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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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G.-2

目が覚める。
その瞬間、ひどい悪寒に襲われる。
これは寒さのせいだと言い聞かせ、昨日カスな市民病院からもらった解熱剤を飲む。

熱なんか出てない、熱なんか出てない、熱なんか出てない……。

呪文のように自分に言い聞かせ、ガタガタ震えながら準備を済ませる。

こんなの嘘だ、夢だ。
出勤したら元気になるんだ。

そう思いながら気力でバスに乗る。
自転車を漕ぐ体力はなかった。
病院に着くと、なんだか身体がポカポカしてきた。
11月になって、暖房が効き始めたからかな。
受け持ちの患者を確認し、情報収集しにパソコンに向かう。
ボーッとしてしまうのを悟られないように必死になる。
8:30になり、円卓の周りに集合し、夜勤からの申し送りを受ける。
今日は楓とペアだ。
「頑張ろーね!」
と笑顔で言われ、虚ろな目で「うん!」と答える。
「11月2日。夜勤から日勤への申し送りを始めます…」
夜勤リーダーが何かを話しているが、一語一句頭に入ってこない。
視界がグルグル回る。
しっかりしろ!風間陽向!と、言い聞かせるが、もう、限界だ。
陽向はフラフラと床に倒れこんだ。
時が止まった。
「風間!」
ぼやんと頭に響く声。
誰の声なのかもわからない。
抱きかかえられ、処置室に連れて行かれる。
「気持ち…悪い……」
陽向はそれだけ言うと、処置室の水道で思い切り吐いた。
「おい…」
「んー…ぁ…」
「大丈夫か?」
陽向は力なく頭を振り、再び倒れそうになった。
それを支えてくれた誰かが端のベッドに寝かせてくれる。
「大丈夫かよ…マジで…」
血圧計を巻き、体温計を挟みながら必死に声を掛けてくる。
「風間!」
「んんー…」
横で誰かが血糖を測っているのだろう。
指先がチクリと痛む。
「おい…」
うっすら開いていた視界の先にいたのは…
「風間……」
見たこともない表情をした、瀬戸薫だった。

「大丈夫?」
声を掛けられてハッとなり、ピッチを確認する。
1時間半も眠っていたみたいだ。
「すみません…すぐ、戻ります…」
陽向はフラフラ起き上がり、靴を履こうとした。
「何言ってんの。受け持ちはあたしがやるから。寝てな。…こんな熱あんのに無理でしょ」
少し怒った顔をした高橋が陽向に体温計を突き出した。
39.9℃。
昨日よりヒドい。
「師長が外来の処置室行けって。手配してくれてるから」
「あ…でも…」
「でもじゃないから!…瀬戸に頼んだから一緒に行って」
高橋はカーテンの後ろから瀬戸の腕を掴み「よろしくね」と言って処置室から出て行った。
気まずい空気になる。
そういえば、今日瀬戸はフリースタッフだった。
受け持ちのサポートに回る役目だから、こんなとこにいちゃ病棟に迷惑がかかる。
「あ…瀬戸さ…。勤務戻って下さい……。あたし…大丈夫なんで……ひとりで行きます、外来の…ぁ……処置室?うん、2階の……」
「バカかお前」
冷ややかな目を向けられる。
陽向はそれを気に止めずフラフラしながらベッドから降り、靴を履いて処置室から出ようとした。
力が入らず、ドアも開けられない。
ヒンヒン言っていると、瀬戸は陽向の腕を掴んで、その腕を自分の腰に回した。
「車椅子、乗る?」
その表情はバカにしてるとかそういうのではなかった。
「こんなカッコじゃ…乗りたくないです……」
「だよな」
瀬戸は優しく笑うと、陽向を支えながら外来まで一緒に歩いて行ってくれた。
エレベーターの中でまた気持ち悪くなって、瀬戸にしがみついていた事は忘れたい。
でも、ずっと背中を撫でてくれていた。
「ごめ…なさい……」
「謝んじゃねーよバカ」
外来の処置室に着くと、病棟にあるベッドと同じベッドに寝かされ、有無を言わさず制吐剤の入った点滴を挿入される。
2回失敗された。
点滴をガラガラ引きずり、ガタガタ震えながら採尿をとりに行く。
その間も瀬戸は待っててくれた。
一通り検査を終え、処置室のベッドに横になる。
「また来るから。ゆっくりしてろよ」
「ほんとに…すみません……」
「俺なんもしてねーけど。言うなら受け持ち代わった高橋に言えよ」
「はい…」
瀬戸は陽向の頭を小突いて「あとでな」と言い、処置室から姿を消した。


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