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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 挨拶 〜-2

 教官は30番から視線を外し、パンパン、と柏手をうってから私たちに告げた。

「30番以外は姿勢保持の上で正しくマスターベーション。 ただし絶頂は許可しません。 許可が下り次第、30秒以内に絶頂できる体制を保つよう」

「「はい! インチツの奥で理解します!」」  

 指示を受けた私たち――30番を除いた34名――は広げた両手をずらし、右手の中指で包皮をめくる。 左手の人差し指と親指で大きさのまちまちなクリトリスを摘み、上下にゆっくり擦るのだ。 そこかしこから喘ぎが混じった呟きがはじまった。

「「クリクリ、スコスコ、クリスコスコ……クリクリ、スコスコ、クリスコスコ……」」

 自身の行為に合わせて掛け声をだし、淫行にふける顔をあげて、みっともない姿を見てもらうこと。 これが教官がいう『正しいマスターベーション』だ。 女性器のもっとも過敏な部位をしごくことは刺激が強すぎて、純粋に気持ちがいいなんていえない。 一瞬でも気を抜けばどんな難癖がつけられるかわからない状況下で、気持ちが昂るわけもない。 けれど気持ちがいいかどうかは問題ではなかった。 マスターベーションするということは、ねじったり、はじいたりを織り交ぜ、なんとしてもクリストリスで昂ぶらなければならない。

 私たちが股間をまさぐり始めたところで、教官は青ざめた30番の前にたった。

「そろそろ私のいうことが分かりましたか?」

「は、はい! インチツの奥で理解します!」

「その通り。 挨拶は言葉遣いが大切です」

「はい!」

「ですが、さきほどは全く言葉がでてこなかった。 なぜですか」

「そ、それはその……うっかりしていて……うぎっ」 

 答えを遮る電流。

「答え方すらなっていない。 合宿で習ったことすら抜けている。 貴方の『何』が『どうなって』いて、こんな礼儀知らずなのかを答えなさい、といっています」

 パックリ開かれた大陰唇を、教官がつねる。 

「習ったこと……あっ、は、はい!」

 30番、と呼ばれる少女の頬に赤味がさした。

「あたしの、あの、臭くて変態なインチツが、その、淫らで恥ずかしいせいです」

「恥ずかしいとは?」

「その……淫汁を垂れ流して……それで、その……」

「それで?」

 つまらなそうな教官の眼差し。 私は感じた。 ああ、これは割れたグラスに注ぐ視線だ。 さっきまで食器だったものを、チリトリで集めるとき、人はこんな顔をする。

「頭も悪くて、インランだから、恥ずかしいせいで礼儀しらずで……その、変態で、どうしようもなくだらしなくて、みっともないものを晒しているせいで、挨拶ができなくて……」
 
「あらそう。 服でも着ればきちんとできる、というわけですね」

「えっ? あの、そ、そういうわけじゃなく!」

 カツン

 リモコンを机において、教官が30番の顎をもたげる。

「ひっ」

「どうやら貴方は初歩の初歩から間違っていて、頭も悪く、言葉遣いもなっていません」

「う、も、申し訳ありません」

「初日から脱落者を出すのも一興ですが、せっかくの機会です。 貴方には補習を与えます」

「ほしゅ……う……あうっ!」

 平手が30番の赤らんだ頬にはじける。

 パン。 パンッパンッパンッ。

 続いて往復し、二発、三発、四発。

「いっ、あ、あうっ!」

「愚図。 せっかく補習を用意してもらえるというのに、お礼もできないなんて」

「えっ、あ、ありっ、うぐっ、ありがっ、ひい」

 パンパンパンパン。 股間を両手で開き、がに股で腰をつきだした姿勢の30番に、平手をよけることができるわけもない。 さりとて殴られながら言葉を紡ぐのも無体なのに、教官は手のひらと手の甲で小気味よくビンタを続ける。

 パンパンパンパンパンパン……

 隣では、私たちが情けない掛け声に合わせ、リズミカルにクリトリスをしごき続ける。

「「クリクリ、スコスコ、クリスコスコ! クリクリ、スコスコ、クリスコスコ!」」

 そうやって1分、いや2分ばかり、私たちの嬌声とビンタの破裂音が続いただろうか。 教官のビンタは唐突に終わった。 30番を除いた私たちに『そのままマスターベーションを続けること。しばらくしてから戻ります。それまでは絶頂しないように』と告げる。 30番の首輪に革製のリードをつなぐと、30番は真っ赤に腫らした頬をかばうことなく、即座に四足になった。 両足を『八の字』に開き、手足をまっすぐ伸ばして腰を浮かせる規定の姿勢だ。 そのまま教官に連れられて30番は部屋を後にした。 残された私たちは、いつもどるか分からない教官に備え、無理な姿勢にきしむ下半身をかばいながら、ただひたすら恥ずべき行為を続けるのだ。

「「クリクリ、スコスコ、クリスコスコ……クリクリ、スコスコ、クリスコスコ……」」

 唇はみっともない半開き。 目はしっかり開いて中空を。 全員そろって薄笑いを浮かべながら。 なにしろ涙を流したり、悔しがったり、恥ずかしがったりすることは許されていない。 私たちは自慰が好きで好きでたまらない、ということになっている。

「「クリクリ、スコスコ、クリスコスコ……クリクリ、スコスコ、クリスコスコ……」」

 部屋には一生懸命な、それでいて意味のない喘ぎがいつ果てるともなく続いた。


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