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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつて久美子かく語りき-4

もうすっかり陽も暮れたというのに、タキタはマダ帰ってこない。確か今日はクミコと美術館に行くンだと言っていた。
……むう。妬くぞ。
台所でカレーをぐつぐつ煮込んでいたら、聞き慣れた足音が耳に入った。ドアに鍵を差し込む様子がする。
ビックリさせようと、中から鍵を回してイキオイよくドアを開けた。
「オカエリ!楽しかったか?」
案の定、眼鏡の奥のヒトミは驚きで大きくなっている。
「ただいま」
タキタは後ろ手にドアを閉め、空いた方の手で私を抱き締めた。
「ン?」
春のカホリを纏わせたタキタの肩や華奢な胸は冷やりとしていて、私は調理で暖まった頬をそこで冷ました。
「新婚さんみたい、ですね」
彼がくすくす笑いながら言ったので、私は軽くくちづけた。
「ん……」
もう一度深くキスしようとするタキタのクチビルに指を当て、私はヒトツ提案した。
「あ!じゃあ、アレやってやる」
「あれェ?」
明らかに不機嫌なカオをするタキタに、私はとびきりの笑顔を向けた。
「あ・な・た!ご飯にする?お風呂にする?」
ここで効果テキにウィンクを加える。
「それとも、あ・た・し?」
……沈黙。
なんだ、完璧な出来であったハズなのに。
見るとタキタは玄関にうずくまっている。
一生に幾度あるやもわからぬ私の若ヅマっぷりに、無反応とは。滝田学、許すまじ。
「こら、タキタ」
一声掛けてよくよく見ると、タキタの肩が小刻みに震えている。
こやつ……。
「ナニが可笑しいっ?!」
ジャケットの襟首を掴まえて立ち上がらせる。
「だって、……ソレ、何時の時代の新婚さんですか……ぷくく」
私は般若面で見返してやったが、タキタが笑い止む気配はない。
むかムカむか。
「この期に及んでナオ笑うか!!」
人差し指でべちっとおでこを叩くと、タキタはそこを押さえながらまた笑った。
「全く……」
半ば諦め、私はため息をひとつ吐いた。
こんなに笑いジョウゴな男だとは思わなかった。……しかし、付き合いハジメの頃に比べたら、タキタは随分と柔和になったと思う。イマみたいに腹カラ笑うことなんて、殆ど無かった。
そう思えば、今のヤリトリもワルくはない。
私は一人ほくそ笑んでから、コタツに入った彼の隣に座った。さっきの「新妻ゴッコ」にぞ精を出さんとキメたのだ。
「……へ?」
早くも異変を感じ取ったのか、タキタの頬がひくついている。
それに構わず、私は最上級の笑みを浮かべた。
「あなた、今日はジュン特製のカレーライスよ。愛を込めて作ったの」
語尾にはハートを飛ばしまくり、目をぱちくりさせるのがミソだ。
「食・べ・て!」
くらえ!キラキラうるうる光線!!
「ちょ、……やめて…ぷぷぷ」
タキタがころころ笑い出した。それが嬉しくて、私もついつい興に乗ってしまう。
「……え?お食事より先に、アタシを召し上がりたいの?」
ここでは、彼にしなだれかかって人差し指でツンツンするのがミソだ。
「ヤだわ、ダーリンったら!」
くらえ!新妻のオイロケ攻撃!!
平坦な胸を必死で強調する。


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