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ずぶ濡れのキス
【教師 官能小説】

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明かされる秘め事-3

 真雪が彩友美を職員室に呼びに行った。
 生徒相談室の前で待っていた健太郎と修平は、真雪と一緒にやってきた彩友美に目をやった。
「どうしたの? 三人で何の相談?」彩友美は落ち着かないようにそわそわしながら、ぎこちない笑みを浮かべた。
 真雪が健太郎と修平に向かって小声で言った。
「ここはあたしだけにして。ケン兄たちは帰って」
「そうだな。不必要に先生を追いつめるかも知れないな」
「どんな話だったか、後で聞かせてくれよ、真雪」
「うん。わかった、しゅうちゃん。ごめんね、つき合わせちゃって」
「気にすんな」
 修平と健太郎は、肩越しに軽く手を振りながらその場を離れた。

「三人で相談じゃなかったの? 真雪さん」
「あたしが代表です」真雪はにっこりと笑った。


 彩友美と真雪は、その狭く無機質な部屋に入った。古くなって少し傾いた円形のテーブルを挟み、彩友美と真雪は向かい合って腰を下ろした。
「先生、単刀直入に訊きます」真雪が口を開いた。「毎週水曜日の午後、将太君と何をやってるんですか?」
「えっ?!」彩友美は身体を硬直させた。
「あたしたち、先生のことを心配してるんです」

「……」彩友美はうつむいて黙り込んだ。

 真雪は躊躇いがちに声を落として言った。「音楽室で……先生……」
 彩友美は唇をぎゅっと噛みしめた。
「先生、彼に何かひどいことをされてるんじゃ……」
「そ、それは……」

 彩友美はうつむいたまま静かに語り始めた。「許されないことかも……しれないけれど……私、あの子に惹かれているの……もう、自分でもどうしようもないぐらい、彼のことが……」
 真雪はほっとしたように小さなため息をついた。

 彩友美の目を見つめながら真雪は言った。「実は、将太君のお母さんに、先生はとてもよく似てるんです」
 その若い教師は思わず顔を上げた。
「え? お母さん……に?」
「はい。あたしたちの店は、志賀のおじいちゃんによくリフォームとか修繕とかお願いしてて、小さい頃から将太くんとは仲良しなんです」
「そう」
「お母さんが家を出て行ってから、将太君は今みたいに無気力状態に……。当然ですよね。でもどんどんひどくなってるみたいで……」
「……」
「将太君の心の中には、そのお母さんに捨てられたっていう気持ちが強く残ってるんだと思います」

 彩友美が恐る恐る訊いた。「どうして彼のお母さんは家を?」
「志賀のおじいちゃんの話だと、将太君のお父さんが病気で亡くなった後、他に好きな男の人が……できたって……」真雪は辛そうに言葉を濁した。
 彩友美は表情を堅くした。

 真雪がゆっくりと顔を上げた。「でも、将太君はお母さんのことが大好きだった」

 彩友美が悲しそうな顔で真雪を見た。「大好きだったお母さんに……捨てられた……」

 少しの沈黙があった。遠くで甲高い鳥の声がした。

 しばらくして彩友美は決心したように真雪の目を見つめた。「正直に言うわ。真雪さん」
「はい……」
「私、将太君に無理矢理押さえ込まれて、彼の性欲のはけ口になってたの」
「えっ?! レ、レイプ……」
 彩友美は少し慌てて腰を浮かせた。「違うの、彼は外に出すだけ。な、中に入れられたことは、一度も……」
「そ、そうなんですか……」
「いつもは優しそうな目をしている将太君が、その時はまるで人が変わったように表情をなくして……」
「先生……」
「彼のやり方はとっても乱暴で、すごく苦痛だった」

 彩友美はまたうつむいた。「でも、あの子の抱えてる苦しみを何とか癒してあげたくて、私は彼の言う通りに、毎週……」

「そ、そんなに乱暴なんですか?」
「ストッキングを破られたり、手首を縛られたり……。」

 予想していたこととは言え、その衝撃的な言葉に真雪は息を呑んだ。そして恐る恐る口を開いた。
「そ、そんなことされても、先生は将太君に惹かれてるんですか?」

 彩友美は静かにうなずいた。
「そうやって乱暴して、登り詰めた後に、あの子すごく悲しい顔で私を見るの。」

 真雪は独り言のように言った。「将太君は、お母さんへの二つの思いを先生にぶつけてた、ってわけなんですね……」

 彩友美は膝の上に乗せた両手の白い指を組んで、静かに言った。「私、将太君のそんな顔見てたら、だんだん切なくなってきて、同時に将太君がたまらなく愛しくなってきて……」彩友美の目に涙が宿った。「もう将太君を離したくない、って思い始めて……」

 真雪が顔を上げた。「先生の気持ち、あたしたちが将太君に伝えてあげます」

 彩友美は首を横に振った。「大丈夫。気を遣わないで、真雪さん」
「でも、このまま将太君が先生の気持ちも知らずに、毎週そんなことしてたら、いつか本当に先生をレイプしてしまうかも……」

 彩友美も顔を上げた。「心配しないで、きっと将太君は、もうわかってるはず……。私の気持ちも」

「……」

 彩友美の目に宿った深い自信の色が、向かい合っていた真雪の、後に続く言葉を封じた。

「健太郎君や修平君にもそう伝えて」彩友美は柔らかな笑顔を真雪に向けた。「心配してくれて、ありがとう。真雪さん」


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