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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 2.-5

 その後二人でショップビルに入って、面接を受けるための衣装と化粧用品を揃えた。二人分を購入すると相当な額になったが、友梨乃はその行為自体が楽しくて、額は全く気にならなかった。それから水道橋に移動してスパで体を流した。風呂では何度も智恵が、「キレーな巨乳やなぁ」とやっかみを言って友梨乃を褒めた。会って二日目でお互いのスッピンを見せ合って笑い、メイクルームで化粧をした。
 面接場所へ向かう水道橋駅のホームには、身奇麗な女が二人出来上がっていた。ホームに備えられた鏡に映る自分と、すぐ隣に立つ智恵を見ながら不思議な気分になっていた。昨日の同じ時間からは考えられないことだった。突然声をかけてきた智恵には何か腹蔵があって、自分を騙しているのかも知れないという思いはあった。だがもしそうだとしても、今が楽しいから構わないとまで思っていた。
「……と、鳥山さん」
「その呼び方やめん? 私、ユリって呼んでるよ?」
「どう呼べばいい?」
「決まっとるやん。ちー、え」
 ドアの脇の手すりにつかまって、反対側のドアの上に表示されているモニタを見ながら智恵が笑った。
「……ち、智恵」
「何か変」智恵は吹き出してから、笑顔を友梨乃に向けて、「んで? どうしたん」
「私、アルバイトとか、その……、働いたことないんだ」
「そして、オジョー」
 智恵は昨日と同じ言葉で友梨乃をからかったが不快な思いはなかった。友梨乃は昨日からの世間をずっと知っている行動力に、きっと智恵は面接に受かるだろうと思った。だが、一緒に受ける愚鈍な自分のせいで智恵も巻き添えになってしまうことを心配していた。
「大丈夫やて。大したこと無いよ、面接なんて」
 智恵は友梨乃の方を向いて笑って、「ネット見たら仕事なんていっぱいあったやろ? 今日がダメでも大丈夫」
 今の時代仕事を見つけるのは難しいというのは友梨乃もなんとなく知っていたから、気楽な発言だったが、智恵に言われるとそういう気になってくるから不思議だった。現実に二度の面接で二人とも採用になると友梨乃はすっかり智恵を信頼していた。駅から少し離れており、築年数はそこそこあるマンションだったが、やがて住居も決まった。普通オーナーはルームシェアでの賃貸を嫌がるが、智恵はすぐに不動産屋、オーナーそれぞれの懐に入り、最終的には首を縦に振らせてしまったのだ。研修を終えて二人で茅場町の店舗の勤務になるまで一ヶ月足らず。友梨乃はまるで夢でも見ているかのようだった。
 そしてその見せられた夢は友梨乃の心に一つの思いを芽吹かせていた。この思いは育ませてはいけないと思った。智恵に冷ややかな目で見られ、自分の傍から去られてしまうことを想像するだけで、死んでしまいそうなくらい心が沈んだ。しかし職場でも家でもずっと一緒にいるのだから、抑えることなどできなかった。ずっと秘めている苦しみに、友梨乃は部屋で一人、布団の中で泣くことが多くなった。
「あっ、……ぁ、やっ……!」
 挑発的な四つん這いでヒップを高く上げたまま、顔を奥まで差し入れてショーツの頂に智恵が唇を密着させて吸い付いてきた。舌が緩み始めた友梨乃の体を更に解してくる。「服っ……、……お、お風呂っ……」
 智恵の尖らせた舌がショーツ越しに友梨乃を翻弄してくる度に、体を弾けさせながら、息絶え絶えに声を上げる。
「……だって、もうヤラしーなってる」
 下腹部から智恵に指摘されると、余計に意識されて敏感になった。「ユリ。一人はイヤやろ?」
 舌で穿っていた場所に爪を立てて軽く弄りながら、意地悪い顔で智恵が友梨乃の顔を覗きこんできた。
「あ……、う……」
 何かを言おうとする度に喘ぎ声に変わって、やがて何と言いたかったかわからなくなって、友梨乃は涙を流した。
「イヤなんやろ?」
 すぐ近くまで顔を向けられて、もう一度問われた。
「……やだ……」
 微かな声で言うと、智恵はショーツにより深く指を這わせて、唇を艶めかしく吸ってきた。
 或る日風呂から出て寝巻き姿で髪を乾かしていると、先に風呂に入ったあと、ビールを飲んでいた智恵が友梨乃の隣に座ってきた。
「ほい。とりあえず、3万……」
 ぽんと一万円札が友梨乃の脚の上に置かれる。
「え?」
「たぶん、40万近くは借りてることになってるよねー。ちょーっとずつ返してくから、まずはコレで許して」
 大手コーヒーチェーンとはいえ、それほど給与が高いわけではないから、そこから3万円も捻出するのは苦しいはずだ。家賃は折半している。光熱費や食費も半分ずつだ。大学に行っていた頃に比べるとかなり粗食になったが、智恵と一緒に居れることで全く苦にはなっていない。
「いらない、別に」
 友梨乃は3万円を智恵の体につき返した。仕事と住居が決まるまでの全ての諸費用は友梨乃がピアノを売った金で払った。借金とはそのことを言っているのだろう。だが友梨乃はそれを返してもらおうなど全く思っていなかった。
「そーはいかんで。やっぱこーいうのはキッチリしとかんとね」
「ほんと、いいの。智恵が自分で使って」
「ユーリっ」
 智恵が少し睨んで友梨乃の肩に手を置いた。「私、乞食ちゃうで?」


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