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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 逆流 〜-1

〜 逆流 〜



 しばしの沈黙を経て、教壇で腰をもたげる彼女が発した最初の一言は『お願いします。どうかあたしのウンチを食べてください』だった。 対象は、教室の隅に立たされた33番と呼ばれる私に対してというよりも、私たち全員に対しての懇願だ。

 私たちは沈黙で返答した。 29番は体中をガクガク震わせながら、脂汗を滝のように滴らせながら、お尻をビクリビクリと跳ねさせながら、荒い息の下で言葉を続けた。
『一生懸命、ゆっくりだしますから、前にでてきてください』
『もう我慢できないんです』
『お願いです』

 私たちの返答は変わらなかった。 
 涙と嗚咽をこぼす29番に、助かって欲しいと思う気持ちは嘘じゃない。 少なくとも私は本気でそう思っている。 それでも、だからといって私が手を挙げて、教壇の前にいって、口を開くことなんか出来ない。 教官のいう通りに呑込むどころか、口にした直後に、きっと、いや絶対に吐き出してしまう。 そうなったら29番と私の両方がさらに罰を受けるだろう。 だからこそ、私のようなダメ人間じゃなくて、ちゃんと呑込める人が名乗り出るしかないと思う。
『助けてください』
『一生恩にきます』
『誰か……ウンチをお願いします……!』

 それでも、誰も名乗りでなかった。 
 見かねたのだろうか、教官からアドバイスがでる。 いや、そういうわけではなかっただろう。 教官の瞳は気怠そうで、同情や配慮は一貫して見受けられない。
『誠意を伝える工夫をなさい。 立ち上がって、動きをつけてお願いするのよ』
 涙をしゃくりあげながら、29番は起きあがる。
『ヤンキー女風にお願いしなさい』
『お、お……オレのクソを喰いなッ!』
『動きをつけろっていってるでしょう』
『オレのクソを喰いなッ!』
 背中を私たちに向け、両手を腰にあて、顔だけこちらに向けて乱暴に言い放つ。 直後に教官が溜息をつく。 いわく『一人称が違う。もういっかい』『表情が甘い。もう一回』『噛んだ。もう一回』『動きが小さい』『声が小さい』
 そのたびに便意に苛まれながら、29番は大声で叫んだ。 教官が『自分で納得できるまで続けなさい』といったので、
『あたいのクソを喰いなッ!』『あたいのクソを喰いなッ!』『あたいのクソを喰いなッ!』
 何十回となく繰り返した。

 まだ誰も名乗り出なかった。 息も絶え絶えな29番に指示がとぶ。
『ヤンキー女じゃ気持ちが通じないみたいねえ。 次は板前でお願いしなさい』
『……えと、えと……へいおまち!』
『動き』
 なにやら手許で料理をする真似をして、盛りつける素振りをし、皿をだす恰好。
『へい、おまち!』
 後ろから教官が呟いている。『笑顔』『一人称』『意味』『説明しなさい』『キレ』『大きく』etc…。
 29番は涙を流しながら、それでも泣くことは許されず、震えながら何度も料理の真似事をした。
 ぐるるるる。 今や絶え間なく悲鳴をあげるお腹と胸を揺らし、教壇の上で身振りを交えた。一つ一つの仕草は滑稽で、意味不明で、単独でみれば笑っていたかもしれない。 けれど私たちは、視線を落としたり、あるいは目を背けたりと、笑いの対極に位置した。
『へい、弛まんメスのウンチ一丁、おまち!』
『へい、弛まんメスのウンチ一丁、おまち!』
『へい、弛まんメスのウンチ一丁、おまち!』

 10回ほど繰り返したところで別の指示が。
『誰にもお願いが届いてないじゃない。 いつまで同じことやってるの。 弁護士風に変えなさい』
 そして教官の独り言に操られるように、29番が教壇で踊る。
『みなさん、私の便の食事を依頼します!』
『みなさん、私の便の食事を依頼します!』
『みなさん、私の便の食事を依頼します!』

 人を蔑ろにした、感情がこもらない教官の声。 続いて朦朧として従う29番。
 弁護士に続いて『警察風』『サッカー選手風』『演説風』etc…。
 合計したら50回は軽く超えているだろう。言外に『助けて』の気持ちをこめて、29番は叫び続けた。 それはつまり、私が50回以上、15分近くの間、正面で一人の少女が苦悶する様子を黙って見続けたことを意味する。

 私を含め、誰一人、崖に吊るされた少女に手を差し伸べようとしなかった。


 ……。


 それは、一瞬の出来事だった。 それまでガクガクと震えていた29番が、口をなんどかパクパクさせ、息を吸おうとして、束の間しろめをむいて――そして膝から崩れおちた。
 
 ドサッ。

 教壇の上に腹ばいになって、手足をダランとはみだし力なく垂らす。 教官がビクンビクン痙攣しているお尻をつついても、何も反応は返さない。

「あら。 これってもしかして、気絶しちゃったのかしら」

 返事はない。 ただの屍のようだ。 

「結局人の言うことを聞けなかったか。 どうしようもないメスねえ。 ふう」

 腕をくんで溜息をつく教官。

 ……便意というにはあまりにも痛烈な痛みに、脳が耐えられなかったのだ。 考えてみればわかる。 薬で強制的に排泄しようとしているのに、一切の容赦なく腸内に閉じ込める。 出そうとする腸が発する信号は痛みとして、刻一刻と拡大して脳に届く。 私だったらどれくらい耐えられただろう? いつ排泄が許されるか全く見えない状況で、半刻にわたって意識を保っただけでも、29番はよく頑張ったといえるだろう。 しかし、その努力も含め、メスという言葉で片付けられる。


 


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