投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

漂泊SOUL セクサロイドの罠
【SF 官能小説】

漂泊SOUL セクサロイドの罠の最初へ 漂泊SOUL セクサロイドの罠 2 漂泊SOUL セクサロイドの罠 4 漂泊SOUL セクサロイドの罠の最後へ

森山ナオト、ランカーとの遭遇-3

3 研究者の提案

森山直人は裁判所から出ると弁護士の女性と槇野と共に、リガーコーポレーションの工場に向かった。
「提案があります」
執務室で槇野は、自分の試作品であるナノマシーンプログラムに直人のナノマシンのデータを書き換えて二年間、そのデータを取らせてほしいと言った。
「俺は戦場に出るわけじゃない。二年間は、執行猶予でライセンスの再登録ができないのはわかっているはずだ」
戦場に出る戦士にバトルアーマーの試作機や操作プログラムを企業が提供する契約があるのを、直人も知っていた。
「留置場で盗賊の噂を聞いたのではありませんか」
「ああ、俺をはめたサキュバスのことも聞いた」
反政府勢力と接触した戦士が、ポイントを奪うプログラムを与えられて盗賊となることまで聞いた。
「我々は盗賊によるハッキングに対しての研究と、対策ツールの開発を政府より依頼されました。その研究は試作段階まで進んでいます」
「それを俺のナノマシンに落として、あんたたちに何の利益がある。慈善事業じゃないんだろう?」
直人は槇野の隣に座っている弁護士をちらりと見た。
「彼女はもしあなたが我々に協力してくださるのであれば、正式に契約を結ぶための手続きのために同席しているのです」
「戦士が盗賊にハッキングされてポイントを奪われたとして、政府やあんたら企業にどんな損害があるのか俺にはわからないけどな」
ポイントを改竄されて増す操作されたとなれば政府やナノマシンプログラムを作成した企業は被害となるのはわかる。
もともと流通しているポイント量は、誰が所持しているかの違いだけであり、世界全体としては変わっていない。
「政府としては反政府勢力のハッカーに対する制裁処置を民間企業、つまり我々のリガーコーポレーションにも依頼しました」
「他の企業にも依頼しているのか?」
「詳しくはどことは言えませんが、そうした企業が共同でプロジェクトを立ち上げたのです。契約していただけたら二年間、あなたは我が社の社員として月々のポイント付与も約束いたします」
「俺に何をさせる気なんだ?」
「試作段階のナノマシンプログラムで、ハッカーのナノマシンプログラムにアクセスして破壊していただきたいのです。破壊後の処理は政府と我々が行います」
「ナノマシンプログラムにアクセス?」
直人は鳥肌が立った。サキュバスに強制的にナノマシンに干渉されて何をされたか思い出したのだ。
「あなたが戦士のライセンスを剥奪されたのには理由があります。あなたのナノマシンプログラムの一部が改竄されているからです」
サキュバスによって直人のナノマシンプログラムは破壊され、その破壊されたプログラムのかわりに別のプログラムが書き込まれているらしい。
「おそらく、このまま戦士として戦場に出れば、反政府勢力の戦艦か拠点からかはわかりませんが、バトルアーマーに搭乗したまま、あなたは操られて政府の拠点や艦を襲撃します。そうなれば、どうなるかはわかると思いますが」
バトルアーマごと搭乗員は粉砕されて死亡する。
以前からアンドロイド、それも性処理用のアンドロイドであるセクサロイドと交わった男性搭乗員のナノマシンのプログラムの一部が破壊されていたらしい。
戦闘中にバトルアーマーが動かなくなったり、ブースターの出力が急上昇したりする。
それはバトルアーマーの整備不良と搭乗員からは区別がつきにくいが、搭乗員のナノマシンプログラムが破壊されたことのトラブルだったのである。
「あなたが逮捕されることになった破壊されたセクサロイドにも、ナノマシンプログラムを破壊するウイルスプログラムが書き込まれていました」
「そのセクサロイドはサキュバスにプログラムを改造されたということなのか?」
それはわかりませんと槇野は首を降ってから、また話を続けた。バトルアーマーとナノマシンの性能が上がるにつれ、男性ではなく女性の戦士も増えていった。そして、ハッカーによってポイントを奪われた戦士たちの証言により、女性の戦士がポイントを奪っていったことが判明した。
「今はセクサロイドではなく、女性の戦士によって反政府勢力の遠隔操作プログラムが広められているってことか」
「ナノマシンの男性用プログラムと女性用プログラムは異なるプログラムで、遠隔操作プログラムは女性用プログラムでは発動しません」
男性の盗賊は存在していない。
ポイントを奪い、遠隔操作プログラムを蔓延させる。
反政府勢力は遠隔操作プログラムが蔓延したタイミングでクーデターを起こす気なのだろうか。
「我が社の研究チームはハッカーによって改竄されたナノマシンプログラムに新たに開発したプログラムを再インストールすることで、ハッカーのナノマシンプログラムを破壊するハンタープログラムの開発に成功しました」
「話はだいたいわかった。ハッカー破壊プログラムをインストールしたナノマシンにどんなリスクがあるのか説明してくれ」
直人は槇野に言った。
リスクがなければ警官たちがナノマシンを体に入れて盗賊を捕らえるために動くはずだ。ハッカーにポイントを奪われた男たちのナノマシンの複製品など、企業の技術力ならすぐに作り出せる。
槇野はリスクについて説明をした。
「煙草を喫ってもいいか?」
「……どうぞ」
直人は煙を深く吸い込むと、ゆっくりと吐き出した。
「いいだろう。やってやる」
直人が吸殻を灰皿に押しつけてから言った。
人の頭脳にナノマシンは強く作用する。ナノマシンの性能が上がるほど負担は大きくなる。
ある戦士が搭乗したバトルアーマーの操作性能を上げるため、ナノマシンに強化プログラムを違法でダウンロードした結果どうなったか。直人は戦士になりたてのルーキーの頃に目撃したことがある。限界を越えてしまえば自我崩壊。ナノマシンの性能を受け入れられる限界には個人差がある。
直人の頭脳が、ハンタープログラムを受け入れられるかは、賭であった。


漂泊SOUL セクサロイドの罠の最初へ 漂泊SOUL セクサロイドの罠 2 漂泊SOUL セクサロイドの罠 4 漂泊SOUL セクサロイドの罠の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前