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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 条件 〜-2

 紫のリモコン。 
 噂でしか聞いたことがないから確かめようはないが、私たちの首輪にはいくつもの仕掛けがあって、中には延髄に電流を流し、即座に横隔膜を麻痺させるものがあるらしい。 横隔膜が動かなければ肺に外気を取り入れられない。 そうなった私たちを待つものは、悠長にすすむ穏やかな窒息だけだ。 その仕掛けを作動させるリモコンは、青系の色と聞いたことが有った。

「触った瞬間すべてを終わりにしてあげる」

「!! そ、それって……」

「抜きたいなら、どうぞ。 自力で抜ける代物じゃないから試してみなさい」

「あ、いや、申し訳ありませんっ。 絶対触ったりしませんっ」

「あ、そう。 どちらでもいいのに」

 これ見よがしにリモコンを掌で転がす教官。 
 僅かな逡巡を経て、再度29番が口を開く。

「こ、このままだと、教官の尊顔を汚してしまいますっ。 教壇から降りても、か、構いませんでしょうかっ」

「好きにしなさい。 ただし」

「え……」

「降りた瞬間すべてを終わりにしてあげる」

「そ、そんな、だって……ぐすっ」

「お好きにどうぞ」

「うぐっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 おそらく29番は抗議の言葉を呑み込んだのだろう。
 好きにしていいといった舌の根が乾かないうちに、好きにすれば何かが起こると脅す。 結局なんにも自由にさせるつもりはないのだ。 それが学園のやり方だ。

 見ているだけで辛くて、私は俯いてしまった。 教官が前にいる間は、脇見は非礼にあたる。 何があっても顔をあげ、しっかり見つめなければならない。 それでも、便意の先を見いだせない29番の姿は哀れすぎる。
 もしもテレパシーが使えれば、私ならどうするか伝えたい。 29番はすでに『質問する』という無礼を犯したのだから、『どうすれば排泄させてもらえるのか』を聞けばいいではないか。 教官が期待に応えてくれるにしろ、応えてくれないにしろ、話は進む。 答えてくれなければ懇願だ。 とにかく慈悲を願い、出来ることを見つけて、一刻も早く助からないと、本当に頭がおかしくなってしまう。 私の体験を踏まえた上で断言するが、限界を超えた排泄の抑制は脳を破壊する。
 
 私に出来ることはなにもないけれど、応援するから、早く助かってください――。

「き、教官!」

 耳に届いた声は、それまでの弱々しい声色と一線を画していて、私は思わず顔をあげた。 
 よろめきながら体を浮かし、改めて教官に向き合う姿勢を取ると、教壇に額をこすりつける。 足を八の字に開き、乳房がぺちゃんとなるまで胸を押しつけ、股間のストッパーを晒したまま土下座する恰好。

「さきほどからの無礼、平にお詫びいたしますっ! 排便許可をいただくためならどんなことでもしますっ! だ、だから、どうすればいいか教えてくださいッ!」

「……」

「う、ウンチださせてください! お願いします、お願いします、お願いしますっ! なんでもします、い、いや、させてください! む、無能で、ま、マスターベーションも満足にできない、け、ケツマンコにっ! 排泄する機会をお与えくださあい!」

 私は心の中でこぶしをつくった。 
 それでいい。 言葉遣いが傍目にも全くなっていない点を除けば、29番がするべきことは、只管教官に懇願することだ。



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