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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 補習C 〜-1

〜 補習C 〜

 あたしが【補号】になって、どれくらい経つだろう。
 学園に入学してからだと、通算9年。 このA棟第1講習室に配属されてからなら、今年で3年目にあたる。 この数年間で、いったい何人の生徒に補習を与えてきただろう。

 担任教官が指導のために、あるいは見せしめのために送り込んでくる生徒に対し、思い通りの補習を課すことは、最初はそれなりに面白かった。 それに加え、厳しく対応していれば、あたしが他人から責められることもない。 他人に対し厳しくなることが自衛の手段になるのだから、補習を受け持つポジションはあたしに向いていると思ってきた。

 ところが、だ。 補習に託(かこつ)けた愉しみが、この頃どうも揺らいできている。 

 補習を終えたものは各教官の手許に戻る。 ある者は従順に、またあるものは感情をなくして教室に戻る。 戻ったあとでどうなるか、補習専門であるあたしには見届けることができない。 再び補習にまわされてくるまで、こちらから関わる余地もない。 生徒を総合的にプロデュースするのはあくまで担当の教官であって、あたしではない。

 教官と自分を比べれば、立場は同じでも、あたしの方がより安全だ。 教官になりたいのかといわれれば答えは『NO』だし、多くの生徒に長く関与したいわけでもない。 それでも、生徒が学園を通じてひとかどのオマンコになる中で、あたしが主役になれない現状は面白くない。

 そんなことを思っていたため、新人の教官に無駄口を叩いてしまったのかもしれなかった。 この学園では、余計なこと考えて、それがあたしのためになるなんて有り得ないのに。

「……」

 口いっぱいに広がる悪臭と汚物とくゆうの生ぬるさ。 固形物を含んでいるせいで唾液が途切れず、飲み込むたびに、いがらっぽい汚汁が喉に絡みつく。 不快感から気を紛らわすため、あたしはモニターのスイッチをいれる。 先刻新入りの30番を放り込んだ部屋。 暗くてはっきりと見えるわけではないものの、肉塊が前後に揺れながら、何か叫んでいる様子が伺える。 

 映像は講習室の隅にある小部屋。 さっきまで静かだった部屋からは、よおく耳を澄ませば、か細い悲鳴が切れ切れに続いている。 補習を始めてから1時間も経過しただろうか。 すでに体力も底をついているだろうに、防音が聞いたドアごしに声を届けるとは、30番とかいったか、中々頑張っている。様式のビデを模した琺瑯(ほうろう)容器には小型カメラが据付けてあり、いつでもこちらから様子を見ることができる。 いままで見ようとしなかったのは、あたしの気分が乗らなかったから。

「……」

 やはり暗い。 もう少し映像を調節しよう。 明度を下げて、彩度を下げて、感度をあげる。 

 随分と映像がくっきりした。 モニターの向こうで、顔を汚物まみれにした少女が、何やら喚き散らしている。 開いた口に、額から垂れた汚物が入るのも構わず、どこに向かって叫ぶでもなく、とにかく何かいっている。 と、糸が切れた人形のように、顔から容器につっぷした。 額も、目も、鼻も、口も。 顔全体が汚物に埋もれる。 

 ぶくぶくと排泄物に浮かぶ泡。 20秒ほど経っただろうか。 ガバッと少女が顔をあげた。 
 口を開いて、肩を激しく上下させ、外気を吸い込む。 汚臭は気にならないようだ。 しばらくぜぇぜぇやってから、また口をあける。 声をはりあげているに違いない。

『〜〜!! 〜〜!!』

 室内に音声マイクをつけていないことが、毎度ながら悔やまれる。 悲鳴のBGMとして、独特な臨場感が期待できたろう。 
 いや。
 逆に聞こえない方が、想像力で補えるから面白いかもしれない。 音声を拾ったところで、どうせ『助けて』だとか『早く来て』だとか、つまらないことを口にしているだけだろうから。

 ぼちゃん。 音は聞こえなかったが、そんな感じで少女がまた容器に顔をつっこんだ。
 ぶくぶく。 鼻、あるいは口からもれる息。
 そして、ガバッ。 先ほど見た一連の動作がリピートする。 口から汚物を掃き出し、咽せながら喚く。 顔を振り乱すも、ベットリとへばりついた髪は離れない。 

『〜〜!! 〜〜!!』

 鼻から茶色い汁が垂れる。 幾重にも汚物を塗り込められたせいで、眉毛もまつ毛も判別がつかない。 鬼気迫る表情とは裏腹に、茶色い固形物がゆっくり這い落ちる顔は、いつみても無様で、本人が必死になればなるほど滑稽だ。

 ぼちゃん。 ぶくぶく。 ガバッ。 ぼちゃん。 ぶくぶく。 ガバッ。 また、ぼちゃん。

「……」

 幾度となく見た映像である。 糞便のこびりつい具合からして、背筋をそらすのけぞり運動(一般的な背筋運動)は、もう100回を超えていよう。

 最初は誰でも顔をつけまいとする。 懸命に上半身を浮かし続ける。けれども筋肉には限界がある。 せいぜい30分で心が折れる。 本人は絶望した気分になって汚物の中にのめり込む。
 しかし本番はこれからなのだ。 
 確かに糞便を顔につけることは避けたいだろうが、つけたからと言って死ぬわけではない。 つけて終わるくらいなら、わざわざ補習の項目に宛てたりはしない。 自分が耐えられなかったことに自己嫌悪している間にも、体内で酸素が消費される。 そして気づく。 糞便の中では息を吸うことなどできやしない。 ならばどうすればいいか? ほんの少し休まった背筋の力を振り絞り、もう一度体をもたげればいい。
 そうすれば息が吸える。 嘔吐を抑えて呼吸する。 
 次は背中が悲鳴をあげる。 さきほど限界を迎えた背筋に、体を支えつづけられるわけがない。結果再び力尽き、口中に他人の排泄物を頬張るハメに。 繰り返すうちに、呼吸できる時間はどんどん短くなってくる。 排泄物を味わう時間は反比例して長くなる。


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