投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵の最初へ 鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 18 鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 20 鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵の最後へ

鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 2.-4

「まー、そーなったもんはしゃーないよね。ウチも男の借金払うためにキャバの給料前借りしたけど、それでも返せんくなって大阪おれんようになったしねー。東京なんのアテもあらへん。お金もないし」
 大半を残している友梨乃に対して、智恵は最後の一粒まで牛丼をかき込んで、咀嚼しながら言った。「……おんなじやな、ウチらって」
 牛丼を飲み込んだあと、智恵は微笑みながら、
「ほんじゃ、協力しよ。お互いツテないやろ? 仕事探したり、住むとこ決めたり」
 そして智恵はあっけらかんと笑った。「ウチ、東京にツレおらんから、最初にできた友達やね。まだ名前知らんけど」
 友達という言葉に友梨乃はドキリとし、意図せず涙が溢れて来そうになり、しかし会ったばかりの智恵にそれを見せられなくて必死に我慢しながら自分の名前を言った。
 智恵は女豹の姿勢のまま後ずさって、フレアスカートから覗く膝頭に唇を這わせてきた。脚が跳ねて小さく声が漏れる。こそばゆさから逃れたいが、智恵の顔面を蹴ってしまいそうになって身を躱せない歯がゆさに囚われながら、スカートの裾を唇に咥えられて内ももに息をかけられながら智恵の顔が昇ってくると、期待と羞恥がない交ぜになる。
「ヨーちゃんのときは、こんなんにはならんかったやろ?」
 友梨乃のウエストの両側に手を付いて、口だけで脚の付け根までスカートを捲り、震える恥丘を露にすると、毒めいた視線で足元から見上げてくる。豊かなバストの向こう側にその瞳を感じた友梨乃は、あぁ、と小さな声を漏らした。
 知り合ったその日に二人でネットカフェに泊まった。客は男ばかりだったが、女で泊まる客がいないわけでもないらしく、特異な目で見られることはなかった。初めて入ったネットカフェのペアシートのブースで、その圧迫感あるスペースに真新しさを感じながら、智恵と住宅情報サイトや就職斡旋サイトを見た。
「やっぱ仕事ないと家借りるんは辛いなぁ。……それに、ウチら保証人立てれへんやろ? せやから最初契約する時にいろいろ取られんねん。バイトとかやと特になぁ」
 友梨乃は感心しながら智恵の話を聞いていた。同じ歳だというのに、世の中のことをずっと良く知っている。身一つで世間に放り出された自分は、智恵が声をかけなければ本当に明日にでも儚くなってしまっていたかもしれなかった。
「友梨乃ちゃん……、……ああもう、まどろっこしーから、ユリ、でええよね?」
 マウスで就職情報サイトを探りながら、「……ユリもウチも、結構イケてると思わへん?」
「イケてる……?」
 愛称で呼ばれたことなど初めてだから、じんわりと胸を和ませながら、モニタの明かりに照らされる智恵の顔を見た。
「……べっぴんさん、ってこと。大阪でキャバやってたとき、ウチ、結構人気あったんよ? ユリもモテるやろ? 実際」
「さぁ……」
「んなわけあるかー」智恵は友梨乃の方を見ずに笑って、「まー、ユリもかなりカワイイと思うよ。せやから、客商売のほうが入りやすいと思うねん。どう思う? あ、オミズやないで?」
 オミズの意味もわからなかったから、
「えっと……、ごめんなさい。私、全然、よくわからなくて」
 と、すまなそうな愛想笑いを浮かべた。
「オジョーやな、自分。ほんじゃ、もーウチにおまかせ?」
「うん……、まかせていい?」
 どうせ一度はどうなってもいいと思ったのだ。今日会ったばかりの智恵に全て任せてしまっていい。智恵はそれからPCで様々なサイトを巡りながら、大手コーヒーチェーンが都内に複数新店をオープンするから契約社員の募集をかけているのを見つけた。智恵は少し考えていたようだが、まー手始めに明日コレ攻めてみよかー、と決めた。そしてお互いシートの肘掛けを一つずつ使って少し眠った。
 朝起きてネットカフェを出ると、ファーストフードで朝食を取りつつ、お互いのことを更に話し合って、9時ごろになると智恵は昨日メモした募集の連絡先に電話をかけた。見くびっていたつもりはなかったが、開口一番、礼儀正しい声で話す智恵に驚き、しかも相手とだんだんと打ち解けていきながら、遂に今日そのまま面接の予定を取り付けてしまった。
「すごい……」
 電話を切った智恵に目を丸くすると、
「イケるよ、ユリ、これ。人数集まらんで困ってるっぽい。接客業が人気無いってホンマなんやねー」
 と言いながら、アイスコーヒーのストローを吸いながら、眉間にシワを寄せてハの字に眉を下げた。
「――ユリ、もうちょっとお金、貸してもらっていい?」
「いいよ」
 即答した。全て智恵に使わせてしまっていいと思えるほど、今の時間が楽しかった。
「服買わんとね。面接やから、それなりのカッコせんと。お風呂も入ったほうがええよね。化粧もせなあかんし……」
「履歴書は要らないの?」
「いる!」智恵は友梨乃を見て、「キャバの面接なんか履歴書要らんかったから、気づかんかった!」
 と笑い、一緒になって友梨乃も笑った。


鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵の最初へ 鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 18 鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 20 鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前