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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 尻語 〜-2

「あふっ……」「うぅんっ」「ひっ!」

 彼方此方で押し殺した嬌声がする。 教官が、おそらくは肛門をうまく動かせていない生徒に、ビー玉を捻じいれている。

「もう『あ』は結構。 次は『い』です。 口で『い』をいう時は横に伸ばすでしょう。 同じようにアナルで『い』をつくりなさい」

 馬鹿げているとは知りながら、ウチの周りでクラスメイトが息みだす。 
 ここに来て教官の意図がおぼろげに分かった。 肛門と口を重ねて、口でしゃべるのと同じように、肛門でウチらに喋らせようというらしい。 口をパクパクする代わりに、肛門をパクパクさせろってこと。 

 アホすぎる。 舌と声帯があるから口から声がだせるわけで、肛門で声がだせるわけない。

 だがしかし。 だからといって抗議できるわけがないのだ。

 『い』をイメージしながら、本当に身を漏らさないよう加減しながら、肛門括約筋を締めつける。 
 これで何とか誤魔化せれば……という願いは儚かった。 足音がウチの近くで止まり、またも肛門をビー玉がくぐる。 足を延ばしてお尻を高々と掲げた姿勢だけに、ストンと腸の奥にひんやりした異物が落ちてくる。

「これもダメなの? しょうがない、今度は『う』です。 縦長に、すぼめて開くんですよ」

 『う』、『う』、『う』……。 唇の隙間をひし形にして、突きだすように声をだせば『う』になる。
 それを肛門で再現……そんなの出来るわけがない。 その上2つのビー玉で刺激を受けたせいで、ウチのお腹はギュルッとなっていた。 ビー玉という異物を除去する本能と生理が相俟って、排泄欲求が湧いてきた。 万全の体勢であったとしてもできないというのに、今の状況で何とかなるわけがない。

 つぷん。

 3つ目のビー玉。 
 もうダメだ。 ポキリ、ウチの心で芯が折れた音がした。

 その時、ふと22番の動きが視界に入った。 教官は22番のお尻をスルーしている。 それってつまり、22番はオレと違って肛門で言葉遣いができている、とでもいうのだろうか? 

「『う』の次は『え』。 出来ないメスは工夫しなさい。 クラスの半分くらいは出来ているんだから」

 そんな馬鹿な……ウチの耳まで可笑しくなったのか、と思った。 半分が出来ているなんて、そんなことあるわけがないと思った。

 22番を見て愕然とした。 
 
 肛門にあてがった右手の動きが、ウチとは全然違っていたのだ。
 ウチは、ただ右手で尻たぶを割って、肛門が見えるようにしていた。 一方、22番は親指と小指だけで肛門を剥き、他の指を肛門に入れて形を変えているではないか。 今は中指・人差し指・薬指の3本を肛門に挿入し、中から広げて『え』の形っぽくしていた。 
 
 つぷん。

 教官が隣で立ち止まり、茫然となるウチに新しいビー玉が届く。 対照的に、何事もなかったように教官が22番を通り過ぎていく。 しまった、あんな風にすれば……。 肛門だけで形をつくれなくても、指を工夫してそれらしくすれば、教官には通じるなんて気付けるわけない。

「どんどんいきますから。 『お』です。 さん、はい」

「……ッ」

 ウチだって指をつかえれば、22番みたく肛門から言葉をとりだせる。 22番を真似て、自分の指を3本挿入して、『お』の形に押し広げて見せる!

「え……?」

 あ、あれ? 指がまったく挿さらない。 
 思い切って深く突き刺そうとする気持ちと裏腹に、指は肛門をつついたきり動かないではないか。
 お腹からこみあげる便意とは関係なかった。 本能が異物を拒み、指を挿そうとする理性が負けてしまっているかのよう。 これまで自分の指で肛門をいじった経験があるなら話は違うが、いきなり指を、しかも複数本どうにか入れるなんて、頑張ってもダメなんだろうか?

「く、くそっ、くそ……ううっ」

 もがいても、どうにもならない。 
 またも足音がウチの止まりで消え、つぷん、5つめのビー玉だ。 

 次第に要領を掴み、ウチの周りでも、自分の肛門に指をいれる生徒が出始める。 一本だけ入れることができて、『き』だとか『ち』だとか、肛門を横に引っ張って『い行』の音を再現できるコがいる。 2本咥えて『く』や『つ』をクリアするコもいる。 もちろん、3本で自在に肛門を操る22番のようなコだっている 一方でウチみたいにどうにもできず、ただビー玉を入れられ続ける、21番のような不器用っぽいコもいた。

 教官が『な』や『に』というたび、無言で肛門に挿された指が動く様子は、滑稽を通り越して不気味ですらあった。 もしかしたら、いつか本当に『肛門による自己紹介』をさせられる日がくるかもしれない。 あっという間に肛門に指を突っ込み始めたクラスメイトみたく、自分も指を入れるようになって、平然と肛門をパクパクやるようになるかもしれない。

 …チヤ……ガチャ……。

 腸内でビー玉が奏でる無機質な音色に身をゆだねる。 
 教官に目をつけられたのは、ウチと21番だ。 ビー玉を入れられた数が他と全然違う。 ただ同じように目をつけられたにしても、ウチは今まで毎回ビー玉を入れられてるから、少なくとも一番肛門が動かせていないのはウチだろう。 次にペナルティが来るのは間違いない。

 せめて、22番や他のクラスメイトみたいに、逃げ出さずに頑張ろう。 自分から手をあげて他人の大便に向かった33番みたいに、勇気をだして前を向こう。

 ポタリ。

 怖くて、寒くて、知らず浮かんできた涙が1滴、机に零れた。
 


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