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淫魔の夜
【ホラー 官能小説】

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淫魔の夜-7

私は少し謎が解けてきました。今までの侍女はこういうことを騒ぎ立てて殺されたのです。このお屋敷にとってお坊ちゃまのことは何故か仕方のないことだと黙認されているのでございます。つまりお坊ちゃまにはお気の毒ですが、この状態を続けることがお屋敷にとって大切なことらしいのです。
 そしてもう一つ分かったことはトゥーダブリュの正体は大変わかりづらいのだということ。それは『あいつ』も知っていて自信満々なのだということなのです。けれどももし正体が分かれば追い出すことができるのだということも私には分かったのでございます。
「アレックスお坊ちゃま、トゥーダブリュのことをもっと教えて下さい。どんな姿をしているのですか」
 アレックス坊ちゃまは私の腕の中で一段と震えたが、でも勇気を絞ってこう言いました。
「クララ、夜明けまで一緒にいてくれるかい? これから週一回あいつが現れる夜傍で寝てくれるかい? それなら僕あいつのことを教えるよ。そうでなきゃ、怖くて怖くて口に出すのも恐ろしいんだ」
「大丈夫です。お約束します。必ずお傍におります。ですから……」
 それからアレックスお坊ちゃまは半泣きのような顔で説明を始めました。肘と手首を曲げて体の横に出し鳥の翼のような形を作りました。
「ほら鳥だと肩の所で1回曲がって、肘の所で2回めに曲がって最後に手首の所で3回目に曲がるだろう?」
 そしてお坊ちゃまは右腕を見ながら左手で肩から手首までなぞりました。
「これはアルファベットのNみたいだね。普通の鳥はこれで翼は終わりだけど、あいつはこういう風にもう一つ曲がるんだ」
 そう言ってお坊ちゃまは右手の指先から斜め上に空中に線を描いたのです。そしてもう一度肩から肘、手首そして指先へなぞって見せました。まるでそれはWの形のようでした。
「片方の翼がWの形で両方でTWO−W。トゥーダブリュなんだ。だから翼を閉じると羽毛の向きが逆になってるんだよ」
 私はその晩はそれ以上のことは聞き出さずにアレックス坊ちゃまの傍で体を横たえて、坊ちゃまを寝かしつけました。坊ちゃまは私が傍にいることで安心したらしく、すやすやとそれは天使のような安らかなお顔で眠り続けました。
 


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