投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

指嗾
【元彼 官能小説】

指嗾の最初へ 指嗾 14 指嗾 16 指嗾の最後へ

指嗾-15

 ドンッと体に衝撃が走った。痛烈な一撃が奥まで打ち込まれて、先端がグイッと子宮口を押し上げたかと思うと、密着させたまま噴射口から熱い精液が放出されてきた。
「うんっ……ああっ! すっご……、わぁっ……、はいって……、はいってるっ」
 絶頂の中、譫言のように輝子は口走りながら、子宮へ直接注ぎ込まれてくる精液に肚の奥を熱く満たされていく感覚に震えて意識を遠のかせていった。
 どれくらい時間が経ったのかわからない。意識が戻ってきて半ば放心状態で身を起こすと、カーテンの向こうは完全に暗くなっていた。ジョゼは既に身を整えてソファの上に優雅に座り、長い脚を組んで雑誌を読んでいる。毟り取られた衣服は肘掛けに掛けられていた。手に取るとショーツは水に浸したように重くしっとりとしていたから、言いようのない恥辱感を感じつつ脚を通し、ジョゼをチラリと見たが雑誌に目を落としたままこっちを見てくれなかった。性交が終われば、またあの優しみに満ちた柔和な笑みで慈しんでくれるかと思ったが、目的を果たしてもう用は無いというかのように放置されて、哀しさが胸が塞いでくる。
「……帰る」
 デニムミニを履き、パーカーに袖を通して言うと、ジョゼはパンと音を立てると雑誌を閉じてマガジンラックに戻しながら立ち上がった。出口のほうではなく、輝子に近づいてくる。その顔にはまだ姦虐の色が滲んでいるように見えた。手を延ばしてこられて身を縮ませる。だがジョゼの手は輝子の頭の上に置かれ、指で梳いて乱れた髪を整え始めた。
「美容師としては、こんなメチャクチャな髪で帰すわけにはいかないね」
 立たせたまま鏡を向かせ、ブラシで少し整える。
「誰の……、せいだよ」
 輝子が小声で言うと、ぽん、と肩に手を置いて身を屈めると、鏡に目線を向けながら、
「もっと嬉しがれよ? せっかくオンナにしてやったんだからさ?」
 と囁かれた。カッと頬を熱くした輝子が、振り返りざまにジョゼの胸を押して、
「帰るねっ」
 眉間を寄せた恨みがましい顔を向けると、ジョゼは両手を拡げて肩を竦めた。駅は左に行ったとこだよ、という声を背中で聞きながら店を出て、吉祥寺に向かう道すがら、望み通り処女でなくなった喜びよりも陵辱された鬱屈が身に澱んでいた。
 家に帰ると、母親と姉がリビングにいた。すぐに、座りなさい、と身柄を確保されるものだと思っていたが、母親は、
「あんたこんな時間までどこに行って――」
 と言いかけて、輝子の髪を見て止めた。「……髪切りにいったの?」
「……うん」
 輝子はチラリと姉のほうを見た。素知らぬ顔でテレビを見ながらお茶を飲んでいる。さしもの姉も妹が学校をサボって家でセックスをしようとしていたことを包み隠さず親に打ち明けることが躊躇われたのかもしれない。
「お金はどうしたの?」
「お姉ちゃんに借りた」
 輝子は姉のほうを見つつ嘘をついた。姉を試してみた。
「……そうなの?」
 愛里菜は一瞬輝子の方を向いて、母親には見せないように鋭い目つきで睨んだあと、屈託のない笑顔に変えて、
「あ、そうだった。お母さんに言うの忘れてた、ごめんなさい」
 と言った。
「……あれだけ言っても髪戻さなかったのに、まあ、どうしたんだろ」
 母親は愛里菜の言葉にはすぐに納得した。いつもなら舌打ちが出る所だったが、
「でも、これならいいでしょ?」
 と二人の前で首を振って、毛先のブリーチが消えて黒く残ったヘアスタイルを左右に揺すった。
「まぁ、前よりはいいけど……」
 一体何の風の吹き回しか訝しんでいる母親とテレビの方へ顔を戻した姉を残して、輝子は自分の部屋に向かった。ドアを閉めてベッドに寝転がる。仰向けに天井を眺めると、下腹にはなお異物感が残っている。処女喪失の報告をグループに配信したかったが、相手は彼氏ではないし、まさか自分の初体験があんな凄絶なものになるとは思っても見なかったから、とても人に言う気にはなれなかった。
(もっと、ラブラブなやつのほうがよかったのかな)
 今更悔やんでも遅いよね、と自嘲しながら、気を紛らわすために、さて今履いているショーツをどうやって洗濯に出そうか考えようとしたところで、ドアの向こうから自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「入っていいよ」
 そう言うと姉が神妙な顔で入ってきた。座りもせず、部屋に入った中央で腕組みをして、ベッドに身を起こした輝子を見つめている。その立ち姿が様になっていた。この人、見た人がそう思うの自分で知っててやってるのかな、モデルだしな、と思っていると、
「輝子、あんた……」
 と姉が口を開いた。だが輝子はそれを制して、
「言わないでくれたんだね。お母さんに」
 と先に言った。姉の顔をこうやってまともに見るのは久々な気がする。ここ数年はずっと自分から顔を背けていた。
「当たり前でしょ、どう言えっていうのよ……」
 不機嫌そうな顔つきだ。問題が手に余っているが人に上手い形で相談できず困っているのだろう。


指嗾の最初へ 指嗾 14 指嗾 16 指嗾の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前