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淫魔の夜
【ホラー 官能小説】

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淫魔の夜-6

「お坊ちゃまがそう願うなら言いません。約束致します。でも教えて下さい。いったいあれの正体は何なのですか」
 この私の問いにお坊ちゃまは首を振って答えようとしませんでした。それはそのことを口にするだけで恐ろしいとでも言うように、尋常ではない恐怖を顔に表していたのでございます。
 でも私はお坊ちゃまとは逆のことを考えておりました。楽しいことは幾ら分けても減りはしないけれど、苦しいことや悲しいこと、そして恐ろしいことは分かち合うことによって減るのだということなのです。
「お坊ちゃま、お坊ちゃまが言っている『あいつ』のことを私に何でも話してください。そうすれば少しでも気持ちが楽になります。お坊ちゃまがお1人で抱えている苦しみや恐れを私も一緒に持ってさし上げます」
 するとお坊ちゃまはポツンと言った。
「トゥーダブリュ……」
「えっ?」
「トゥーダブリュだよ。僕があいつのことをそう呼んでいる。でもあいつは本当の名前を言わないんだ」
「幽霊のようなものですか?」
「というより化け物だよ。僕が7才のときから夜中に現れるようになったんだ」
 そう言うとブルブルとお坊ちゃまは身震いをしたのでございます。お坊ちゃまは体を震わせながら私に上体を預けるようにして抱きついて来ました。私は思わずお坊ちゃまを抱きしめましたが、その体は冷たく小刻みに震え続けていました。まるで巣から落とされた雛鳥のように弱弱しいご様子でございました。
「クララ、考えてごらん。1週間に一度水曜日が木曜日に変る真夜中にあいつが現れて僕の枕元に立って羽根をバサバサ動かして眠っている僕を起こすんだ。そしてあの顔を僕に見せるんだよ。もうそんなことが何年も続いているんだ」
 私は指を折って数えました。6年間です。6年間もお坊ちゃまはそのトゥーダブリュとかいう鳥の化け物に怖い目に合わされいたのです。
「鳥じゃないよ。翼も鳥とは違うし、顔も鳥じゃない。嘴がないもの」
 私はトゥーダブリュの正体が知りたいと思いました。正体がわかればきっと対処法も分かると思ったからです。そして私は何よりもアレックスお坊ちゃまをお助けしなくてはならないと心に決めていたからでございます。
「僕はお父様の書斎にある古い本を見て、あいつを捜したんだ。でも見つからなかった。妖怪や悪魔、鬼……色々調べたけれど載ってないんだ。それから王立図書館にも行った。でもあいつのことを書いている本は一冊もなかったんだ。
 きょうもあいつは自信満々に言ったんだ。自分の正体が分からなければ追い出すことはできないだろうって。それとクララのことも言った。自分のことをお屋敷の者に話せば殺されるだろうって、だからクララ、誰にもあいつのことを喋らないで」
 


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