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LADY GUN
【推理 推理小説】

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復讐-3

 「誰か重要人物を発見したんですか?」
話を聞いていた矢沢が聞いた。瀬川涼子をと言いそうになり若菜は止めた。
 「うん、ちょっとね…。」
矢沢は何かを企んでいそうな若菜の様子に気付く。それからすぐだ。上司の中山から衝撃の電話が入ったのは。
 「えっ…?い、今何と…」
あまりに衝撃的な内容に耳を疑った。若菜が頭を真っ白にしてしまうほどのショッキングな事実を中山は繰り返し言った。
 「湯島武史とその一家全員が何者かに殺害された!」
信じがたい内容だった。昨夜湯島の自宅に出向き対面したばかりだ。何かの間違いだと思ったし、信じられなかった。
 「死亡推定時刻は昨夜の深夜3時頃と思われる。目撃者はまだ見つかっていない。殺害方法が異常だ。かなりの怨恨があったと思われる。詳しくは帰って来てから説明する。」
呆然とする若菜。
 「今すぐ…帰ります…。」
中山が無理するなとか何か言ったような気がしたが全然耳に入らなかった。いつのまにか通話を終了した。
 「何かあったんですか…?」
若菜のただならぬ様子に矢沢が聞いた。言うのが辛い。しかし信じる事を誓ったばかりで隠し事をするのも好意を踏みにじる行為だと感じた若菜は胸を押さえながら声を絞り出す。
 「湯島武史さんが…湯島武史さんが…殺されました。」
 「えっ…?」
絶句する矢沢。
 「そ、そんなつまらないジョークじゃわらえないっすよ…。」
 「矢沢さん…」
若菜の決して嘘をつかない瞳が矢沢の目から脳にまで突き刺さる。
 「う、嘘だろ?ど、どうしてだよ…!何でアニキが殺されなきゃならないんだよ!!」
立ち上がり若菜の腕を掴み体を揺らす。取り乱した矢沢を刑事が抑え机に座らせる。
 「何て事…?誰が…?田口なの…?」
机を叩いて怒り狂う矢沢が言う。
 「徹か…!徹の仕業か!?許さねー!絶対許さねー!!」
涙と鼻水を机に垂らし怒り狂う矢沢はそのまま嗚咽し続けた。若菜はまるで幽霊のようにフラフラしながら取調室を出た。
 (いや違う…。田口じゃない…。瀬川涼子…)
若菜はそう直感した。湯島が殺された同じ日に瀬川涼子が同じ街に姿を現したのは決して偶然ではない…、刑事の勘がそう囁いていた。そして若菜はこうも呟いた。
 「決して許される事ではない…。でもこれを利用しなきゃ…。」
若菜のしようとしている事は決して警察として、人間として許される事ではなかった。誰しれず若菜がしようとしている事の本質は瀬川涼子と変わりはない。静香を裏切った人間はどうしても許せない若菜。若菜は瀬川涼子を逮捕しようとしているのではない。ある目的を遂行する為に探偵の情報は重要だった。それを思い付いたのが昨日、奇しくも湯島武史を訪れていた時だった。予想外の湯島武史の死亡だが、若菜は考えを改めるつもりはなかった。若菜の頭の中に悪魂の芽が生え始っていたのであった。


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