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透明な滴の物語V
【同性愛♀ 官能小説】

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千帆の告白-6

その結果、千帆は合宿所から麓に下りた小さな町の診療所に行くことになってしまったのだ。

コーチの運転するクルマが夜道を下りていく。
行き交うクルマもない暗い山道を一筋の黄色いライトだけが行き先を照らし出す。
千帆は助手席から外の暗い景色を見た。
合宿所に来るときにバスの車窓から見えた昼間の明るい山々は、一転して暗い稜線を描き不気味に千帆を見ていた。
夜の山々にはいつの間にか鬼が宿り、生け贄にするための弱った獲物を探していた。
『餌食はどこだぁ〜!』
今、お腹を痛めた一人の少女が山道を下りていく。
(私が犠牲者になってしまうだろう。私ひとりだけが狙われてしまった…)
そう思うと、緊張感からまた涙があふれた。
千帆を乗せたクルマのエンジン音だけが山の谷間に響く。
その音はまるで鬼たちの遠吠えのように聞こえた。
(おねがい。私を殺さないで…)
千帆は鬼から隠すように、痛む下腹を手のひらでそっと押さえた。



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