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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 1.-10

 嘘だと思いたかったが、やがて友梨乃が鼻を啜る音が聞こえてくると、陽太郎は頭と手を引いていった。友梨乃の欷泣が聞こえるにつれ、バスタオルから突き出ていた男茎が力を失っていった。落胆は限りなかった。
「……すみません」
 陽太郎は謝った。自分から、前戯がヘタですみません、と認めてしまったほうがよかった。友梨乃に体を合わせるのが悍ましい相手だという理由で拒絶されるよりずっとマシだからだ。
「……ちがう。……ちがうの」
 啜る息の合間に友梨乃の声が聞こえてくる。「……藤井くんのせいじゃない」
(きっと好きな人のこと、思い出してもうたんやな)
 くそっ、と声に出して叫びたい気分になりながら、陽太郎は友梨乃を踏みつけないように気をつけてベッドを降り、床に脱いでいた衣服を手探りで探しながら服を着た。ずっと友梨乃の泣く息が聞こえている。シャツを着るときにベッドを見下ろすと、友梨乃は壁の方に身を転ばせて、膝を折り小さくなって泣いていた。その姿を見ていると、陽太郎はやはり自分のせいにしたくなって、落ちていたバスタオルを友梨乃の体にかけ、すみませんでした、帰ります、と言って部屋をあとにした。




 次のバイトで会ったとき、目の前に現れた友梨乃は何も言えず、目を背けて必死に言葉を探している様子だったので、陽太郎の方から、今日もよろしくお願いします、とできうる限り打ち解けた感じを前面に出して言うと、友梨乃はほっと息をついた様子で、うんよろしくね、と言った。
 友梨乃の部屋を出て家に帰ると2時を超えていたが、帰った旨を伝えるメッセージを送るとすぐに美夕から電話がかかってきた。すでに布団の中に入っているから、電話の向こうから布が擦れる音を立てている。
「遅かったなぁ。……まさか浮気してへんよね?」
「いや、バイト先で歓迎会してもらっただけやって」
「ふーん。あやしいな」
「疑うなや」陽太郎は努めて笑い声を発して、「バイト先の社員さんで、布施出身の人おった。そんで話がめっちゃ盛り上がっただけ」
「女?」
「そーやけど、美夕が疑うようなことは、まぁ無いわ。何かヤバそうな彼氏おるみたいやったし」
 勝手な都合で智恵を貶めて済まない気持ちになりながら、疑っている美夕をなだめた。
「一応信じといてあげる。……バイト初日どやったん?」
「んー……、まぁまぁかな。結構時給ええわりには、思ってたほどしんどくなさそう」
「ほーか。よかったね」
 平気な筈は無かった。こうやって自分の部屋の中で美夕の声を聞いていても、薄闇の中で横たわる友梨乃のことが思い出されて、油断すると悶絶の声を漏らしそうだった。
「遅なってごめん。明日ガッコやろ? もう寝ーや……」
「……なー、先輩」
「んー?」
「今度いつ大阪帰ってくるん?」
「……んー、まあ、バイト代入ったら帰るわ。今はちょっと無理やな」
「私、東京行っていい?」
 美夕に感付かれない程度に短い時間、陽太郎は言葉に詰まりそうになったが、ダメだとは言えないので、
「無理やなかったら来てええよ。けんど、オヤジさんに何て言うて来んねん?」
 と言った。
「何とかするし。ほんじゃ中間テスト終わったくらいに行くかも。ええよね?」
 本気で来るかどうか分からない。おそらく美夕は「東京に行く」と言うことで、陽太郎がどんな反応を示すか試しているのだ。
「ええよ」
「……ほんじゃ、遅いし寝るわ」
「ん。おやすみ」
 よくもこんなにスラスラと応対できたもんやな、と陽太郎は携帯を放り投げて自嘲の笑みを浮かべると天井を仰いだ。電灯が眩しくて目を閉じると、すぐに友梨乃の姿が瞼に浮かんできた。こんなことなら美夕ともっと話しておけばよかったと思えるほどに、すぐに下半身が悶えズボンの中で痛いほどに男茎が猛ってきた。
(たまらんなぁ、こんな目……)
 男のプライドが蔑ろにされたことに対する憤りだけだったらこうはならない。
 マジで? これ一目惚れ? いや、研修のとき一回会ってるから二目惚れか。
 こうやって家に帰ってきて一人で友梨乃のことを考えると胸が痛くなった。女の子を好きになったことはある。だが、誰に対しても、美夕に対してもすら、こんな気持ちになったことはなかった。友梨乃には好きな相手がいる。体を許そうとしたくせに途中挫けてしまうほど想っているらしい。そんな友梨乃を好きになりなどしたら、相当面倒くさいことは目に見えていた。しかも、あそこまでさせておいて断ってきたヒドい女だ。途中で断るなら断るで、お詫びに口か手でヌイてくれるくらいしてくれてもよいものを。胸を見られてると思ってるなら、その胸で挟んでくれたっていい。
 考えているうちに猛烈に遣る瀬無くなって、陽太郎は下半身を丸出しにして、漲った男茎を握って、頭の中で友梨乃の部屋での「続き」を想像した。あの後、友梨乃にしたかったことを想像しながら、握った手を動かした。最初はAVで見る女が性感に狂いそうになるようなイヤラしいセックスをしている様を思い浮かべていたが、何故か途中から友梨乃に男茎を埋め、抱き合いながらキスをし、愛を囁き合うような光景に変わって、その瞬間に根元から奔流が湧き起こった。いつものつもりでティッシュを押し当てたが、それでは汲み切れないほどの夥しい悦びが飛び出て、己が指を汚した。


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