される。

「美化委員だけ残って、他はわたしについてくるように――って、そうか、まだ委員とか決まってなかいよねえ」

「「ハイ! 申し訳ありません!」」

 忘れていた。 一週間後の委員決めまで、クラスは全て担任裁量。 係りも委員も先の話だ。
 あとで『生徒会』に連絡して『保健委員』に後始末を指示するとしよう。 特定の場所や機材が極度に汚れた場合にやってきて、清浄になるまで務める便利なコ達だ。 便と匂いの発生源たる大腸菌を、まとめて分解する手段がある。 汚物に抜群の効果をもつ『糊粉(のりこ)』。 汚染源にサッと撒いておくだけで、あとは自然に綺麗になるというスグレモノだ。

「いいわ。 トラックはこのまま。 基礎行進でわたしについてきてね。 全員起立、行進はじめ♪」

「「ハイ! わん、つー、わん、つー!」」

 トラックに隣接したゲートをくぐると、屋外シャワー場がある。 足許はコンクリートで固められており、晴天の太陽で温まっている。 シャワーを浴びる手前に階段状のくぼみがあって、独特の香りと色をした液体がはってあり、まず下半身を浸すことになる。 続いて『コの字型』のパイプにシャワーヘッドがぶら下がったものがいくつも連なり、集団で水洗いできるようになっている。 100年前の小学校では、どの学校プール脇にも備えてあった、あのシャワーだ。 

 靴をはかせたまま、生徒に階段状のくぼみを降りさせる。 腰から下が液体に浸かったところで、その場足踏みがスタートだ。 階段は10段ほどあり、一番下は地面から1メートルばかり低い。 足踏みしている生徒たちを地面の上から見下ろすと、なぜかしらキャベツ畑を眺めている気分になる。

「どう? 気持ちいい?」

「「ハイ!」」

「22番。 感想をどうぞ」

「…ハイ! とっても素敵な薫りで、気持ちがいいですっ。 それに、あの、チツマンコとケツマンコも綺麗にしていただいて嬉しいです! ありがとうございます!」

 作り笑顔とはいえ、本当に気持ちがよさそうに答える22番。 
 液体の正体はといえば、馬や牛といった大型畜産に用いられる濃縮洗剤と、繊維の汚れを分解する漂白剤を混ぜ、生理食塩水で割ったものだ。 匂いに気を遣う必要がない製造品なため、厩舎を連想させるキツイ香りがする。 お世辞にもいい匂いだとは、わたしには思えない。 けれどもついさっきまで自分たちの排泄物の上を歩いていた生徒たちからすれば、匂いの質が変わっただけでも、本心から素敵な薫りに思うのかもしれない。

「そう♪ 貴方たちに合ってるんだ。 みんな、よかったわねぇ」

「「ハイ! ありがとうございます!」」

 汗や埃、そして誇りを洗剤で流す。 靴の汚れは漂白剤。 言わずもがなであるが、どちらにしても、いわゆる人間のための薬品ではない。 粘膜に対する刺激は相当なはずだ。 健康上問題がないよう十分な配慮はしてあるが、決して心地いい刺激ではない。

 分かった上で感想を求めるわたし。 無条件で御礼をかえす生徒。 本音を聞くわけじゃないし、本心を答えるわけでもない。 

 こういうものが『様式美』だ。

 5分ほど足踏みさせてから先へ進む。 次はシャワーだ。
 全員がシャワーゾーンに入ったのを見計らい、今度は『カンカン体操』をさせる。 別にその場足踏みでも何でもいいのだが、ワンパターンでは気持ちが緩むからだ。 

「「カンカンカンカン! カンカンカンカン!」」

 舌を精いっぱい伸ばして必死に踊る生徒たち。 勢い、声ともに、わたし的には上出来だ。

 わたしはシャワーの蛇口を6割開きにした。 校庭で身体を酷使してきた少女たちは、髪をつたう冷たい飛沫の中で、作り笑顔から本物の笑顔に変わる。 いくら疲労があっても、束の間忘れさせてくれる心地よい冷たさ。 パイプを通る間に適度に気温で温められ、冷たすぎることもない。
 


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