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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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G.-3

だいぶ吐き気も楽になってきた。
でも頭痛と身体の熱さは変わらない。
点滴が終わり抜針した頃、再び瀬戸が現れた。
「患者のお迎えみたいだな」
そう言いながら陽向のおでこに手を当てる。
「ただの熱じゃなさそーだけど。へーき?とりあえず病棟戻るぞ」
陽向は何も言わず、瀬戸に支えられながら病棟へと戻って行った。
受け持ちを代わってくれた高橋を見つけ、声を掛ける。
ギョッとした顔をされた。
「高橋さん…ほんとに、すみませんでした」
「いやいや、全然いーんだけどさ…。大丈夫なの?マジで」
「…大丈夫です」
「師長にも声掛けなね」
「ハイ…」
陽向はフラフラしながら師長の元へと向かって行った。
頭がぼやんとして視界が夢の中みたいだ。
「小野寺さん…」
ここの病棟の師長である小野寺は、体育会系のハキハキした女だ。
ベリーショートの髪がよく似合う美人。
「あらやだっ!風間さん、大丈夫なの?」
「大丈夫です…ほんとにすみませんでした」
「明日の勤務は?」
「…夜勤です」
「熱、下がりそう?」
「昨日、薬はもらってるので…大丈夫です」
小野寺はうーん…と考えた後「遅出にしとくから」と言った。
「すみません。ありがとうございます」
「明日の朝もっかい連絡するから、ダメそうだったら教えて」
「わかりました」
陽向は礼をしてその場から立ち去り、休憩室に向かった。
ドアを開けると、そこには瀬戸がいた。
「おう。大丈夫か?」
「大丈夫です。あの…今日はありがとうございました」
ロッカーから自分の荷物を取り出し、帰ろうとドアに手を掛けると、反対の腕を掴まれた。
「なんですか…」
一刻も早く帰りたい。
悪寒が走り、再び熱が出るのだと悟る。
「そんなんで帰るつもりかよ。どこまでもバカだな」
「さっきからバカバカって…バカしか言えないんですか?!」
早く帰りたいのにこっちは…。
こんな時にこれ以上バカになんかされたくない。
「…お疲れ様です」
「送るよ」
「え…」
「家まで送る」
「いいです…ひとりで帰れます」
瀬戸は陽向の腕を引っ張って自分に近付けた。
「さっきみたいに倒れたらどーすんだよ」
「……」
「マジで心配なの。送らせろ」

30分後、陽向は瀬戸の車の助手席でボーッとしていた。
ガタガタ震えていると、後部座席にあった毛布をかけてくれた。
「寒い?」
「寒い…です…」
「これからまた熱上がるな」
陽向は毛布を頭から被った。
香水の匂いがする。
瀬戸ではない、誰かの。
グルグル考えていると、だんだん息が苦しくなってきた。
…こんな時に。
陽向は悟られまいと更に毛布をきつく抱き締め、目を閉じた。
「着いたぞ」
瀬戸は素っ気なく言うと運転席から降り、助手席のドアを開けた。
降りようとするが、足が上手く上がらない。
瀬戸が手伝ってくれてやっとの思いで車から降りる。
そのまま瀬戸の薄手のセーターに顔をぶつけた。
「おい、しっかりしろよ…」
「ん…」
「風間?」
「く…るしい……」
連日続く39℃台の熱で身体が相当ダメージを受けていたらしい。
それに、無理をして出勤したのだ。
発作が起きるのは当たり前か…。
陽向は嫌だと思いながらも瀬戸にしがみついて肩で息をした。
「おい、風間…。大丈夫?」
陽向はフルフルと頭を振って涙を零した。

苦しいよ…。
もう耐えらんない…。
なんでこんなに弱いんだろ、あたし。
もっと健康に生まれたかった。
そしたら、熱出したってこんなに苦しまずに済むのに…。

「病院…戻りたい…」
瀬戸は頷くと、陽向を抱きかかえて再び助手席に乗せて元来た道を走り始めた。
ヒューヒューと喉が鳴る。
「風間……大丈夫…」
シートベルトもせずに助手席で丸くなる。
死にそうな程苦しい。
「お前、喘息持ち?」
そう問われ、力なく頷く。
「吸入は?あんだろ?」
赤信号になった時、瀬戸は陽向のバッグを漁って吸入器を見つけると、陽向の口に押し当てた。
「吸え」
思い切り息を吸うと同時に脱力感に襲われる。
自分はこの吸入にひどく依存しているに違いない。
吸っただけで楽になると思い込んでいる。
これこそプラセボ効果だ。
おめでたい人だ。
しばらくして病院に着いたのか、瀬戸は急いで車から降りると助手席でグッタリする陽向を抱きかかえて救急外来に飛び込んだ。


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